生き方の探究
―「学んだこと」を行動につなげる中で、成長し続ける子ども―

生き方の探究―「学んだこと」を行動につなげる中で、成長し続ける子ども―

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中学校全教科のアクティブ・ラーニング型授業を一挙公開!

開校以来60年以上、生活教育を理念とする授業研究を続ける岡崎中学校では、日々アクティブ・ラーニングを超える子どもが主体的に学ぶ授業が行われています。子どもが自ら問題や目標を見つけ解決や達成に向けて追究し仲間とともに解決していく実践の全てを紹介します!


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ISBN:
978-4-18-195415-4
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

巻頭:子どもが描く夢
はじめに
愛知教育大学附属岡崎中学校の教育
T 総論編
1 研究主題と目ざす人間像
2 中学校3年間で育てたい子どもの姿
3 教科カリキュラムとLifework
4 子どもが主体となる授業
5 仲間との関わりと個の追究
6 研究構想図
U 教科編
1 国語科
「認識を深め、正確な受信・発信を意識し続ける」
1年実践「13歳の本棚」(文化を見つめる)
2年実践「いにしえの世に今がある」(伝統を考える)
3 社会科
「未知なる社会的事象に向き合い、社会や自分のあり方を探り続ける」
2年実践「二十七曲がりがもたらす繁栄」(近世の日本U)
3年実践「輸出される日本のあたりまえ」(現代社会を見つめる)
3 数学科
「数学的な考え方を生活に生かし、豊かな生活をつくろうとする」
2年実践「ドミノコントロール」(関係の把握U)
3年実践「立ち上がる平面図」(図形の論証と計量T)
4 理科
「自然の真の姿に迫り、豊かな生活を手に入れようと動き出す」
1年実践「春に赤いモミジ」(植物)
2年実践「炭の力」(化学変化)
5 音楽科
「音楽をとおして、思いや意図を表現したり感じ取ったりし続ける」
1年実践「クラスの思いを一つの曲に」(創作U)
3年実践「和声の豊かな響きを味わう」(合唱W)
6 美術科
「多様な美を感じて、自らの美を創造し続ける」
2年実践「バラバラを一つに」(デザインU)
3年実践「スタジオ附中」(映像・写真)
7 保健体育科
「運動の楽しさに気づき、運動と関わり続ける」
2年実践「Shall We Tap?」(力と美V・タップダンス)
3年実践「フロアホッケー」(ボールゲームW・ゴール型)
8 技術・家庭科
「知恵や技を見つけ、くらしを工夫しようと動き出す」
1年実践「木製食器での味わい」(技術分野 材料と加工U)
3年実践「一日一笑を願う」(家庭分野 希望ある社会を目ざして)
9 英語科
「世界の人とコミュニケーションを図ろうと、国際的な視野を育む」
1年実践「Yuru-Kyara to the World」(My Favorities@)
3年実践「Salmon for Sushi from the World」(Exchanging Ideas)
V Lifework編
1 Lifework―中学校3年間をかけて取り組む個人テーマ学習―
2 実践例
1年生の追究〈テーマの設定〉
「殺処分を減らすには」 動物と人とのよりよい関わり方とはなんだろう
1年生の追究〈異学年交流〉
「岩石をとおして昔の環境を知る」 岩石の種類はどうやって区別するのだろう
2年生の追究〈テーマの更新・発展〉
「五感のHappiness」 みんなが健康にくらすことのできる社会にしたい
2年生の追究〈基礎追究の充実〉
「ローカル線を救うには」 ローカル線の廃止を防がなければならない
3年間の追究
「がんと向き合う」 患者に寄り添う医療ってなんだろう
おわりに
研究同人

はじめに

 日本において、初めて子どもの潜在的な力に目を向け、「子どもを中心に据えた教育」を実践しようと考えたのは、「大正自由教育運動」の担い手たちでした。子どもの自発性と活動性を引き出す教育が、全国の附属学校と私立学校の新学校で試みられました。

 大正自由教育運動では、「自由」の捉え方が問われました。縛りや抑圧からの自由という意味の「消極的自由」に対して、「積極的自由」が提唱されました。例えば、土田杏村は「自由」を「目的に向かって自らが決定していく連続を貫く『人格精神』である」と定義しています(『大正自由教育研究の奇跡』 中野光著 2011年)。そこには、子どもを生涯にわたり学び続ける判断主体に育てようとする教育姿勢がみられます。大正自由教育運動は、戦後、新教育あるいは生活綴り方教育、生活教育として、息を吹き返します。


