- はじめに
- 第1章 「全職員定時退校」を実現するためのスクールリーダーのマインドセット
- マインドセット1 働き方のルールを意識する
- マインドセット2 労働観をアップデートする
- マインドセット3 勤務時間内に通常業務を終了できるような業務量を意識する
- マインドセット4 組織の変化のプロセスをイメージし覚悟を決める
- マインドセット5 エビデンスや成功事例を示し、職員の納得感・安心感を高める
- マインドセット6 真の「ワークライフバランス」を理解する
- マインドセット7 職員が「働きがい」を感じられる職場をつくる
- マインドセット8 問題の解決にはポジティブアプローチで臨む
- マインドセット9 職員同士で「ライフ」を尊重し合える雰囲気をつくる
- マインドセット10 学校運営や組織開発の取り組みへのフィードバックを得る機会をつくる
- 第2章 ポジティブアプローチで進める職員室の意識改革
- 1 「学校の働き方改革」を始めよう
- @ 新任教頭として着任して
- A 「学校の働き方改革」の提案
- 2 先生が前向きに取り組むことができる「学校の働き方改革」を
- @ 「教頭だより」を発行しよう
- A 「個人定時退校」にチャレンジしよう
- 3 「学校の働き方改革」について学ぼう
- @ 「学校の働き方改革」先駆者との出会い
- A 「学校の働き方改革」先進校を訪ねて
- 4 みんなで理想の働き方を考えよう
- @ 「理想の1日」を構想しよう
- A タイムマネジメント・タスクマネジメントを意識しよう
- 5 職員室の雰囲気を変えよう
- @ 退勤しやすい雰囲気を高めよう
- A 休暇・職免(職務専念義務免除)を取りやすい雰囲気を高めよう
- 6 保護者・地域の意識にも働き掛けよう
- @ 保護者・地域の認識を変えよう
- 第3章 ボトムアップで実現する職員室の業務改善
- 1 業務整理・業務改善のためのチームをつくろう
- @ 業務改善・業務整理の仕組みづくりは三役(校長・教頭・教務主任)で
- A 職員の働き方改革に対する思いは「働き方改革推進委員会」で把握を
- B 担当者の思いや考えを生かせる校務分掌へ
- 2 余白を生み出そう
- @ 日課表を見直そう
- A 通知表の書式を見直そう
- B 会議の実施方法を見直そう
- C チャイムと留守番電話機能の活用で時間を意識できる仕組みをつくろう
- D 集金業務から教員を解放しよう
- E 「働き方改革推進委員会」を開こう
- F 朝の打ち合わせをスリム化しよう
- G 会議の回数を精選しよう
- H 学校行事へ臨む意識を変えていこう
- I 長時間労働傾向にある職員をフォローする雰囲気を高めよう
- J 情報は積極的に発信しよう
- K 再び「働き方改革推進委員会」を開こう
- L 学年だより・学校だよりを一本化しよう
- M 特別教室の利用調整や授業準備にはタブレットを活用しよう
- 3 働きがいの感じられる職場を目指そう
- @ 学校評価の実施方法を見直そう
- A 学校評価を通して学校運営の改善に取り組もう
- 取り組みを振り返って
- おわりに
はじめに
月80時間以上の時間外労働者ゼロ。
これは、前任校である名古屋市立東築地小学校の先生方が、学校の働き方改革を始めてから2年で、実際に達成した成果です。
平成29年4月、私は東築地小学校に教頭として着任しました。当時の東築地小学校は、月80時間以上の時間外労働者が全体の36%にものぼり、長時間労働は深刻な状況でした。この状況を打開するため、1年目には教員の「意識改革」を、2年目には「業務改善」を推進しました。私の思いに応えてくださった当時の校長先生や、教職員のみなさんの協力があり、前述のような成果を得ることができました。
手探りでの取り組みであったため、まだまだ課題は山積していました。しかし、実際に成果のあった学校の働き方改革の取り組みを、今にも激務に押しつぶされそうな全国の先生に向けて発信したい。その思いを強める中、私は着任後2年で東築地小学校を去ることになりました。
そして、平成31年4月1日。
まさに、平成から令和に時代が移り変わろうとしているとき、私は名古屋市立矢田小学校に教頭として着任しました。
名古屋市は平成31年3月に「第3期名古屋市教育振興基本計画 〜夢いっぱい なごやっ子応援プラン〜」を策定し、学校を子どもがいきいきと活動できる場とするために、個別最適化された学び(画一的一斉授業から個別化・協同化・プロジェクト型学習への転換)を推進することとしました。その中で、矢田小学校は「画一的な一斉授業からの転換を進める授業改善」事業のモデル校として指定を受けました。
新しい学習指導要領の本格実施を1年後に控え、教員は学ぶ時間を確保しなくてはなりません。そのような中、全国の注目を集める事業のモデル校として指定を受けたのです。
モデル校としての成果をあげるため、多額の予算が注がれ、名古屋市教育委員会スタッフと教育専門機関が校内に常駐することになりました。タブレットパソコンも160台導入されます。これからの教育の在り方と、子どもたちの成長を思うとわくわく感は止まりません。同時に、先生たちにかかるプレッシャーも計り知れないものがあると感じました。
一方、平成31年1月、中央教育審議会では「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」を取りまとめました。この答申では、学校における働き方改革の目的を、
「我が国の学校教育を維持・向上させ、持続可能なものとするには、学校の働き方改革は急務」「子供のためであればどんな長時間勤務も良しとするという働き方の中で、教師が疲弊していくのであれば、それは子供のためにはならない」
というように示しています。そして、勤務時間の管理を徹底し、上限ガイドライン(月45時間、年360時間以内)の実効性を高めることが求められています。
働き方改革を進めながら、限られた時間の中でモデル校としての成果をあげる。
本校に課せられたミッションは、日本の教育の未来を描いたものと言っても過言ではないと思います。そして、本校の校長から、教頭としての私に課されたミッションは、
本校の先生たちに健康的で生き生きと働いていただき、モデル事業を成功させるために、本校の働き方改革について、前任校での実践経験を整理し、発信すること
というものでした。
そこで、学校長の期待に応えるべく、かねてから発信したいと考えていた前任校での取り組みを中心に振り返り、一つ一つ整理しました。本書は、働き方改革を進めるためのスクールリーダーのマインドセットと働き方改革に関わる具体的な実践例を、同様のミッションを抱える多くの学校の管理職の方々へのメッセージとしてまとめたものとなります。
長時間労働が解消され、職員がゆとりの中で、健康的にやりがいをもって業務にあたることができるようになる。
「意識改革」「業務改善」によって生み出された時間を大切にしながら、自己研鑽に励んだり、休養を十分に取ったりすることができるようにし、子どもたちのために最高のパフォーマンスを発揮することができるようになる。
この本をお読みいただき、そんな先生が一人でも増えるといいなと願っています。
「新しい時代の学校の先生の働き方」について、ともに考えてみませんか?
令和2年5月 /中村 浩二
自分の学校でも使えるものは、すぐにでも提案したいと思いました。
組織の立ち上げ方等、勉強になりました。
学年の様子はどのように伝えているのか、子どもたちの様子は記載していないのかなど。
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