学習意欲を引き出す授業づくり 高学年

学習意欲を引き出す授業づくり 高学年

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教師自身が知的好奇心を持てば必ず子どもの意欲を引き出せる。

学習意欲を引き出す授業づくりのポイントとして、@逆転現象を起こす、A考慮すべき子どもの特徴をつかまえる、B新たな「?」を与える、C認めることを提言する。さらに授業づくりでは、国語、社会、算数、理科、音楽、図工、家庭、体育、道徳など事例で示す。


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ISBN:
4-18-233210-5
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
[T] 学習意欲を引き出すということ
1 教師自身が知的好奇心を持つこと
2 子どもを前向き肯定的に評価すること
3 子どもが見えること
[U] グレーゾーンの子どもたちへの配慮と学級担任の心得
1 グレーゾーンの子どもたちへの配慮と学級担任の心得
2 医師からのアドバイス―軽度発達障害がある子どもを育む授業作り
3 特別支援教育コーディネーターの仕事
[V] 学習意欲を引き出す授業づくりのポイント
1 逆転現象を起こす
2 考慮すべき子どもの特徴をつかまえる
3 新たな「?」を与える
4 認める
[W] 授業づくりをどうするか
1 国語の授業―「表現を工夫しよう(水のこころ)」(5年)
2 国語の授業―「感動をリズムにのせて」(6年・東京書籍下)
3 社会の授業―「これからの食料生産」(5年)
4 社会の授業―「わたしたちのくらしと日本国憲法」(6年)
5 算数の授業―「おつりはいくら?」(5年)
6 算数の授業―「学級通信の体積」(6年)
7 理科の授業―「もののとけかた(砂糖を入れる飲み物)」(5年)
8 理科の授業―「大地のつくりと変化」(6年)
9 音楽の授業―「アンサンブル発表会をひらこう」(6年)
10 図工の授業―「作って遊んで(おしゃべりの達人)」(工作)
11 図工の授業―「百羽のつるを描こう」(図画)
12 家庭科の授業―「調理のふしぎ(こんにゃく)」(5年)
13 家庭科の授業―「調理実習では子どもたちに買い物をさせる」(6年)
14 体育の授業―「体ほぐし(仲間との交流を広げる)」(5年)
15 体育の授業―「たばこと健康」(6年)
16 環境の授業―「自動車から環境を考える(CO2を減らす)」(案)
17 福祉の授業―「誰にもやさしいユニバーサルデザイン商品」
18 英語活動―スキット(寸劇)作り
19 情報の授業―「地域の人々にプレゼンし,インターネット上で発表する」
20 道徳の授業―「松下幸之助の成功の理由」(5年)
21 道徳の授業―出し切る(6年)
あとがき

まえがき

 あるとき,1通のメールが入った。そのメールのたった1行から,面白いやり取りが始まった。【A】から【D】の4人のやり取りの一部である。

【A1】七ヶ宿から仙台経由で帰ってきました。

【B1】佐沼から七ヶ宿まで行ってしまうんですから! きっと自らネタを発見する機会が増えることでしょう。

【A2】白樺に動物がかじった跡がついていました。何故白樺なのか? 軒下にぶら下がっている野菜は何か? リフト降り場のところで水が勢いよく流れていたのは沢だろうか?

【C1】全部面白い! その次の予想,さらに次の予想が「?」を広げるんですよね。

【D1】(A2への返信)もしそうなら,大根かと思います。

>沢だろうか?→たぶん沢水でしょう。すぐ上のリフト脇に沢がありますので。池には,イワナやニジマスがいるんですよ。これも,今度スキー場のだれかに聞いてみます。

【A3】(C1への返信)そういう視点で見るように心がけるだけで世界が変わってきました。

【A4】(D1への返信)やっぱり! 輪切りになっていたのですが,どんな料理に使うのでしょう?

