教師修業双書4
「学び」を鍛える指導法

教師修業双書4「学び」を鍛える指導法

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「目玉」のある授業で子どもたちをひきつける!

多くの授業を見るが「これがプロの授業だ」という授業に出会うことは少ない。結局有田の結論は、「これで勝負するのだという教材を持っていない」ことだ。教材の弱さは致命的だ。子どもたちが「学びをつくり出し学びを変えていく」授業づくりをと呼びかける。


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ISBN:
978-4-18-240322-4
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 200頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 授業に目玉を
一 学校はスクールからビジイへ
二 教えたいことをはっきりもって
三 提案したい授業
U 小さなヒントをためて花を開かせる
一 子どもから教わるヒント
二 さがし求める心
V 学びを鍛える秘訣
一 お釈迦様の指
二 授業力アップについて
三 教材研究の意味
四 地図帳の使い方
五 指導技術の大切さ
六 新しい教材研究法
七 授業力アップは「教材を見る目」
W 「この一枚」でどう発問するか
――授業の実力を試してみませんか――
一 街路樹から街が見える
二 “霧の摩周湖”の謎を解く
三 橋の下にトンネルが三本もあることが見えるか?
四 「黒酢」って、どこで、どのようにしてつくってるの?
五 この一枚から酪農の変化が見える
六 石仏から地域の仏教文化が見える
七 畑を「観光の目玉」にした美瑛
八 「とらや」ののれんから何が見えるか
九 石塁から何が見えるか
十 怪獣のような木から何が見えるか
十一 流氷から何が見えるか
十二 巌流島から何が見えるか
X 本当の社会科とは何か
一 大分県の温泉
二 世田谷区用賀というところ
三 ポストづくり
四 大分というところ
五 別府の街の再生
六 応用力
七 黒酢づくり
八 動物園の展示方法を変える
Y 教材が面白ければ夢中になって追究する
一 飛び込み授業でも子どもは動く
二 筑後のこの教材で社会科の授業を
1 手間ひまかけることの大切さ
2 プラスαのある子を育てる
3 筑後のこの教材で授業する
(1)久留米の街路樹/ (2)柳川の掘割/ (3)八女のお茶/ (4)立花町のミカン
Z 社会科を好きにする指導法
一 基礎基本とネタ開発の並行方式を例に
1 いい教材には基礎基本が含まれている
2 展開順の後でねらいを書く
二 社会科の授業の中に「遊び」の要素のある授業はこれだ!
1 学校は元来「ひま」なところだ
2 遊びの要素を「教材」で創り出す
3 遊びの要素は時代の壁を破る
4 知識や技能を自らの力で創り出す
[ 子どもの意欲を引き出す教師の働きかけ
一 まず「一人の子を育てよ」が鉄則
1 意欲のない子はどこにもいる
2 試食で意欲が出たK君
3 三年目に芽が出たM君
4 「君が大好きだよ」
二 N君を大変心させたY子
1 忘れ物の天才(N君)に手をやく
2 忘れ物の天才を直したY子
三 生活習慣・学習習慣をつけることは、楽しみながら継続すること
1 読みきかせで読書習慣を
2 「おたよりノート」と「はてな?帳」で書く習慣を
3 生活習慣は「挨拶」から
四 社会科の授業ここを改善したい
1 教科書の使い方を工夫する
2 絵画資料の読解のさせ方
3 文章をどう読みとらせるか
4 教科書の用語カードを作って考えさせる
\ 「考える力」を伸ばす教師の指導
一 面白い問いを出せば、子どもは本気で考える
1 子どもは考えたがっている
2 考えざるを得ない問いを出す
二 社会科で「考える習慣」づくりの決め手
1 簡単に答えを教えない
2 考えざるを得ない教材の提示
3 ノートさせて考えさせる
三 教師の目線に「力量」が表れている
1 自分の盲点を自覚しているか
2 教師の目線に力量と人間性が
] 教師修業のあり方
一 教育技術の習得と人間性をみがく講習を
1 講習は必要か
2 必要な講習内容とは
(1)教育に対する意欲と責任感/ (2)子ども理解の技術/ (3)教育技術の習得目習いと手習い/ (4)人間性の向上至難の技だ
二 きちんとした「視点」を持って授業を見ること
1 視点を持って授業を見る
2 全体的な雰囲気も見る
三 読書の楽しさ
四 夏休みをほんの少し知的に過ごそう
1 二度だけ成功した計画
2 百聞があって一見が生きる計画を
3 やってみたい夢の計画
4 子どもに「夢」をもたせる計画を
五 あまりにも太平洋戦争・東京裁判のことを知らなさすぎる
1 国と国の関係は変化する
2 正しい戦争の歴史を
3 あまりにも知らなさすぎる
六 授業のよしあしは「笑い」で決まる
1 笑いは神の心をも開く
2 笑うのは能力だ!
3 「まねる」から「学ぶ」へ
七 社会科教師にこんな理解力があるか ――昭和年版「はいまわる経験主義」から昭和年版「つめ込み主義」へ――
1 年版のよさと問題点
2 はいまわる経験主義からの脱却
八 人生の持ち時間を考える
1 生涯の伴侶となる授業
2 提案したい「人生の持ち時間」
]T 新しい教育界の動きから考えること
一 愛国心の評価は不可能である ――正確にできる方法がない――
1 国を愛するようになる契機がある
2 もっと身近なことから広い世界がみえるものを
3 真の愛国心とはどんなものなのか?
二 新しい教育法を考えなくては ――ニート・フリーターの出現――
1 ニートとフリーター
2 教育の欠陥・企業の都合
3 学校でやるべきこと
三 補充・発展教材を積極的に使うこと
1 文部科学省に頼っておれぬ
2 補充・発展教材を積極的に行う
]U 総合的学習
――アレルギーの底流にある教育観
一 「教え・わからせ・理解させ」なければ ――学力はつかないという教育観――
1 教えなければわからない
2 学校ぐるみのアレルギー
二 総合的学習の理想的授業像
1 いい授業をみつけるのは至難の技
2 理想的な授業例
3 角谷和彦氏の追究
三 大名の食事を授業する
1 食べ物調べはむずかしい
2 秀吉と家康の食事
四 教材開発見直し点はここだ
1 総合では教材研究をしていない?
2 今実践している教材を見直す
3 ありふれたものを見直す
]V 歴史認識をめぐる最新情報を総括する
一 世界史と日本史のインターフェイス
1 新聞報道はどこまで事実か?
2 小学校から世界史の学習?
3 世界史の構成要素
二 文科省の部会審議から見えてくるもの
1 基礎・基本の充実
2 社会科らしい内容の充実

