- プロローグ
- T 「優れているとされる理論」がなぜ現場で支持されないのか
- 気がつけばここが実現不能?
- 1 北 俊夫の目―「私にはできない」と思わせるものは何か― /北 俊夫
- (1)「子どもありき」の授業
- (2)「教材重視」の授業
- (3)「話し合い中心」の授業
- (4)「1単位時間中心」の授業
- (5)「職人芸」の授業
- 2 向山 行雄の目 /向山 行雄
- (1)「優れているとされる理論」とは
- (2)忙しい教師の日常
- (3)優れた社会科の理論が支持されない理由
- (4)学校現場の状況と社会科授業の提言
- U これまでのスタンス&スタイルでいいか
- 校内研究の工夫ある進め方
- 1 研究テーマを明確にする /北 俊夫
- (1)校内研究の特質は何か
- (2)これまでの研究テーマに見る傾向性
- (3)社会科の授業研究会で出される質問事項
- (4)研究テーマの設定に当たって押さえたいこと
- (5)研究テーマの明確化についての提案
- 2 授業記録の取り方・活かし方 /向山 行雄
- (1)授業記録の必要性
- (2)授業記録の取り方
- (3)授業記録による分析
- 3 代案を提示する研究協議 /北 俊夫
- (1)研究協議のどこに問題があるのか
- (2)「一本の筋」を通した研究協議に
- (3)授業の問題点には「代案」を考える
- 4 読まれる研究集録の書き方 /向山 行雄
- (1)現場の研究集録の現状
- (2)研究集録の作成計画
- (3)研究集録の実際
- 5 参加者が満足する研究発表会のもち方 /向山 行雄
- (1)よくある研究発表会の様子
- (2)授業開始―早く確実に会場へ―
- (3)授業中―授業内容がわかるように―
- (4)授業終了後―研究発表の充実―
- V 社会科授業研究―問題点と改善点は“ここ”
- プロが突っ込みを入れるところはどこか
- 1 授業改善につながる学習指導案の書き方 /北 俊夫
- (1)誰のための学習指導案なのか
- (2)1単位時間の学習指導案作成の10のポイント
- (3)「木を見て,森を見ず」にならないように
- 2 ねらいに即した教材開発のヒント /向山 行雄
- (1)教材開発力量の低下
- (2)教材開発の3段階
- (3)教材開発のヒント
- 3 「この発問・指示」をこう変えよう /北 俊夫
- (1)「発問・指示」にまつわる苦い経験
- (2)最近の授業に見る「発問や指示」の傾向
- (3)「発問・指示」の改善点
- 4 授業の流れがわかる板書の技法 /向山 行雄
- (1)板書のうまい教師
- (2)板書上達の基礎知識
- (3)授業の流れがわかる板書の技法
- (4)研究発表会での板書の実際
- 5 フィードバックのある学習評価の設計 /北 俊夫
- (1)教師の責務としての学習評価
- (2)学習評価の目的は何か
- (3)目標の実現を目指す学習評価の課題
- (4)一人一人のよさや可能性を伸ばす評価とは
- W 社会認識を育てる授業戦略の立て方
- これからの時代の公民的資質育成に向けて
- 1 社会参画の資質をどう育てるか /北 俊夫
- (1)「社会参画」をどうとらえればよいのか
- (2)「社会参画」のために必要なこと
- (3)「社会参画」をうながす具体的活動とは
- (4)「もう1つの社会参画」とは何か
- 2 多様な価値観を扱う授業スタイル /北 俊夫
- (1)社会科が敬遠されている1つの要因
- (2)学習指導要領に見る多様な価値観が登場する場面
- (3)多様な価値観を扱う授業のポイント
- (4)重視したい「討論力」の育成
- 3 防災教育―どの視点からどう取り上げるか /北 俊夫
- (1)防災教育が目指していること
- (2)わが国の国土環境と社会科の役割
- (3)社会科における防災教育の可能性
- 4 「公正と効率」を扱う教材の開発 /向山 行雄
- (1)社会科でいう「公正」とは何か
- (2)公正な判断をともなう教材例その1―合理的配慮―
- (3)公正な判断をともなう教材例その2―電力の確保―
- (4)「効率」を扱う教材―工業生産と効率化―
- 5 「価格や法」などの概念をどう教材化するか /向山 行雄
- (1)学習指導要領における「価格や法」についての記載
- (2)価格についての扱い方
- (3)法についての扱い方
- 6 領土などの問題の扱い方 /向山 行雄
- (1)領土問題とは
- (2)現行学習指導要領での扱いと一部改正
- (3)領土の正しい理解
- (4)領土についての実践
- 7 ICT活用の授業づくり /北 俊夫
- (1)社会科におけるICT活用の基本
- (2)社会科における情報教育の内容
- (3)学校におけるICT環境の整備
- 8 東京オリンピック・パラリンピックに向けた授業構想 /向山 行雄
- (1)東京オリンピックの開催と学習指導要領の改訂
- (2)東京オリンピック・パラリンピックで学校に期待される事項
- (3)わが東京オリンピック体験
- (4)東京五輪副読本作成のすすめ
- (5)東京オリンピックの授業
- X 新学習指導要領への提言
- グローバル社会,成熟社会を生き抜くために
- 1 社会科の役割とは何か /北 俊夫
