- はじめに 全国連合退職校長会 会長 /廣瀬 久
- T 子供の夢を育む学級創りの肝所
- [一] 感動体験が子どもを育む―情熱をもって、元気にベストを尽くして―…滋賀県 /乕丘 美代
- [コラム1] 子供を引き付けるコツ /目賀田 八郎
- [二] 子供と心をつないで―信念に基づく学級経営―…茨城県 /川窪 洋子
- [三] 共に歩む学年経営―弾力のある総合的な学習を通して―…愛知県 /杉浦 光子
- [四] 三つ巴の歩み―教員に『ゆとり』あってこそ―…広島県 /橘高 準
- [五] 若鵬よ紺碧の空へ舞え―限りなく広い未来へはばたく子供たちへの支援―…大阪府 /曽我 正雄
- [コラム2] 心に響く授業のコツ /織井 道雄
- [六] 支援教育コーディネーターの実践―未知の分野に誠実に飛び込んで―…神奈川県 /佐藤 純
- [コラム3] 親に信頼されるコツ /織井 道雄
- U 学力の向上を図る教科指導の肝所
- [一] 子供が動く授業を創る―授業力を磨く教員―…愛知県 /松山 美重子
- [二] 支え合う学級、学び合う授業の創造―算数科の学習指導を通して―…広島市 /原田 力
- [三] 瞳 輝け―伝統あるオーケストラの演奏を通して―…香川県 /岡田 恕枝
- [コラム4] ほめて育てるコツ /黒須 健児
- [四] 真の異文化理解を―自ら、中国語を学んで―…東京都 /押尾 賢一
- [コラム5] 会話力を育てるコツ /西倉 正
- [五] 若き教員の学び―授業力アップのポイント―…東京都 /會田 満
- [六] 全校表現劇『海よ光れ』―地域の歴史を通して、海の環境を考える―…岩手県 /箱石 敏巳
- [コラム6] 理科を好きにするコツ /戸張 敦雄
- V 輝く瞳に溢れる学校創りの肝所
- [一] とりあえず一歩前進―チャレンジハウスの取り組み―…栃木県 /伊藤 悟
- [二] 島の子供の輝く笑顔―離島分校での教育―…長崎県 /下釜 明
- [三] 音楽で心をつなぐ―合唱クラブの指導を通して―…北海道 /絹野 秀克
- [四] 今日も生き生き『天の花』―師先して、ゆめ・ゆとり・ユーモアへの挑戦―…和歌山県 /大岡 潤
- [五] 情熱と人柄が情緒を育む―吹奏楽部の中での成長―…沖縄県 /喜舎場 直子
- [コラム7] 地域の力を活用するコツ /片岡 敦子
- 本書で顕彰した方々
- おわりに 編集委員長 /目賀田 八郎
はじめに
全国連合退職校長会 会長 /廣瀬 久
今回、知識基盤社会への対応を重視し、『生きる力』の育成を目指し、確かな学力、豊かな心、健やかな体を育成することを基本方針として、学習指導要領が改訂された。なかでも、『生きる力』を考えるに当たっては、さらに、教育基本法第一条の『教育の目的』を押さえておくことが重要である。
人間が生きているということは、個人として生きているとともに、他人や集団・国家・社会とのかかわりという相互関係の中で生きているのである。
我々は、この世に生を受けて以来、今日までの様々な体験や環境が、その人の、ものの見方、考え方、感じ方の根底にあることも忘れてはならない。このことは、教育基本法第十条、第十三条の新設とも、深くかかわっていることにも注目しておきたい。
さらに、人間を取り巻く自然は勿論、一人の人間が、この世に生を受けるということに、自分の意志を働かせることはできない。我々は、自然や人間の力を超えたものとの、かかわりの中で生きているという認識を、明確に持っていることが重要であろう。
教育上、最も重要なことは、『教育する者とされる者との間に信頼関係が存在する』ことであるが、学校教育に限って考えてみても、教員と子供との信頼関係は勿論、子供相互、教員と保護者、学校と教育行政当局等との信頼関係なしには、教育の効果を期待することはできない。
学校における子供と教員の出会いには、子供も教員も保護者も、自らの意志を働かせる余地はほとんどない。その中で、信頼される教員になるには、『子供を認め、子供の自己実現を支援することに徹する』ことである。
即ち、一人一人の子供が、かけがえのない一人の人間として存在していることと、その価値を認めること。生命、人格、人権等を大切にする人間尊重の精神を根底に、一人一人の子供が、より良く生きたいという、願いや夢・希望を持って成長することを信ずること。子供が、自分は大切にされ、頼りにされていることを実感し、居場所があり、自己実現の喜びを味わえるようにすることである。
子供は、無自覚或いは無意識に、感情を中心に、様々な形で自己を表出している。しかし、指導者側がそのことを理解していなかったり、子供と指導者側のものの見方、考え方、感じ方に、相違やズレがあることに気付かないでいることはないか。『一人一人の子供の内面の深い理解が、信頼につながる』ことを、指導者側が自覚し、『一人一人の子供の姿からその内面を学ぶ』という謙虚さが、日常的に必要である。
学校では、教育課程を編成し、学級を中心に、各教科・領域の指導をしているが、教員は、それぞれの教科・領域の目的、特質、内容の系統性や発展性、学校教育目標とのかかわり等について、よく理解しているのか、その上で、子供の実態に即して指導しているかを考えてほしい。教えるべきことは、しっかり教えなければならないが、教員自身が分からないことを教えても、子供に納得させることはできない。
良い授業の展開には、どんな教材や資料を選ぶのか、その根拠は何か、それぞれの教材や資料には特質があり、ポイントがある。それをどう使うのかを、明確にしておくことが重要である。また、教材や資料を活用して、習得的な学習か、探求的な学習か、活用型の学習か、どんな指導方法をとるのかも、検討が必要であるが、それぞれの指導方法には、その根拠となる理論がある。それをよく理解し、子供の実態とねらいに即し、最も適切な指導方法を考えることが重要である。
教えることは学ぶこと。教員は、謙虚に子供に学び、ねらいに学び、教材に学ぶことが大切であろう。
本書の実践事例と編集者の想う『コツ』に学び、『生きる力』の育成に活用されることを希みます。
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- 明治図書