- はじめに
- 第1章 学校事務職員の仕事イメージ
- 1 学校事務職員の役割
- 2 「学校」事務職員 or 「学校事務」職員
- 3 学校事務職員の業務範囲
- 4 基本業務「人事・給与事務」
- 5 雑務のとらえ方
- 6 教育環境整備と学習環境整備
- 7 児童・生徒に伝えたい学校事務職員の仕事
- COLUMN1 校長からのバースデーカード
- 第2章 教員と進める学習環境整備
- 8 授業見学のすすめ
- 9 授業の質を左右する黒板の状態管理
- 10 授業準備を助ける学校事務機器の整備
- 11 ICT環境整備で学力向上
- 12 施設・設備の使用方法のアナウンス
- 13 学校事務職員が担う小中連携
- 14 学校事務の共同実施を活用した出前授業
- COLUMN2 学校事務職員は学力を向上させられるか?
- 第3章 学習環境のユニバーサルデザイン化
- 15 通常の学級で活かす特別支援教育の視点
- 16 ユニバーサルデザインに基づいた学習環境整備
- 17 発達障害をもつ児童・生徒に対応する学習環境整備
- 18 児童・生徒のイライラを抑える教室の整理整頓
- 19 事務機器の整備と児童・生徒の学び
- 20 学習障害をもつ児童・生徒に対応する学習環境整備
- 21 学習障害に対応する教材・教具の導入
- COLUMN3 ドイツ派遣から感じたこと@
- 第4章 学習環境整備が果たす規律確保
- 22 対応から予防に変化する生徒指導
- 23 いじめ,不登校の未然防止
- 24 学校事務職員だからできる規律確保
- 25 授業に集中する環境をつくる整理整頓
- 26 チャイム着席定着のための時計選び
- COLUMN4 ドイツ派遣から感じたことA
- 第5章 お金がかかわる教育環境整備
- 27 財務マネジメントと保護者負担
- 28 学校徴収金の未納放置
- 29 児童・生徒の指導につながる督促業務
- 30 児童・生徒の学びのため避けられない支出
- 31 学校予算による教育環境整備
- 32 行政職の専門性を活かす就学援助
- 33 就学援助業務で配慮すべきポイント
- 34 保護者がわかる文章作成
- COLUMN5 学校評議員から離任時にいただいた手紙
- 第6章 地域とともにつくるより良い教育環境
- 35 学校に広報業務が必要なわけ
- 36 学習環境整備に役立つ学校情報の発信
- 37 地域・保護者にわかりやすい学校広報
- 38 学校広報で注意すべき法的問題と正確さ
- 39 学校と地域の連携・協働が必要なわけ
- 40 行政職の強みを活かす地域との連携・協働
- 41 児童・生徒のための地域の連携・協働
- 42 学校と地域をつなぐ職業体験学習
- COLUMN6 新しい学校事務への期待
- 第7章 人と人とをつなぐ教育環境整備
- 43 児童・生徒や保護者の声を知る学校評価アンケート
- 44 教育委員会事務局や役所などへの学校要望
- 45 信頼を維持する取引業者との関係づくり
- 46 校舎建設は学校事務職員の強みを生かす最高の場
- 47 シックスクール症候群への対応
- COLUMN7 「学習環境整備」へのこだわり
- 第8章 デキる学校事務職員への道
- 48 教員の理解を得る丁寧な説明
- 49 行政職の視点で行う校長・教頭のサポート
- 50 職員室の個人情報保護
- 51 学校全体で取り組む個人情報保護
- 52 学校事務職員という病
- 53 他職種から学ぶ毎日の職場内研修
- 54 学びに貢献するための職場外研修
- 55 若手学校事務職員の成長の姿
- おわりに
はじめに
学校事務職員が直面する特有の悩みや困難さは,「単数配置」「業務内容の曖昧さ」,そして,少し経験を積むと「やりがい」に関することです。一般的には,県庁や市町村役場の職員であろうと,教員であろうと,職場には仕事を教えてくれる上司や手本とできる同僚がいます。学校事務職員の多くも,漠然と同じようなイメージで就職してくる方が多いようです。
ところが,いざ採用となると,早速,職員の給与事務手続きや財務事務など年度当初の繁忙期を迎えます。ですが,周りには仕事を教えてくれる同一職種の上司や同僚はいません。多くの場合は近隣校の学校事務職員や教育委員会事務局の担当者に仕事を聞いて,暗中模索で仕事を進めていかなければなりません。このときに,大きな悩みや困難さを感じるのは普通のことです。
年度当初の繁忙期が一段落すると,「業務内容の曖昧さ」に悩むことになります。小中学校では各学校の教職員が少なく,書類作成といった机上の事務に留まらない様々な業務を担わないといけないため,悩みはより深くなります。
そして,少し仕事に見通しをもてるようになる採用後2,3年が経過したときには,「やりがい」について悩むようになります。
学校という職場は,子供の学びと育ちを中心にまわっています。教員と比べて,子供との直接的なかかわりが少ない中で,子供を意識しながら仕事をしなければならないため,自らの業務が曖昧なものと感じやすいのです。このことが,学校事務職員が「やりがい」とは何だろうと悩む一因にもなっています。
国立教育政策研究所の藤原文雄総括研究官によれば,「学校事務職員としての自らの仕事に対する考え方が大きく変わるような転機」は,採用後10年以内に経験することが多いということです。また,このような「転機」を迎えることができるかどうかは,その後の学校事務職員としての職業人生を左右する可能性もあるとのことです。
つまり,採用から比較的時間が経たないうちの仕事への向かい方が,「転機」の経験と「やりがい」を感じられるかどうかに,重要な意味をもつのです。しかし,やりがいをもって仕事を行うための努力をしようとしても,単数配置の中,必ずしも十分な機会が平等に保障されているわけではありません。
本書では,学校事務職員の業務のうち,様々な学校づくりにかかわる「教育環境整備」に着目し,その中でも授業を中心とする「学習環境整備」を重視して,具体的な事例を紹介しました。いずれも学びの質の向上を図り,「やりがい」を感じられるようにという願いをこめて執筆しました。
本書が,学校事務職員をはじめ,全ての学校職員が「やりがい」を感じて仕事ができる職場作りの一助となれば幸甚です。
2018年1月 /坂下 充輝
*本書では公立学校に勤務する事務職員を「学校事務職員」と表記しています。
「学校事務職員」という表記は,法律上は存在しません。学校教育法などの法律上では「事務職員」という表記です。
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- 明治図書
- 学校というのは、誰も教えてくれないようなことを「知っていて当たり前」とされてしまう職場で、その中で課せられた責任を果たすには「素直」「かわいがられる」「謙虚さ」「丁寧さ」といった要素が重要なのだと伝わってきた。2022/11/230代・会社員
- チームとしての学校の意識が弱い気がする。事務職員だけでは(教員だけでも)進展しないことに対するヒントは薄い。また、過去の自慢話とも取られるかもしれない。ただ、初任者にはよい刺激となる。2018/3/29教委中間管理職