まえがき

 多くの授業を見せていただくが、「これがプロの授業だ!」「すごい子どもたちだ!」という授業に出会うことはめったにない。教師の腕は落ちているのだろうか?と考えてみる。どうみても、「落ちている」というようにみえる。

 第一、授業に「目玉」がない。「見せ場」(山場)がない。参観者が自然に引き付けられるような面白い授業がない。研究授業をするのに、どうして「目玉」を作らないのだろうか。いや、作れないのだろうか、と考えざるを得ない。目玉とは何か、わからないのかもしれない。

 「この一枚で、本時は勝負をしているのだ!」というものがみえない。訴えるものがない。

 ドリルとか、音読とか、英語のようなものをやって、ごまかしている。なぜ、本気で「教材で勝負しないのか」わからない。結局、わたしの結論は、「これで本時は、勝負するのだ!」という「教材」を持っていないのだということになった。教材の弱さは致命的といった感じである。

 子どもたちも、教師の指示や発問に従順で、「もっと面白いものを提示してくれ」といった迫力がない。子どもたちが、「自分の学び」をつき合わせて、よりよい「学び」(変えていこうという意欲)が感じられないのである。

 こういう状況を見るにつけ、何とか手助けできないかと考え、本書を書いた。

 まず、授業に目玉をつくること、これがなければよい授業にならないことつまり「授業とは何か?」ということを、もう一度考えてほしいと思い書いた。そして、「授業」というのは、「子どもの学びをつくり、学びを変える営みなのだ」ということ、この学びを鍛える秘訣を書いた。秘訣といえば大げさだが、ちょっとしたことに気をつけるだけで、子どもたちの学びはぐんとアップする。これが秘訣なのである。

 このちょっとしたことが「W この一枚でどう発問するか授業の実力を試してみませんか」というところである。具体例として写真を提示し、これをどう読みとって、どんな発問・指示をすればよいか、考えてほしいと願ったのである

