- まえがき
- T 学び方学習は、今なぜ必要か
- /柴田 義松
- 1 「自ら学び自ら考える」学び方への教育の「基調の転換」
- 2 子どもたちの学び方を高める教育を
- 3 教科・教材の内容やその系統性に即した学び方指導
- 4 学び方学習の基礎・基本となる言語技術
- U 文章吟味力という「基礎・基本」を指導する
- /阿部 昇
- 一 文章の読み方=学び方を教える
- 二 構造・論理・吟味という読み・書きの方法 ―― 「かけがえのない地球」(島村英紀)を例に
- 1 構造を俯瞰・分析する過程――構造よみ
- 1 構造よみ・論理よみ・吟味よみ――という指導過程で子どもたちの自学能力を育てる
- 2 構造よみの過程――文章の典型構造を手がかりに読む
- 3 「前文」と「後文」の役割
- 4 「かけがえのない地球」の構造よみ
- 5 構造よみの授業過程
- 2 ことがらと論理を分析する過程――論理よみ
- 1 論理よみの過程――文章の段落関係・文関係・言葉関係を読む
- 2 段落相互の関係を教える
- 3 「かけがえのない地球」の論理よみ
- 4 論理よみの授業過程
- 3 文章を吟味する過程――吟味よみ
- 1 吟味よみの過程――文章の吟味・評価・批判
- 2 「かけがえのない地球」の吟味よみ――その一…何が「問題」なのかが見えてこない
- 3 「かけがえのない地球」の吟味よみ――その二…「前文」と「本文1」が整合しない
- 4 「かけがえのない地球」の吟味よみ――その三…何が「深刻」なのか見えてこない
- 5 「かけがえのない地球」の吟味よみ――その四…今度は「後文」と「本文」が整合しない
- 6 「わたしたち」は何を考えたらいいのかわからない
- 7 吟味よみの授業過程
- 4 吟味よみを【調査→リライト】に発展させる
- 三 総合的学習と読みの力 ――新しい総合の可能性を探る
- 1 総合的学習の可能性を探る
- 2 国語科の教材を読む――その一
- 1 「日本の夏、ヨーロッパの夏」の論理よみ
- 2 「日本の夏、ヨーロッパの夏」――論理よみの授業過程
- 3 地理の教材を読む
- 1 社会科・地理の教科書を読む
- 2 地理の教科書を読む授業過程
- 3 調査活動に入る
- 4 調査活動の授業過程
- 4 国語科の教材を読む――その二
- 1 「日本の夏、ヨーロッパの夏」の吟味よみ
- 2 「日本の夏、ヨーロッパの夏」――吟味よみの授業過程
- 5 教材をリライトする
- 四 おわりに
- V 「総合的学習」の学び方指導のあり方
- /小島 昌世
- 一 六年一貫教育と総合的学習の構想
- 1 「おもしろさ」を軸に
- 2 二―二―二制と特別学習
- 二 グループ学習の実践例 ―英詩 "Negro History" の読みを深める
- 1 なぜ "Negro History" をとりあげたのか
- 2 教材と扱い方
- 3 最初の日本語訳から
- 4 テーマを決めて調べる
- 5 読みを深める
- 6 違ってきた訳詩
- 7 取り組みを終えて
- 三 テーマ学習の実践例 ―校地のみどりをめぐって、まちづくりを考える
- 1 開講の意図
- 2 区の防災計画と学校のみどり
- 3 授業からテーマ学習へ
- 4 テーマ学習の実践
- 5 テーマ学習から学んだこと
- 四 生き方を豊かにする卒業研究
- 五 総合的学習は授業を変える
- 1 教科の授業を見なおす
- 2 マザーグースの英語授業
- 3 教科の授業を総合的なものに
- あとがき
まえがき
新学習指導要領は、「総合的な学習の時間」を中心に新しい学び方の指導を学校教育現場に求めています。
受験勉強に偏る記憶中心の学び方から「自ら学び、自ら考える」学び方への転換は、いわゆる情報化時代の現代社会が学校に突きつけている社会的要請であるとともに、過度の受験競争のもとで「ゆとり」を失ってきた親や子どもたちの切実な要求に応えようとするものでもあるといえるでしょう。
