- はじめに
- 第1章 理科授業のユニバーサルデザインとは?
- 1 授業のユニバーサルデザインとは?
- 2 子どもの視点から考える理科授業の難しさ
- 3 理科授業のユニバーサルデザイン化に向けた基本的なポイント
- 4 授業の「引き出し」と授業のUD化5つのテクニック
- コラム 行動の「背景」を踏まえた工夫を
- 第2章 ユニバーサルデザインの理科授業をつくる18の「引き出し」
- 授業づくりにおける18の「引き出し」について
- 本当に知っているの!? 引き出し@ 「知っているつもり」へのゆさぶり
- あれはそういうことだったのか! 引き出しA 実生活や身近な自然とのつながり
- 五感を使って学ぼう! 引き出しB さわる/動かす体験
- 子どもとつくる! 子どもと解決する! 引き出しC こだわりの課題設定
- 自分のペースで全員参加! 引き出しD 図表/思考ツール
- 全員が主役! だから夢中になる! 引き出しE 1人1セットの「マイ○○」
- 「これならできる」と思える環境を! 引き出しF 多様な表現活動を支援する教室環境
- 「あれ?」「へんだな」がキーワード! 引き出しG 思考や認識のズレ
- 思わず見たくなる! これでひらめく! 引き出しH 写真やイラスト/動画
- 逆転の発想で授業づくり 引き出しI 「見えない」しかけ
- 論点が明確! だから考えが深まる! 引き出しJ 選択肢の設定
- 授業に「遊び心」を!(その1) 引き出しK ストーリー&ミッションの設定
- 授業に「遊び心」を!(その2) 引き出しL クイズ
- オリジナルキャラクター大歓迎! 引き出しM イメージ図
- 「わかる」ばかりじゃつまらない! 引き出しN 「得意な子」への支援や配慮
- 情報をまとめてクラス用語で整理! 引き出しO ナンバリング&ラベリング
- 成功の積み重ねがやる気を引き出す! 引き出しP スモールステップ化
- 考える視点を明確にする! 引き出しQ 差異点と共通点
- 第3章 18の「引き出し」×5つのテクニックでつくる! ユニバーサルデザインの理科授業
- 3年
- エネルギー 1 磁石の性質
- 粒子 2 物と重さ
- 生命 3 昆虫の成長と体のつくり(身の回りの生物)
- 地球 4 太陽と地面の様子
- 4年
- エネルギー 5 電流の働き
- 粒子 6 空気と水の性質
- 粒子 7 温まり方の違い(金属,水,空気と温度)
- 生命 8 人の体のつくりと運動
- 地球 9 水の自然蒸発と結露(天気の様子)
- 5年
- エネルギー 10 振り子の運動
- エネルギー 11 電流がつくる磁力
- 粒子 12 物の溶け方
- 生命 13 動物の誕生―魚の誕生
- 地球 14 流れる水の働きと土地の変化
- 6年
- エネルギー 15 てこの規則性
- エネルギー 16 電気の利用
- 粒子 17 燃焼の仕組み
- 生命 18 人の体のつくりと働き
- 地球 19 土地のつくりと変化
はじめに
ユニバーサルデザインは,ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンターを設立したロナルド・メイス教授が正式に提唱した考え方です。
ロナルド・メイス教授は,9歳のときにポリオにかかり,その後は酸素吸入をしながら電動車椅子を使って生活していたという方です。
そのため,いわゆる「バリアフリー」に接する機会は多くありました。
しかし,バリアフリーに含まれる特別扱いの意識に疑問を感じ,「はじめからできるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすればよいのではないか」と考え,提唱したのがユニバーサルデザインです。
この「ユニバーサルデザイン」という言葉が,教育の世界でもずいぶん普及してきました。
インターネットで全国の研修会を検索してみると,毎月のようにどこかで「ユニバーサルデザイン」をテーマにした授業づくりや学級づくりの研修会が開かれています。
私も,星槎大学大学院の阿部利彦先生を顧問とする日本授業UD学会湘南支部を中心に,様々な場で先生方とともに研鑽を重ねています。
そうした中,ある研修会で出会った年配のある先生が,「本当によくできたと思える授業は教員人生を振り返っても数回しかない」とおっしゃっていました。
その先生は,授業に関する知識も実践力も抜群で,私にとっては神様のような存在の方です。
その先生ですら満足できるような授業は人生の中でわずかしかないというのは,当時の私にとって驚きでした。
しかし,後から振り返ってみると,教師としての力量が向上すればするほど,子どもや授業を見取る目も肥えていき,課題も見えるようになってくるということなのだろうと納得しています。
これは,授業のユニバーサルデザインにおいても同様です。
筑波大学附属小学校の桂聖先生をはじめとする日本授業UD学会の先生方は,「授業のユニバーサルデザインには完成形がない」ということをよくおっしゃいます。
社会で暮らす多くの人を利用者と想定して作られる工業製品とは異なり,授業はその日,そのクラスの子どもたちを想定してつくるものだからです。
どれほど優れた授業者の素晴らしい授業であっても,そのままでは,目の前の子どもたちにとってユニバーサルデザイン化された授業にはなりません。
しかも,目の前にいる子どもたちですら,今日と明日とで同じではないのです。
その子たちを相手に「よくできた」と自分で満足できる授業を実現するのは,そう簡単なことではありません。
本書で紹介する様々な工夫や授業の展開例は,そのような最善を目指し続ける授業づくりの「材料」や「組み立て方のコツ」です。今回はそれらを,「授業の『引き出し』」と「授業のUD化5つのテクニック」という2つの柱から整理しました。
それらは決して,「そのまま再現すれば十分」というものではありません。
そのため,課題設定や実験方法などは,子どもの実態に応じて考えられる複数の例を紹介しているページが多くあったり,「…するのも1つの方法です」という表現が使われていたりします。
本書で紹介した内容が,先生方の日々の授業づくりをよりよくするきっかけやヒントとして,少しでもお役に立てれば幸いです。
2023年12月 /久本 卓人
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- 明治図書
- 理科専科をしているので興味があって購入しました。UDのことを意識しながら授業づくりができたらと思います。2024/8/1350代 小学校教諭
- 全員にとって意味のある授業にするためのテクニックとマインドが詰まっていると思います。全教科に通じる指導の仕方も書かれているので、理科のみならず他教科にも転用できる考え方がたくさん掲載されていたのがよかったです。2024/3/2030代・小学校教員