- (1)社会人を育てるための中核教科
- (2)社会科に対する誤解を払拭したい
- (3)社会の変化に対応した社会科に
- 2 グローバル社会,成熟社会を見据えた内容はこれだ /北 俊夫
- (1)わが国を取り巻く危機的な状況
- (2)グローバル社会にどう対応するか
- (3)成熟社会にどう対応するか
- 3 日本人としてのアイデンティティをもたせるために /向山 行雄
- (1)「日本いじめ」からの脱却
- (2)世界最古の国家である日本
- (3)日本のよさを知らない日本人
- (4)厳しい国土環境が育んだ日本人のアイデンティティ
- 4 社会科の内容構成はいまのままでよいか /北 俊夫
- (1)中学校まで見通した7年間の内容検討を
- (2)社会科・新内容構成の問題提起
- 5 世界基準か,地域密着か /向山 行雄
- (1)語学的なハンディをもつ日本
- (2)2050年の世界
- (3)内外の環境変化と社会科学習
- (4)世界の常識,日本の常識
- 6 問題解決的な学習内容がこなせるか /向山 行雄
- (1)現行学習指導要領での問題解決的な学習の扱い
- (2)学習問題や学習過程のモデル化を通した問題解決的な学習
- (3)習得と活用の関係を明らかにした問題解決的な学習
- (4)複線型の指導計画を設定した問題解決的な学習
- エピローグ
プロローグ
授業のどこを見ているか
いきなり私ごとで恐縮です。私は昭和59年(1984年)に東京都の指導主事になりました。それまでは授業を実践する立場でしたが,それからは授業を参観する立場に変わりました。その後,文部省(現文部科学省),岐阜大学,そして現在の国士舘大学と,職場は変わりましたが,40数年間一貫して社会科にかかわり,社会科の授業を数多く参観してきました。
校内研修会や地域の社会科研究会などでは,授業を45分間丸ごと参観することができます。その後,若干のコメントをする時間を与えていただきますから,授業記録を取り,協議会までに話の骨子をつくります。社会科の研究発表会では,多くの学級が一斉に授業を公開しますから,1つの学級を参観する時間は自ずから制約されます。このあと,全体的な講評をすることもあります。研究授業や研究発表会に当たっては,事前に学習指導案が送付されてきます。こうした配慮は,当日の授業を参観する立場からとてもありがたいことです。
40数年間に社会科の授業を参観し,授業づくりにかかわった数は,3000を優に超します。平成25年度だけでも,150を超える学級の授業を参観することができました。そのほとんどが研究授業として行われたものです。社会科のベテラン教師の授業もあれば,初任者の授業や社会科に苦手意識をもっている教師の授業もあります。
研究授業を参観する視点(目)は,当該の学校や研究会が設定した研究テーマであったり,社会参画や言語活動,問題解決的な学習の充実など,そのときそのときの授業課題であったりします。学校や研究会から示されることもあります。しかし,基本は授業づくりの原則にもとづいて参観します。この原則が私の「授業を見る目」です。「学習指導案を検討する目」でもあります。この「授業を見る目」は,授業を参観する機会が増えてくるにつれて,より強固なものになってきたことに気づきます。
私がいずれの授業や学習指導案においても,共通して目をつけるところは次のようなことです。
・本時の「ねらい」は何か。授業者は何を指導しようとしているのか。
・本時の「めあて(学習問題)」は何か。それはどう設定されたか。
・学習問題を解決するためにどんな資料がどのように提示されたか。
・本時の終末では,学習がどのようにまとめられたか。
・板書はどう構造的に構成されたか。
途中から参観した学級では,まず板書されている内容を理解しようと努めます。「板書を見れば授業がわかる」からです。
最近,社会科を研究教科に取り上げて校内研究に取り組んでいる学校が少ないのが現状です。社会科の指導に苦手意識をもっている教師も多いと聞きます。本書『新・社会科授業研究の進め方ハンドブック』は,こうした状況を少しでも打破し,社会科をさらに活性化させたいと願って企画されたものです。これまで長い間ともに社会科研究にかかわってきた向山行雄氏との共著です。向山氏も長く教育行政に携わり,数校の小学校長も勤めましたから,社会科の授業を見る目には確かなものがあります。
若い教師が急増している地域があります。先達が築きあげてきた,社会科授業の優れた授業技術,校内研究の課題やノウハウを若い教師に伝え,学校教育の質を維持・向上させたい。これは現在の学校や教師に対して向山氏と共有する願いです。本書が社会科の校内研究や授業づくりに生かされ,学校教育の一層の質的充実が図られることを願っています。また,本書には,この時期をとらえて,「新学習指導要領への提言」をまとめました。次期改訂に向けて問題提起になれば幸いです。
本書の企画に当たっては,雑誌『社会科教育』の編集を通して長く学校や社会科の動向を見つめてきた,明治図書出版鰍フ樋口雅子さんから多大なご助言をいただきました。この場を借りてお礼と感謝を申し上げます。
平成26年5月 /北 俊夫
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