第二次大戦後、急速に進んだ科学・技術革新は今なお連続的に進行し、人々の生活に大きな影響を及ぼしています。コンピュータの進出がそのよい例で、パソコンは今やオフィスだけでなく、各学校や家庭にも持ち込まれ、生活必需品の一つとなりつつあります。まさに情報化時代の到来です。新しい技術とともに、多くの新しい情報がつぎつぎと私たちの周囲に、そして日常生活の中に入り込んできています。こうなると教育あるいは学習が、学校を卒業すればそれで終わりというわけにはいかず、生涯にわたって必要となるということが、だれにも身にしみて感じられるようになってきます。「生涯学習体系への移行」は、臨時教育審議会が、教育改革の基本的柱の一つとしたことでした。生涯学習体系の中で、学校がもっとも重視していかねばならない教育の課題は、まさに「自ら学び、自ら考える」学び方を育てることにあるでしょう。
他方、現在子どもたちはどんな学び方を学校でしているでしょう。学校嫌い、勉強嫌いの子ども、そして登校拒否にまで陥る子どもが年々増え続けています。一時沈静化した校内暴力、非行、いじめ、学級崩壊などの荒廃現象も九〇年代に入ってふたたび盛り返す傾向にありますが、とりわけ注目する必要があるのは、学校嫌いを理由とする不登校者の数だけは、年々増え続けているという事実です。
学校嫌い(不登校)や勉強ぎらいの子どもを生み出す根本の理由としては、何といっても学校生活の中心である授業が、子どもにとって楽しくなく、依然として教師からの一方的な教え込みや教科書中心の暗記教育に偏っていることがあげられるでしょう。教師は、生徒に校則を押し付けるのと同じようにして、学ぶべき知識を生徒に押し付けているのです。学習の動機が、子ども自身の興味や問題意識に基づくものでなく、子どもが自らの問いを追究し、興味をもって学んでいく主体的で能動的な学習になっていないのです。「日本では、勉強するというと、ただ野放図に知識や情報を子どもの頭に詰め込むことをさしている。知的なリズムをまったく欠いて、単調で、また極めて一本調子なものだ。これでは、思索をするとか、真理を追究するといったことを子どもに教えることにはならない」とも批判されています(トケイヤー『日本には教育がない』徳間書店)。
私は、学校改革の鍵は、このような子どもの学び方に教師がもっと目を配り、学ぶことに喜び・楽しみを子どもが見出すような学び方を教育の基本にすえることだと考えます。子どもの学び方に着目し、学び方を研究し、質的に高めようとすることは、学校の教育活動全体を子どもの立場に立ってとらえ直すことを意味します。
しかし、教師が子どもの学び方を知り、子どもと同じ地平に立って考えるということは、子どもの言うことは何でも聞き、子どもの興味に追従するということではありません。子どもの興味に従うのではなく、むしろそれをつぎつぎとより高いところに引き上げ、拡大することこそが大切です。学校での学習によって、子どもたちの素朴な「勉強の仕方」のイメージがより豊かなものにつくり変えられるようにするのです。
「総合的な学習の時間」の新設のため、今日教育ジャーナリズムをにぎわしているのは、もっぱら今次教育改革の目玉としてのこの「時間」に学校と教師はどのように取り組むかという問題です。確かに、「総合的な学習の時間」を通して新しい学び方の育成を図ることは大切ですが、それとともに、あるいはそれ以上に教師にとって大切な課題は、伝統的な教科の学習にかかわる「基礎・基本」の確実な学び方を子どもの身につけさせることにあります。
学校週五日制に加え、「総合的な学習の時間」の新設によって、教科学習の授業時数が大幅に削減されるため、読書算の基礎学力がこれで果たして十分につくのかという心配が出てきています。
「自ら学び、自ら考える」子どもの育成は、「基礎・基本の確実な習得」を基礎にしてはじめて成り立つと、私は考えます。「学び方」の指導は、まずもって読書算の基礎学力について必要であり、その上で理科・社会科などを含めた総合的学習の学び方を指導するのが、本来の学び方学習のあり方でしょう。
本シリーズ「総合的学習の基礎づくり『学び方を学ぶ』全四巻」は、このような考えに基づいて編集したものです。各巻で、学び方学習の基本的な考え方を概説したあと、基礎学力の学び方指導と総合的学習の学び方指導のあり方について二人のベテランの教師に詳しく具体的に論述していただきました。
本シリーズが、小・中学校における学び方学習の発展にいくらかでも寄与することができればと願っています。
読者のみなさんの率直な感想、遠慮のないご意見、ご批判をお寄せいただければ幸いです。
2000年7月 編者 /柴田 義松
-
明治図書















