●活用型学力をはぐくむ●学びの知恵を働かせる授業づくり

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「知恵」という概念を授業レベルまで下ろし実践を提案

活用型学力は、「学びの知恵」だ! 例えば、算数では数理を使いこなす子どもを育てたい。では、いったいどうやって? 単元構成の工夫から具体的な授業の内容まで、子どもに活用型学力をつけるためのノウハウを全教科領域に渡って詳述。


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ISBN:
978-4-18-236620-8
ジャンル:
授業全般
刊行:
3刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 232頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき 附属久留米小学校校長 /石丸 哲史
第T章◆これからの子どもたちに求められる力
[1] 変化の激しい社会で生きるために
[2] 全国学力・学習状況調査から考える
[3] 活用型学力は,学びにおける「知恵」である
第U章◆「学びの知恵」を働かせる授業づくり
[1] 「学びの知恵」について
(1) 学びの知恵とは
(2) 学びの知恵を働かせるとは
(3) 学びの知恵を働かせる子ども
(4) 学びの知恵を働かせるために必要な要素
(5) 学びの知恵を働かせるイメージ
[2] 学びの知恵を働かせる授業づくりの条件
(1) 学習の目的意識が明確になる教材との出会いがあること
(2) 見通しを立て,試行錯誤しながら自分で考えさせること
(3) 考えを説明したり,解釈したりする交流があること
(4) 学んだ結果と過程を自己評価できる場があること
第V章◆学びの知恵を働かせる授業づくりの構想
[1] 学びの知恵を働かせる教材化の工夫
(1) 学習する内容が焦点化されていること
(2) 強い目的意識をもって取り組める切実さがあること
(3) 既習の知識・技能と類似性があり,既習事項と比較したり,関係づけたりできるものであること
(4) 日常生活と深いかかわりがあり,いくつかの知識・技能や,手順をふんだ解決が求められるものであること
(5) 問題解決に必要な条件が,過多であったり,逆に不足したりして,条件選択が求められるものであること
[2] 学びの知恵を働かせるプロセスの構築
(1) 「形成化」の段階
(2) 「定着化」の段階
(3) 「組織化」の段階
[3] 学びの知恵を働かせる言語活動の工夫
(1) どんな言語活動を行うのか
(2) 言語活動をどのように位置づけていくのか
(3) 言語活動を進めていくための教師の手だて
第W章◆各教科・領域等の具体的な授業づくり
〈国語科 言葉を使いこなす子どもを育てる授業づくり〉
1 国語科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 国語科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈社会科 社会的な見方や考え方を意欲的に深める子どもを育てる授業づくり〉
1 社会科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 社会科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈算数科 数理を使いこなす子どもを育てる授業づくり〉
1 算数科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 算数科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈理科 科学的に追究し続ける子どもを育てる授業づくり〉
1 理科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 理科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈生活科 対象とのかかわりを深める子どもを育てる授業づくり〉
1 生活科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 生活科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈音楽科 音楽の楽しさを求め続ける子どもを育てる授業づくり〉
1 音楽科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 音楽科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈図画工作科 自分の感性を働かせてつくりだす子どもを育てる授業づくり〉
1 図画工作科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 図画工作科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈家庭科 家庭生活を高める子どもを育てる授業づくり〉
1 家庭科で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 家庭科における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈体育科 自ら体力を高める子どもを育てる授業づくり〉
1 体育科(体力を高める運動)で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 体育科(体力を高める運動)における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈道徳 自己の生き方をつくり出す子どもを育てる授業づくり〉
1 道徳で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 道徳における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈学級活動 生活を改善し続ける子どもを育てる授業づくり〉
1 学級活動で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 学級活動における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈総合 共生の生き方をつくり出す子どもを育てる授業づくり〉
1 総合的な学習の時間で目指す子どもの姿
2 目指す子どもの姿に必要な「学びの知恵」
3 総合的な学習の時間における授業づくりの構想
4 授業の実際
〈保健 解決志向で健康づくりを目指す保健室経営コーチングを生かした健康相談活動〉
1 保健室経営で目指す子どもの姿
2 解決志向で健康づくりを目指す保健室経営について
3 解決志向で健康づくりを目指す保健室経営の構想
4 解決志向で健康づくりを目指す保健室経営の実際
5 コーチングを生かした健康相談活動の実際
あとがき 附属久留米小学校副校長 /松澤 文人

まえがき

 我が国は,経験主義的知識獲得を特徴とし,その習得過程において「暗黙知」の移転が卓越していたといえます。すなわち,教える側は多くを語らず,教える側の姿を観察することによって,教わる側はその姿から経験主義的に知識を獲得するものでありました。

 したがって,言語化して知識を移転するというようなコミュニケーションが恒常的にみられるわけでなく,この過程において「形式知」の移転は顕著とはいえませんでした。知識の表出化に我が国独特の流儀があり,「黙して語らぬ」ことが美徳とされてきました。

 これまでの我が国は,先のみえる社会であったために,決められた知識を予め備えていれば将来が保障されていたといえます。教える側は先達が築き上げた知の財産をそのままに伝授しさえすればよかったのかもしれません。「どうしてこのことを学ぶのですか?」と教師が問われたら,「黙って私のいうことを聞いていればよい」と諭し,信じさせて学ばせるといったように,活用場面の想定なき知識の習得であっても,その活用場面が将来登場するような社会であったともいえます。

 しかしながら,今日の社会では,グローバル化などさまざまな社会的構造変化によって,先のみえない社会へと変貌いたしました。このような中にあっての教育は,現在と変わらない将来が訪れると盲信することを前提とせず,将来の状況をシミュレートすることによってそれに適合した知識は何かを精査し,いかにそれを習得させるかということが重要であります。

 そこで,将来において活用される場面を明確に設定し,その場面において求められる力とは何なのか定めることは教える側の責務といえましょう。「暗黙知」の移転だけに精力を傾注することなく,さまざまな言語活動によって,活用することを前提とした「形式知」化された知識の移転である学習でなければなりません。OECDにおいて確固たる地位を我が国が維持するためには,PISA型学力も具備することが課せられています。

 もっとも,このことは我が国においてこれまで蓄積された教育の財産を反故にするということではありません。我が国には崇高な暗黙知の所産ともいえる「知恵」というものが存在します。「不易と流行」を視野に入れ,活用度を高める授業に必要なものは,まさに「学びの知恵」ではないでしょうか。

 巷では「習得−活用−探究」という言葉だけが闊歩し,現場ではその定義づけに翻弄され,肝心の授業への具体化が遅々として進んでいないのが現状であります。今や具体的な授業論の展開が喫緊の課題といえましょう。

 「学びの知恵」を素通りすることなく,真摯な姿勢でこれに立ち向かい,これを解剖する時期がいよいよ我が国にも到来しました。授業という具体的レベルにおいて「学びの知恵」の解剖と「学びの知恵を働かせる」授業づくりの処方箋を提示することが急務であるという社会的要請を受け,本校では「知恵」という漠とした概念を授業レベルにまで下ろし実践の提案をいたします。

 本書の刊行に際しましては,原榮一先生をはじめとする諸先輩方からご支援を賜り,また明治図書の樋口編集部長からは特段のご高配を賜りました。記して厚くお礼申し上げます。

 「知識の持ち腐れ」とならない日本人を創るための教育を目指し,ここに本書を上梓いたします。


  平成21年3月   福岡教育大学附属久留米小学校校長 /石丸 哲史

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