- まえがき
- 第T章 なぜ,今,「生きる力」なのか
- * 「時代」を生きぬく力の育成 /井上 裕吉
- 第U章 中学生の生き方教育と「生きる力」の育成
- * 中学校「生き方」指導の新しい展開 /桑原 憲一
- 第V章 「生きる力」を育てる中学校の進路の指導
- (1) 「生き方」に視点をあてる進路の指導の全体計画 /緑川 哲夫
- (2) 「生きる力」を充実する学級づくりの基礎・基本 /美谷島 正義
- 第W章 「生きる力」を育てる進路の指導の実践例
- (1) 中学校1年生に「生きる力」を
- ★─模索期・一人一人のよさ,特性の発見─★
- @「もしかしたら,私にも」─海外派遣生への挑戦 /斎藤 直子
- A「私は,だれでしよう?」─「自分さがしの旅」の始まり /加納 博志
- B「友達って何だ?」─ロールプレイを通して /村上 昭夫
- C「私が相談したいこと」─学年カウンセリング活動の充実 /廣田 晴行
- D「私の将来は?」─進路係「ドリーム・リサーチ」の活動 /島田 光美
- E「自己」を見つめる─グループエンカウンターの活用 /桑野 淳二
- F「私にできること」─地域の支援で「共生」社会について学ぶ /松沢 勝子
- (2) 中学校2年生に「生きる力」を
- ★─充実期・一人一人の生き方に光を─★
- @「自己のイメージは」?─自己肯定感をもつ手がかり /蜂屋 隆子
- A「かけがえのない自分」づくり─学級に感動体験を /坂井 晃
- B職業の多様性─「キャリアガイダンス」の活用 /倉田 信義
- C上級学校への訪問─「スペシャリストへの第一歩」 /橋本 英生
- D「自己決定力」をつける道すじ─自己目標決定カードの活用 /杉浦 里美
- E地域に学び地域に奉仕する─学級での道徳の授業を生かす /大月 隆昌
- Fゴミは減らせるか?─リサイクル運動への発展 /石井 孝行
- (3) 中学校3年生に「生きる力」を
- ★─発展期・一人一人にふさわしい進路を─★
- @「共感できる生き方」を求めて─「自立心」の強化 /宮嶋 靖規
- A手づくりの行事活動─「大人への第一歩」 /倉持 眞由美
- B主体的な情報収集─「体験入学」活動を通して /野村 政隆
- C卒業生の進路選択に学ぶ─進路決定への環境づくり /高橋 良久
- Dディベート「私は有名高を選ぶ」?─「主体的な自己決定」への取組み /伊藤 雅夫
- E自分の道は自分の力で─教師の支援体制づくり /米津 光治
- F活力と思いやり─環境教育「豊川活動」の実践を通して /上野 喜一郎
- 第X章 高校の「生き方」指導の実情と新しい試み
- * 中学校「生き方」指導への期待 /菅沢 茂
まえがき
1 中学生に,夢や希望をもたせたい
本書刊行の第1のねらいは,今,目の前にいる中学生一人一人に,明日に生きる,あしたに羽ばたく力や夢をはぐくみたい,そういう願いから出発しています。
いうまでもなく,「生きる力」とは,このような,「今日から明日へ」の活力の継続,夢や希望への確かな目的意識なくして,培われていくものではありません。
「疲れた。何もしたくない。早く寝たい。ぐっすり眠りたい。だれとも口をききたくない。できれば,死んでしまいたい。・・・・・」,今,中学生から聞かれることばには,後退的,孤立的,自己滅亡的な響きさえ感じとれます。
全国で,中学生60人に一人が,登校拒否,不登校の徴候を見せています。また,目的も定まらず,ただ「入りやすい」という漠然とした思いで入学した高校からも,年間10万人以上の生徒が,その門を去っていきます。
はたして,これが,真の生き方指導といえるのか,そのような疑問や残念な思いが,本書を生み出す動機の1つともなっています。
2 1年生には1年生らしく,3年生には3年生らしく
中学校生活3年間,生徒たちの心身の発育,「私が,私らしくなる」自己の発達過程は,人間形成の最も輝かしい時代の一時期ともいえます。「子どもらしさから大人っぼい雰囲気へ」,その姿,活動能力にも,磨けば磨くほどの,驚くべき跳躍台を内包しています。
だからこそ,この1年,1年を,大切に,しかもきめ細かく,教師の援助,支援態勢を,充実し,発展させていかなければならないのです。
本書では,その意味で,中学1年生を,中学校における生き方指導の模索期,2年生を,その充実期,3年生を,その発展期と位置づけました。
そして,各学年に共通し,生き方指導の根幹にある,(1)自己理解,個性の発揮,(2)好ましい人間関係,集団の一員としての自覚,(3)情報の収集・活用,進路の自己選択能力の向上,(4)進路における主体的な自己決定能力の強化,(5)環境教育,ボランティア活動など豊かな人間性の陶冶など,5つの柱を設定し,それぞれの学年での実践活動を体系づけました。
学級を主要舞台とする生き方指導,進路の指導の,よき参考書,案内書となれば,編著としてもたいへん有り難く思います。
3 「生きる力」の支援は,「生きる力」をもつ教師こそ
「生きる力」を育てる,今,教育界は,このことばに新たな実践の指針を求めています。しかし,いつの時代にあっても,真の教師は,絶えず,生き生きとした生徒,挑戦する精神と感動に満ちた生徒,自己向上と,共に生きぬく喜びをもつ生徒を,その実践活動の目標として,育て,築き上げてきたように思えてなりません。
今回,本書に執筆参加してくださった先生方も,すべて,このような,自らがまず「生きる力」を有する方々です。短いページの中にも情熱を傾けてくださったことを,心より感謝したいと思います。
なお,本書の企画に当たっては,編著が都立教育研究所時代の研究生,緑川哲夫さん,美谷島正義さんの協力を得ました。お礼と共に,ますますの活躍を期待したいと思います。
最後となりますが,本書に先行する,小学校編『「生きる力」を育てる』の刊行と共に,様々な面でご支援いただいた明治図書,仁井田康義氏には,改めて感謝し,以上,まえがきに代えさせていただきます。
平成9年12月 編著者 /井上 裕吉
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- 明治図書