- はじめに
- 第1章 探求的思考力を育てる学習課題のデザイン
- 1 探究に関する研究
- 1 理論的研究
- 2 実践的研究
- 2 探求的思考力を育成する学習課題のデザインの構図
- 1 学習課題の設定の手順
- 2 授業実践・成果と課題の総括
- 3 探求の成果の掲示
- 3 主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)との関連
- 1 学習指導要領改訂の動向から考える
- 2 社会科におけるアクティブ・ラーニング
- 3 開かれた認識形成を促す授業展開
- 4 評価の方法
- 1 評価の考え方
- 2 学習活動の評価
- 3 本書における評価
- 5 学習課題デザインのストラテジー
- 1 デザインチャート図
- 2 学習課題デザインのストラテジー
- ストラテジー1 原因・理由を考えさせる
- ストラテジー2 特徴・特色を考えさせる
- ストラテジー3 変化・過程を考えさせる
- ストラテジー4 目的・意味を考えさせる
- ストラテジー5 具体的に定義させる
- ストラテジー6 興味・関心を高める
- ストラテジー7 架空の場面をイメージさせる
- ストラテジー8 違いを比較させる
- ストラテジー9 未来志向的に考えさせる
- ストラテジー10 批判的に考えさせる
- ストラテジー11 二者択一で決めさせる
- ストラテジー12 自分の問題として考えさせる
- ストラテジー13 根本的な疑問を考えさせる
- ストラテジー14 常識をゆさぶり,考えさせる
- ストラテジー15 調べる活動を通して考えさせる
- 参考文献
- 第2章 探求的思考力を育てる学習課題の具体例
- 地理的分野
- 1 国名・国境・国旗はだれが決めるのか?
- (世界の様々な地域 世界の地域構成)
- 2 宗教とは何か?
- (世界の様々な地域 世界各地の人々の生活と環境)
- 3 人口が多い国の違いに迫ろう
- (世界の様々な地域 世界の諸地域 アジア州)
- 4 なぜヨーロッパは統合を進めてきたのか?
- (世界の様々な地域 世界の諸地域 ヨーロッパ州)
- 5 アフリカをどのようにしたいか?
- (世界の様々な地域 世界の諸地域 アフリカ州)
- 6 オセアニアとアジアの結び付きはどのように強くなったのか?
- (世界の様々な地域 世界の諸地域 オセアニア州)
- 7 もしも日本に時差があったら?
- (日本の様々な地域 日本の地域構成)
- 8 世界から見て日本にはどのような気候の特色があるのか?
- (日本の様々な地域 世界と比べた日本の地域的特色)
- 9 農業の生産方法を工夫する目的は何か?
- (日本の様々な地域 世界と比べた日本の地域的特色)
- 10 日本のエネルギー開発は今後,どのようなあり方が望ましいか?
- (日本の様々な地域 世界と比べた日本の地域的特色)
- 11 開発と環境どちらを優先すべきか?
- (日本の様々な地域 日本の諸地域)
- 12 「さかん」という言い方はふさわしいのか?
- (日本の様々な地域 日本の諸地域)
- 13 東北地方のイメージとは?
- (日本の様々な地域 日本の諸地域)
- 14 北海道=食べ物はふさわしいのか?
- (日本の様々な地域 日本の諸地域)
- 歴史的分野
- 15 ヘロドトスの言っていることは正しいのか?
- (古代までの日本)
- 16 聖徳太子の改革の目的とは?
- (古代までの日本)
- 17 奈良時代の人々は,どのようなくらしをしていたのか?
- (古代までの日本)
- 18 鎌倉時代はいつから始まるのか?
- (中世の日本)
- 19 コロンブスの功績をインタビューしよう
- (近世の日本)
- 20 鎖国のイメージとは?
- (近世の日本)
- 21 最も人口が増えたのは?
- (近世の日本)
- 22 田沼意次をどのように歴史に残していきたいか?
- (近世の日本)
- 23 ナポレオンの評価の違いに迫ろう
- (近代の日本と世界)
- 24 イギリスは清と戦争をするべきか?
- (近代の日本と世界)
- 25 版籍奉還は本当に効果のない政策だったのか?
- (近代の日本と世界)
- 26 なぜ日本はイギリスと日英同盟を結んだのか?
- (近代の日本と世界)
- 27 日中戦争中の日本は,どのようにしてアジア・太平洋戦争に向かったのか?
- (近代の日本と世界)
- 28 20世紀はどんな世紀? 21世紀はどんな世紀にしたいか?
- (現代の日本と世界)
- 公民的分野
- 29 グローバル化はいつごろ始まったのか?
- (私たちと現代社会 私たちが生きる現代社会と文化)
- 30 少子高齢化対策は民主主義にふさわしいのか?
- (私たちと現代社会 私たちが生きる現代社会と文化)
- 31 日本文化とは?
- (私たちと現代社会 私たちが生きる現代社会と文化)
- 32 世の中にある解決策を考えよう
- (私たちと現代社会 現代社会をとらえる見方や考え方)
- 33 自分の経営する会社を上場したいか?