 そして、「X」では、社会科教師としてどんな生活をすべきか、地域のためにどんな仕事をすべきかということを体験に基づいて書いた。体験したことでないと弱い。わたしは、常に問題に「体当たり」して、新しい解決法を考え出している。これが本当の社会科ではないかと考えている。知識だけではだめだ、行動なくして社会科とはいえないのではないか、というのがわたしの主張である。子どもたちが、「学びをつくり出し、学びを変えていく」のは、具体的な事実と出会い、手間・ひまかけて努力と挑戦をしているときである。間違うことを恐れないで、前向きに挑戦していくこと、そんな様子をいろいろな例で述べた。子どもたちも多様だから、対策も多様でなくてはならない。

 子どもが「学び」をつくる上で、殊の外大切なものが「ノート」である。この書くことが十分になされていない。ノートにも書かせ方の秘訣といったものがある。こんなこともさらりとふれておいた。一読して御指導・御批判をいただければ幸いである。いつもわたしの活動をささえてくださる読者のみなさんに心からお礼を申し上げたい。

 本書も、明治図書編集部の江部満編集長のおすすめによってまとめることができた。厚くお礼を申し上げたい。


  二〇〇七年四月   /有田 和正

著者紹介

有田 和正(ありた かずまさ)著書を検索»

1935年 福岡県生まれ

玉川大学文学部教育学科卒業

福岡県の公立校,福岡教育大学附属小倉小学校,筑波大学附属小学校を経て愛知教育大学教授

1999年3月 愛知教育大学定年退官

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • さまざまな雑誌に書かれたものや講演の内容を起こされたものがまとめられている。いつもの有田節のところもありつつ、相手から(おそらく)テーマを与えられ、それに応じた形のものだろうというところもあり、これまでなかった視点の話も多く載っている。当時の教育界の動きや、文科省の動向に対しての発言もある。有田先生は常に現状を見て、大切なことを説かれている。

      @いい教材の条件
      1.身近なことから、広い世界が自然に見えるもの
      2.能力に応じて、どこまでも追究できるもの
      3.多様な調べ方と工夫ができるもの
      自分で教材開発をする歳や、他の授業での教材を見る際にも、この3点をあてはめて考えることができる。実際、有田学級の「追究の鬼」たちは、上記の条件を満たした教材から誕生した猛者たちである。

      A意欲のない子、やる気のない子がいるから面白い
      子どもの学習意欲を引き出すために努力されてきた有田先生の「子ども観」の一つであろう。この立ち位置から始めることが大切なのだと強く感じた。有田先生は続いて「意欲のない子がいるからこそ、何とかしようとして、腕が上がる」「意欲のない子の様子をよく観察すると、意欲を出すものがあることが分かる」「教師の都合で。意欲があるとかないとか考えていないだろうか」「『この子』に合わせて考えなくては、意欲を引き出すことができないことを知るべき」

      B生活習慣・学習習慣をつけることは、楽しみながら持続すること
      習慣をつけさせるには継続しかない。そのためには「楽しさ」が必要である。子どもたちは「楽しい」と感じたことは、すすんで取り組むことができる。本当に力のある教師は、子どもたちに一つでも多くの良い習慣をつけられる者であると考える。それには日々の授業や学級づくりの中でしか育てられない。

      C「考えさせる」には「考えざるを得ない問い」を出せばよいのである
      子どもたちは健気である。大好きな先生から質問されれば、一生懸命に考える。しかし私たち教師はそれに甘えていないだろうかと日々、自己点検しておく必要がある。ただの問いではない「考えざるを得ない問い」こそが、本当に子どもたちに力をつけさせるのである。子どもたちを育てる教師として「発問」は常に磨き続けなければならない。

      D教師の「人間性」が表情や目線になって表れている
      「目は口ほどにものを言う」このことは子どもだけでなく教師にも当てはまる。有田先生は、力量をつけるためには「目的意識をもって(子どもを)見る」ことを書いている。そして「鋭く、あたたかい目線なくして、いい授業はできないし、子どもの把握もできない」と述べられている。

      6年生の最後の授業「人生の持ち時間」。改めてこの本を読み返して、個々のページは考えさせられるところがとても大きかった。
      2014/8/13學ひ魂

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