 本校は、1947年の開校以来、「生活教育」を普遍の理念とし、研究を続けてきました。

 2010年度に、5年計画の研究をスタートさせ、「生き方の探究」を研究主題に掲げました。

 21世紀に入り、10年が経過した今日、子どもが、どのような社会をつくりたいのか、その夢をともにつくり出し、夢の実現に向けて、自ら学び続ける子どもを育てようと考えました。そのために、9教科の授業とカリキュラム、3年間にわたる個人テーマ学習(Lifework)に焦点をあて、教師のはたらきかけを追究してきました。

 本書は、その研究成果をまとめたものです。


 ところで、本校の研究方法には、次の二つの特徴があります。

 一つは、教師が、目の前の子どもの姿と生活を見とり、実践をしながら、教育の理論を自前のことばでつくり出していく点です。子どもを判断主体に育てる本校の実践研究では、教師もまた、実践の判断主体でなければならない、と考えています。

 この研究姿勢は、本校の開校以来の伝統であり、最初の出版物である『今日における生活教育』に、以下のように書かれています。


 「新しい人間像は日本の現実の中から、子どもたちの生活と意見の中から描き出さなければならない。『文化国家』、『民主化』、『民主的人間像』などということばが再びうつろなことばとして観念的に操作されないようにしたい。現実に正しく学ぶ人間を、それがどんな小さな事実であっても、事実であるからには大事にする。そういう事実を一つ一つ積み重ねながら理論を引き出していく。またどんなすぐれた理論でも、自分たちの経験のこまごまとした事実をあてはめながら理解する。そしてさらに新しい生活を切りひらいていく。こんなふうにぜひ改めたい。

 これが、わたしたちの自己を改造する第一歩である。この改造なくしては、かつての『生活教育』の伝統は、わたしたちの内に創造的な形でよみがえらないと信ずる。」

   (『今日における生活教育』 附属岡崎中学校著 1954年)


 本校は、戦後の新学制により、戦前の国民学校高等科が改組されて、新設された中学校ですが、その際、1947年を本校の始まりとし、戦前の生活教育、それも大正自由教育を反省的に振り返り、上述の「生活教育」の捉え方と研究方法を自分たちで選び、決めるところから出発しました。そして、本校の教師たちが肝に銘じたのが、自らを主体とする研究方法でした。

 もう一つは、学校の教育課程全体の中で、人間像の育成を実現しようとしている点です。本研究の焦点は、9教科とLifeworkにあてられていますが、それらは、学校の教育課程全体の中に位置づけられています。これも、本校が、開校以来、学校生活のあらゆる場面で、子どもを主体に位置づける教育課程の創造にこだわってきた結果です。


 本書は、私たちが、自前の「教育のことば」を紡いできた、5年間の研究成果です。折しも、近年、知識基盤社会の到来とともに、流動化する社会において、ある複雑な状況にうまく対応する包括的な能力の必要が叫ばれています。また、5年計画の研究を始めた年度に起こった東日本大震災・福島原発事故(2011年3月11日)では、子ども一人一人を判断主体に育てる教育の大切さが再確認されました。今年度に入り、教育再生実行会議は、初等教育から高等教育まで、あらためて「アクティブ・ラーニング」(能動的学習)が必要であると提言しています(第七次提言)。子ども一人一人を判断主体にしていくためには、能動的学習の質を高める実践的研究が求められます。

 本校は、それに応える研究を積み重ねてきました。本校の研究成果が、その一助になればと願っております。私たちの研究と実践に、忌憚のないご意見とご教示をいただければ幸いでございます。

 最後になりましたが、本研究に対しまして、数々のご指導、ご支援を賜りました先生方、実践にご協力いただいた皆様、ならびに、出版に際しご尽力いただいた明治図書編集部の皆様に、心より感謝申しあげます。


  2015年10月   愛知教育大学附属岡崎中学校長 /山田 綾

著者紹介

愛知教育大学附属岡崎中学校(あいちきょういくだいがくふぞくおかざきちゅうがっこう)著書を検索»


※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 参考となりました。
      2023/1/2940代・教委
    • 生き方を考えることはまさに哲学ですね。
      2023/1/2840代・教委

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