- (私たちと経済 市場の働きと経済)
- 34 日本企業にはどのような特徴があるのか?
- (私たちと経済 市場の働きと経済)
- 35 もし,銀行がない世の中だったら?
- (私たちと経済 市場の働きと経済)
- 36 日本は本当に経済破綻しないのか?
- (私たちと経済 国民の生活と政府の役割)
- 37 なぜ集団的自衛権を認めるようになったのか?
- (私たちと政治 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則)
- 38 日本国憲法は十分に人権保障をしているのか?
- (私たちと政治 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則)
- 39 よりよい選挙制度とは?
- (私たちと政治 民主政治と政治参加)
- 40 参議院の目的は? 参議院の意味は何だろうか?
- (私たちと政治 民主政治と政治参加)
- 41 行政の違いに迫ろう
- (私たちと政治 民主政治と政治参加)
- 42 自分の地域の課題を調べてみよう
- (私たちと政治 民主政治と政治参加)
- 43 今の当たり前を問い直そう
- (私たちと国際社会の諸課題 よりよい社会を目指して)
- 参考文献
はじめに
学習課題は,授業の柱となるものです。小学校では,「学習問題」という言い方もあります。単元・授業を貫く「発問」「問い」も学習課題と言えると思います。小学校では,単元の導入などにおいて,児童が自ら学習問題を立てる授業スタイルが多く見られますが,中学校では,教師から生徒に対して学習課題を提示することの方が多いのではないでしょうか。
生徒自身が学習課題を立てられることが,主体性であるかのように言われることがありますが,教師が学習内容として想定する課題意識を必ずしも生徒がもっているとは限りません。教師から与えられた学習課題であったとしても,「なぜ?」「どのように?」などと思わせることができれば,生徒は学習への主体性をもち,意欲的に取り組むことができます。そして,学習課題が明確であればあるほど,生徒は「考えたい」と思うようになります。その結果,自分の考えを他者と共有したり,異なった考え方と出会うことによって思考を深めたり,認識を変容させたりすることができるのです。この一連の姿が「探求」であると考えています。
そこで,本書は,「探求的思考力」という言葉を軸に,社会科の授業づくりにおける学習課題の設定のあり方を提示することにしました。授業づくりの多くは,まず,「内容」から始まると思います。内容から生徒に何を考えさせ,どのような結論を導くかを検討します。そして,生徒の探求過程を構造化することによって,「学習課題」を設定することができます。本書は,「探求的思考力」を育成するための授業づくり,学習過程を,だれにでも一目でわかるようなデザインとして提示することを大切にしました。
また,本書は,日本全国の中学校で行われている社会科授業で用いられる学習課題を整理し,学習課題の性質によって,生徒にどのような力を身に付けられるか,そして,どのような方法で評価することが可能かをストラテジー(戦略)として示した点に意義があると考えています。第1章では,理論,デザインのストラテジーの例,第2章では,具体的な単元・授業の展開例を掲載しています。
ところで,私の前著『単元を貫く「発問」でつくる中学校社会科授業モデル30』の出版から約1年が過ぎました。この間,多くの学校現場の先生方や,教育実習生が読んでくださり,授業づくりにとどまらず,研究授業の理論部分の参考文献としても引用していただいたと伺いました。「単位時間レベルでなく,単元レベルでの“問い”に基づいて社会科授業をつくることが,現行学習指導要領の枠内において可能であることを示した」という評価もいただきました。様々なご感想やご意見,ご指導をくださった方々に対する感謝の気持ちは尽きません。今後,教員としてより成長することを通して,お返ししていきたいと考えております。
また,この間は次期学習指導要領の改訂に向けての議論が活発化し,特に“主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)”という言葉が教育界全体の関心事になりました。前著も本書も,アクティブ・ラーニングの時代に対応できるような授業実践として提示しておりますが,アクティブ・ラーニングという言葉にのみとらわれることなく,いつの時代でも有効に機能する普遍的な理論・実践の方法論とすることを第一に考えました。また,最新の教育事情や,社会科教育理論を反映させること,さらに,直近の社会情勢も取り入れた授業例を提示することを心がけました。
本書の誕生は,これまで多くの授業実践を提供してくださった先生方,私の日々の授業研究,理論研究をご指導してくださった先生方なしにはあり得ませんでした。また,日々の授業実践に真剣に取り組んでくれた勤務校の生徒たち,理解を示してくださった保護者の皆様にも深く感謝申し上げます。
最後になりますが,毎日の生活を懸命に支えてくれている妻の歩美,小学校教諭として示唆を与えてくれた父 史郎,母 節子を始めとする家族,前著に引き続き,本書を企画・校正してくださった明治図書出版の赤木恭平さんに,厚く御礼申し上げます。
2016年11月 /内藤 圭太
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- 明治図書
- 頭の中が整理されました。2021/8/2930代・高校教員
- 研究授業を構想する時に役に立つ2017/4/240代・中学校教員
- 社会科の学習課題の立て方を理論だけでなく、それをどう実践で応用するかが紹介されていて、とても参考になった。2017/3/1320代社会科教諭