- はじめに
- 第1章 ガイドラインから考える AIとともに生きる子どもに必要なこと
- 01 まずはガイドラインを読むことから
- 02 生成AI利活用の出発点
- 03 発達の段階等を踏まえたより慎重な見極め?
- 04 適切、不適切を超えて
- 05 養いたい態度
- Column 01 生成AI全年齢解禁時代
- 第2章 AIを前提にしてもぶれない授業デザイン
- 01 その授業であなたが目指すのは?
- 02 AIで思考の練習問題を解く
- 03 そもそもなぜAIを使うのか?
- 04 AIが困りごとを解決する
- 05 AIが広げる児童の思考
- 06 議論を深めるAI活用
- 07 AIが迫る学力の問い直し
- 08 AIが揺さぶる「書くこと」の授業
- 09 実現不可能だった学びが可能に?@
- 10 実現不可能だった学びが可能に?A
- Column 02 これはAIに奪われません
- 第3章 教科別 AIが当たり前にある時代の授業実践
- 4年・国語 一つの花 問いをつくって読みを深めよう
- 5年・国語 リライトにリトライ〜「もう一つの物語」〜 AIの推敲を生かして物語を書く
- 3年・国語 仕事のくふう、見つけたよ 自分が考えた文章と生成AIが考えた文章を比べる
- 5年・社会 自然条件と人々のくらし 汎用性の高い知識を育てるAI活用
- 6年・理科 燃焼の仕組み AIと考える燃焼による空気の変化
- 4年・理科 電流のはたらき 対話の新たな対象 AIで考えを広げる
- 6年・音楽 オーケストラのひびきを味わってきこう AIと自分の考えを比較して楽曲のよさを伝える
- 1年・体育×生活 ボール投げゲーム・夏野菜を育てよう 低学年の疑問をAIと解決する
- 6年・体育 跳び箱運動〜AIスマートコーチと一緒〜 AIとともに跳び箱の技に挑む授業
- 4年・保健 体の発育・発達 大人に向かう体の成長 生成AIと考える自分の生活
- 6年・道徳 友情、信頼 生成AIは誰を選ぶ?
- 5年・外国語 自己紹介!お互いの魅力、再発見 AIを練習相手に英語で自己紹介
- 2年・学級活動 楽しい夏休みの過ごし方 自由研究のアイデアをAIと広げよう
- Column 03 目を向けているのは過去か未来か
- 終章 対談 鈴木秀樹×安井政樹 AIが当たり前にある時代の授業づくり
- そもそも鈴木・安井が生成AIに取り組み始めたのはなぜか
- 教科の学びから生成AI活用を考えることの重要性
- 学校だからこそできる学び・必要な学び
- AIが迫る問い直し
- know whyの本を目指して
- おわりに
- 参考文献一覧
- 執筆者一覧
はじめに
大先輩である教育心理学の大家と話をしていたときのことです。普段は穏やかな大先輩が、憤懣やる方ないという感じで話してくれたことがありました。
「生成AIはね、まずいかもしれない」
「え、なぜですか? 僕、かなり使っていますし、今までにできなかったような授業ができて、結構いいな、と思っているのですが」
「いや、鈴木くんはいいのかもしれないけれど…。この前、ある公立中の授業を見たのだけれどね」
「はい」
「先生が問題を出すんだよ。で、生徒がその問題を生成AIに聞いてね」
「ええ」
聞きながら、私は(問題を出して、その答えを生成AIに聞いて、その後、どんな学習が行われるような授業設計なのだろう?)と、少しワクワクしながら大先輩の答えを待っていたのですが、返ってきたのは私の予想とは全く違ったものでした。
「先生が生徒に『それをノートに写しなさい』って言うんだよ。それで『生成AIを活用しています』とか言っちゃってるんだよ」
「え、それは…、さすがに大げさに話されていますよね?」
「いや、本当に見たんだよ! そういう授業を!」
うーん、と唸ってしまいました。もちろん、その授業ではいかなる学びも実現されなかったでしょう。その「ノートに写す」という行為にどのような意味を見出すことができるのか、私にはさっぱりわかりません。
しかし、これはその授業の先生を責めればいい話ではないだろうとも思うのです。それくらい現場の先生方にとって生成AIは得体の知れないもので、授業でどうやって使えばいいのか見当がつかない、というところがあるのではないでしょうか。
そこに何かしらヒントになるようなことを伝える本ができないだろうか、というのが本書をつくるそもそもの始まりでしたが、その段階から「打ち出すべきは『ガイドラインの内容を押さえること』『教科の視点から生成AIの活用法を考えること』だろう」という思いがありました。
私も策定に関わった「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」は、不十分なところもあるかもしれませんが、我が国の教育現場で生成AIを活用しようと思ったら、まずは押さえておかねばならない基本資料です。
「児童生徒の学びにおいては、学習指導要領に示す資質・能力の育成に寄与するか、教育活動の目的を達成する観点から効果的であるかを吟味した上で利活用するべきであり、生成AIを利活用することが目的であってはならない」
ガイドラインに書かれたこの一文、「ちょっと言葉が強いな」とも感じますが、当然と言えば当然のことです。生成AIは進歩が早いので次から次へと新しい機能が実装されていきます。それを使いたい気持ちはわからなくもないのですが、大した吟味もしないで、ただ使ってみればいい、それで最先端だ、みたいなことを言っている実践発表を目にすると、不安が募ります。
では、どのような吟味をすればいいのか。私は「教科等の目的を達成するのに寄与するか」という点を入口にするのが一番いいだろうと思っています。先生方にとっては、授業プランを考える際に「生成AIを活用することで、この教科の、この授業の目的達成にどのように役立つだろうか」という視点から考えることが、実はもっとも馴染み深く確実な方法ではないかと思うのです。
そこで本書では、なるべく多くの「生成AIを活用することで、この教科の、この授業の目的達成にこう役立ちます」という例を掲載したいと考えました。が、基本的な考え方は自分で何某か書けるにしても、そんなにたくさんの具体例を私一人では出せません。私の実践は、どうしても普段、自分が担当している教科に限られます。国語、社会、算数、道徳…せいぜい、書けてそのあたりでしょう。
しかし、生成AIの使い道は他にもたくさんあるはず。とすれば、これは教科教育の専門家集団である勤務校、東京学芸大学附属小金井小学校の教員を頼るのがいいのではないか。そう考えて声をかけてみたところ、多くの教員が「だったら自分が書きますよ」と声をあげてくれました。それを第3章にまとめてあります。
そして終章では、教育における生成AI活用を進める上での盟友とも言うべき安井政樹さんと対談をさせていただきました。
本書が「生成AIを授業でどう生かせばいいのだろう?」と考える先生方に、いくらかでもヒントを与えられるものとなれば幸いです。
令和8年1月 /鈴木 秀樹
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明治図書















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