- 〈解説─まえがきに替えて─〉
- 子どもの「学び方」を鍛える学習訓練・指導技術 /大内 善一
- T 教えることは学ぶこと
- 一 先輩女教師の一言から
- 二 専門的職業人としての教師の仕事
- 三 子どもから学ぶということ
- 【専門的職業人としての自覚】
- U 私はこうして子どもを鍛えた
- 一 三層の学習訓練
- 二 学習の基本的な躾
- 1 文房具の扱い方
- 2 基本的な学習態度
- 三 「学び方」を鍛える
- 1 ねらいの明確化
- 2 訓練の方法としての『学習のてびき』
- 3 「学び方」を育てるほめ方
- 4 問題解決の順序
- 5 話し合い、聴き合う力を鍛える
- 6 考える力を鍛える「学んだことを生かす」
- 【子どもの「学び方」を鍛える学習訓練】
- V 教科の「学び方」を育てるための学習訓練
- 一 国語の場合
- 1 教材研究
- 2 文脈の中で言葉の意味を解釈する
- 3 証拠の言葉をもとに解釈する
- 4 これまでの学習と重ね合わせながら解釈し、語彙を増やす
- 二 社会の場合
- 1 言葉に対する抵抗を取り除く
- 2 資料の読み取り
- 3 見方・考え方の指導
- 三 算数の場合
- 四 理科の場合
- 五 道徳の時間の場合
- 【関係づけて学ばせる】
- W たかが技術、されど技術
- 一 指導技術
- 1 集中させる
- 2 「はい、はい」
- 3 教師の発声
- 4 教師の立つ位置と視線
- 5 指名の仕方
- 6 視 写
- 7 机間指導
- 8 発 問
- 二 教具の扱い
- 1 指示棒
- 2 板書の工夫
- 三 教師の構え
- 1 授業で子どもを鍛える
- 2 呼吸、目配り、心配り
- 3 一問多正答の授業
- 4 教師は繰り返さない
- 5 子どもの発言の良さを意味づけてやる
- 6 個別指導で新たな課題を与える
- 7 人皆教師、物皆教師
- 8 思いつきや閃きを大切にする
- 9 子どもに感動する
- 10 保護者と喜びを共有する
- 11 子どもの育った姿を保護者に見せる
- 【子どもの学びを触発し援助する指導技術】
- あとがき /佐藤 康子
〈解説─まえがきに替えて─〉
子どもの「学び方」を鍛える学習訓練・指導技術
茨城大学教育学部 /大内 善一
本書は、佐藤康子先生の前著『子どもが語り合い、聴き合う国語の授業』(二〇〇六年九月、明治図書)に続く二作目です。佐藤康子先生との出会いは、前著に詳しく述べましたので、本書では割愛とさせていただきます。
佐藤先生には、二〇〇六(平成一八)年八月二十一日〜二十四日の四日間、茨城大学教育学部で集中講義「国語科教育法特講W」をお願いしました。四日間の講義はすべてビデオで記録を撮らせていただきました。前著にはそのときの講義の一端が盛り込まれております。
この集中講義は受講生に大変好評でありました。そこで、翌二〇〇七(平成十九)年八月十八日(土)には、私共の研究会「茨城国語教育談話会」で再び佐藤康子先生を茨城にお招きして、研修会を開催することになりました。
このときは大学の集中講義ではありませんでしたので、広く県内の小・中学校の先生方を対象として一日間での開催としました。参加者は百名を超えて大変な盛況でありました。
この講義も演習形式で、学習指導の基本を具体的に懇切丁寧に行っていただきましたので、参加された先生方にはとても好評でした。そこで、このときの講義の内容をさらに多くの先生方にご理解いただけたらよいのではないかと思い、本書の出版を企画致しました。
幸い、この講義もすべてビデオに記録しておきました。その記録が本書の内容になっております。
さて、本書では、子どもの学び方を鍛えるための学習訓練と教師の指導技術に関して、実践の様々な場面を取り上げながら具体的に述べられております。
前著では、佐藤康子先生による独自の話し合い活動の指導「語り合い・聴き合い」の意義が、国語の授業に限定して述べられていました。しかし、この「語り合い・聴き合い」という学習活動は、佐藤康子先生の国語以外の他教科・領域においても行われていたものでした。それだけ、応用範囲の広い学習活動であったと言えます。
ところで、私はここ十年間ほど、様々な機会に佐藤康子先生が指導されてこられた「語り合い・聴き合い」という学習活動の意義に関して取り上げてまいりました。茨城県内はもとより、他県での国語の研修会での講演や私が執筆した論文などの中で紹介させていただいたわけです。
私が講演の中で、佐藤康子先生の「語り合い・聴き合い」の授業のビデオ記録を紹介させていただいた折には、現場の先生方から、どうしたらこのような話し合い活動が子どもたちにできるようになるのだろうか、という疑問がしばしば出てまいりました。
先生たちが異口同音に口にしましたのは、とても自分たちの学級では、このような話し合い活動は無理だということでした。佐藤康子先生の指導には、何か特別な秘訣でもあるのだろう、というのが先生方の本心であったように私には思えたのです。
そこで、私はその度に、いえいえ佐藤康子先生のこの「語り合い・聴き合い」の授業は決して一朝一夕に創り上げられたものではないが、特別な秘訣があって成立したものでもありません、とお答えしてまいりました。
それは、私自身が佐藤康子先生の「語り合い・聴き合い」の授業ビデオを繰り返し数え切れないほど視聴させていただいてきて抱いた確信でもあったのです。
佐藤康子先生の「語り合い・聴き合い」の授業は、ともすればなおざりにされがちな基礎的学習訓練としての学習の躾、子どもの学習意欲を高め、持続させて、学習の質を高めていくための様々な指導技術の上に成り立っているのでした。
佐藤康子先生は、こうした基礎的な学習訓練や片々の指導技術に関して、二〇〇六年八月に茨城大学で行われた集中講義の際にも、受講した学生たちに対して実際に手取り足取り指導してくださっておりました。
その様子を見て、私が抱いていた確信は揺るぎないものとなったのでした。
佐藤康子先生が実践してこられた基礎的な学習訓練の指導や、子どもの学習意欲を高め、持続させて、学習の質を高めていくための片々の指導技術に関しては、前著の中にもその一端が述べられております。
しかし、前著では、「語り合い・聴き合い」の授業そのものに関する言及が中心でした。そのために、国語以外の教科や領域での指導における基礎的な学習訓練や指導技術に関しての言及が十分にはなされませんでした。
そこで、本書では、この部分に関して、国語という教科にとらわれず、すべての教科や領域における実践事例を取り上げて述べていただくことにしました。
本書の内容は、国語の授業における「語り合い・聴き合い」という学習活動を支えている基礎的な学習訓練や指導技術に関して述べられています。
したがって、本書は、前著の『子どもが語り合い、聴き合う国語の授業』の姉妹編と言ってもよいでしょう。
なお、これらの内容に関しては、各章の後に私のささやかな解説を付けさせていただきました。蛇足かとは思いますが、何かのご参考になれば幸いに存じます。
本書が前著同様に、多くの皆様にお読みいただけることを願いながら、まえがきとさせていただきます。
二〇〇九年一月
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- 明治図書