【D2】(A4への返信)私も見たときから,気になっていました。教え子の家にもぶら下がっているので,今度聞いてみます。名前とあわせて。干し大根,寒干し大根,凍み大根,ぶら下げ大根……。

【C2】(D2への返信)保存食だろうな。保存食にはどんな種類があるんだろう。地域によって保存食は違うはずだろう。山間部と海岸部の違いや暖かい地方と寒い地方の違い。それらの栄養価は? 保存食の作り方,調理の仕方,これらにも地域性があるだろう。作ったり,調理したりするのはお年寄り? お年寄りとの会話。昔話。食文化の継承。伝統食品。保存食と高齢化社会。福祉。グループホーム。保存食とミイラ。保存食と宗教。海外の保存食。保存ができる環境とできない環境。食物を保存したい民族と保存したくない民族。その地理的関係。……まだまだ続きますねえ。ワクワクしてきます。

【A5】(C2への返信)>保存食にはどんな種類があるんだろう。

→動物性。干し肉は,台湾。ビーフジャーキーは,アメリカ。するめ,さきいかは,日本。チーズ,サラミ,ウインナー,ハム,ソーセージは,ヨーロッパ。アジ,サンマ,カレイの干物,新巻鮭,メヌケ粕漬け,肉のみそ漬けは,日本。植物性。ピクルス,梅干しなど漬け物類,わかめ,昆布,椎茸,凍り豆腐,納豆は,日本の代表的な保存食ですね。思いつかないものをあわせたらかなりありますね。調べるのが面白そうです。

>山間部と海岸部の違いや暖かい地方と寒い地方の違い。→手に入る食材によってまず違いが出ますね。

>それらの栄養価は?→エスキモーのように寒いところで暮らす人々は,熱量が必要になりますね。(中略:竹川)

>グループホーム。→この辺は,総合的な学習にいいですねえ。

【D3】(D2の続き)受け持ちの子どもに給食のときに聞いてみたら,知っていました。凍み大根でした。煮物にして食べているそうです。昨日,スキー場に行くときに家々を見てみたら,2種類ありました。輪切りのもの,半分ぐらい切ったもの。同じものなのか違うものなのか。(以下略:竹川)

 たった1通のメールから,興味・関心は様々な方向へと広がっている。今回は,【B】の「きっと自らネタを発見する機会が増えることでしょう」に【A】が食いついたことから始まった。【A】はすかさず,「軒下にぶら下がっている野菜は何か?」という「?(はてな)」を出してきた。その「?」が【C】と【D】の興味・関心まで呼び寄せてしまったのである。たった1通のメールのたったひと言から,興味・関心の輪が広がったのである。しかも,広が

る先が様々なのである。(それぞれが面白いと思うこと,興味・関心の持ち方が違うんだな)と改めて実感する。メールに書かれた「?」を見ると,国語・社会・算数・理科・家庭・総合……と,どの教科・領域でも授業に結びついてしまう。1つの「?」が生まれると,「?」は四方八方へと広がっていくのである。そして,この興味関心は,子どもたちの意欲を引き出す源となる。

 つい先日のことである。

 土門拳記念館に入って間もなく目に飛び込んできたものがある。それは,「走る仏像」というタイトルである。(走る仏像? 仏像が走る?)と,好奇心に駆られて文章に目をやった。(これは面白い!)と,手帳に写した。

 「仏像や山や木というものは,写真の対象のうちでは,スタティックな被写体に属するはずである。わたしも長い間そう思っていた。(中略:竹川)鳳凰堂に別れを告げようとして振り返ってみたら,茜雲を背にたそがれている鳳凰堂は,静止しているどころか,目くるめく速さで走っているのに気がついた」(土門拳『古寺を訪ねて 京・洛北から宇治へ』2001年,小学館,186ページ)

 (えっ!? そんなことがあるのか)

 土門拳は,しばし呆然となり,思わず「カメラ!」と怒鳴ったという。

 好奇心に駆られた文章がもう1つあった。「写真の立場」というタイトルの文章である。

 「実物がそこにあっても,実物を何度見ていても,実物以上に実物であり,何度見た以上に見せてくれる写真が本当の写真である。写真は肉眼を越える」(土門拳記念館)

 このあと,写真を見る気持ちが一変した。


 本書が子どもたちの好奇心と学習意欲のスイッチをONするのに少しでも役立つことを願っています。


   /竹川 訓由

著者紹介

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日本教育技術学会会員

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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