- はじめに
- 第1章 若手教員を指導する時におさえておきたいポイント
- Point1 若手教員の「願い」を大切にする
- Point2 本質を追い求める姿勢を大切にする
- Point3 若手教員の思いと共に歩む
- Point4 焦らない,期待しすぎない,失敗をカバーする
- Point5 最終目標は,教師としての「自立」
- 第2章 「学級経営」での指導ポイント
- Point1 信頼関係の築き方がうまくないと感じたら
- Point2 徹底すべきことが徹底されていないと感じたら
- Point3 子どもの変化を見過ごしていると感じたら
- Point4 自分らしさを発揮していないと感じたら
- Point5 自分一人で苦しんでいると感じたら
- Point6 口数が多すぎると感じたら
- Point7 子どもの意見に流されすぎると感じたら
- Point8 学級で起きる問題の対応に振り回されていると感じたら
- Point9 特定の子どもとうまく関われないと感じたら
- Point10 めあてをもって生活している子が少ないと感じたら
- Point11 仕事をただこなしているだけだと感じたら
- Point12 子どもと一緒にいる機会が少ないと感じたら
- Point13 言葉遣いが気になったら
- Point14 グループ指導がうまくできないと感じたら
- Point15 自信をもって子どもの前に立っていないと感じたら
- Point16 褒めることが少ないと感じたら
- Point17 学級目標を意識していないと感じたら
- コラム1 発達段階
- 第3章 「学習指導」での指導ポイント
- Point1 教材研究の仕方がわかっていないと感じたら
- Point2 いつも授業時間が延びていると感じたら
- Point3 授業の組み立てがうまくできていないと感じたら
- Point4 授業の始まりがそろっていないと感じたら
- Point5 準備不足の授業が多いと感じたら
- Point6 子どもたちの「聞く姿」が悪いと感じたら
- Point7 自分のペースで授業を進めすぎていると感じたら
- Point8 わからない子どもへの配慮が足りないと感じたら
- Point9 苦手な教科の指導に消極的だと感じたら
- Point10 言葉の選び方に問題があると感じたら
- Point11 板書がうまくできていないと感じたら
- Point12 机間指導が不十分だと感じたら
- Point13 書く指導が不足していると感じたら
- Point14 教室掲示に工夫がないと感じたら
- Point15 グループ学習がうまくできないと感じたら
- Point16 これでは子どもの力が伸びないと感じたら
- Point17 家庭学習が形式的になっていると感じたら
- コラム2 ニューロロジカルレベルの利用
- 第4章 「生活指導」での指導ポイント
- Point1 何となく子どもに落ち着きがないと感じたら
- Point2 トラブルが多いと感じたら
- Point3 失敗を引きずっていると感じたら
- Point4 子どもへの指導が厳しすぎると感じたら
- Point5 教師のいる時といない時の子どもの姿が違うと感じたら
- Point6 指示待ちの子どもが多いと感じたら
- Point7 掃除や給食の指導がうまくできないと感じたら
- Point8 子どもとの距離があると感じたら
- Point9 忘れ物をする子が多いと感じたら
- Point10 時間を守れない子が多いと感じたら
- Point11 グループやペア活動の指導がうまくできないと感じたら
- Point12 子どものトラブルにうまく対応できないと感じたら
- Point13 このままでは子どもが育たないと感じたら
- Point14 教室が乱れていると感じたら
- Point15 他学級と足並みをそろえることに焦っていると感じたら
- Point16 子どもの理解が不十分だと感じたら
- Point17 保護者とうまく関われないと感じたら
- コラム3 学習の4つの段階
- 第5章 若手教員指導の年間計画
- Point1 年間を見通した指導
- Point2 1年の歩みに沿った指導〔年度初めの指導〕
- Point3 長期休業に関わる指導〔夏休みの事前指導〕
- Point4 保護者対応に関わる指導〔授業参観・懇談会の指導〕
- Point5 評価に関わる指導〔所見の書き方指導〕
- おわりに
はじめに
あなたは,夢や希望を子どもたちに語っているでしょうか。
学力低下が叫ばれ,保護者からのクレーム対応に追われ,日々の実践に振り回されている現実に四苦八苦している中では,なかなか夢や希望を子どもたちに語りにくくなっているのではないでしょうか。
そのため,若手教員を指導することについても負担感を感じる教師も少なくないと思います。それほど,教育現場は,厳しい現実にさらされています。
未来を築く子どもたちの手本となり,憧れの存在となるべき私たちが,夢や希望を語れなくなったとしたら,子どもたちに輝かしい未来はありません。
このことを考えると,教育現場の今の状況は,危機的な状況だと言っても過言ではありません。
それに加えて,近年,教育現場に夢と希望をもち,教員になったにもかかわらず,現実の厳しさや辛さに耐えかねて,現場から去っていく多くの若手教員がいます。また,中には無力さに耐えかねて自殺をする若手教員もいます。
今のあなたがどのような状況におかれていようとも,あなたが若手教員を育てなければ,日本の教育の未来はありません。
厳しい現実の中でも,夢や希望をもって生きようとしている若手教員を守るのは,若手教員を育てるあなたしかいないのです。
厳しい現実を生き抜く若手教員を育てる
若手教員の育ちが私たちの未来を切り開きます。その若手を育てる機会に巡り合うことができたことは,どんなに素晴らしいことでしょう。私たちの夢や希望を語りつないでくれる若手教員と関わることができるのです。やり甲斐をもって若手教員を育てたいと思います。
でも,若手教員を育てることに少なからず不安を抱いているあなたかもしれません。そんなあなたが,本書を手にされたことを心より感謝いたします。
若手教員は,私たちが教師として育てられた頃とは,全く異なる時代の中で生きています。私たちが育てられたように育てることはできません。今の時代に合った育て方をすることが,次代につながる教師を育てることになります。
このことから考えると,若手教員を育てることは,若手教員を育てる私たちの学びの場にもなります。自らの力を伸ばしつつ,若手教員がたくましく健やかに育つよう,あなたの力を十分発揮していただきたいと思います。
不安や心配はいりません。この本を手にしたあなたは,間違いなくすでに若手教員を育てる教師になっています。それは,なぜか?
あなたがすでに学び始めているからです。学び続けるあなただからこそ,学ぶ若手教員を育てることができるのです。
初めからできる人はいません。失敗を重ねながら次第にうまくなります。
学び続けるあなただからこそ若手教員を育てられる
『失敗はない。ただ,学びがあるだけ』
これは,私が大切にしている言葉です。教師である私たちにとって,学び続けることに価値があります。
本書に書かれている内容が,若手教員を育てる指導のすべてではありません。逆にここに書かれた内容以上のものを発見するために,あなたが,若手教員から学ぶことができたら,あなたは,すでに素敵な指導者になっています。さあ,一緒に若手教員を育てましょう。
不安を抱えながら生き抜く若手教員を捉える
私たちは,若手と比べるとかなり教員経験が長く,子どもを指導する時の考え方や技術は,身体に染みついています。意識せずにできるため,若手を指導する際にこれが,大きな壁となって若手を苦しめることにもなります。
例えば,山登りをするとします。すでに何度も山の頂上まで登ったことのある人は,山道をよく知っています。山登りのコツも知っています。
でも,初めて登る人は,どんな道なのか想像もつきません。本当に山に登れるのか不安で一杯です。実際の山登りには,相当の準備をして登ることになりますが,若手教員の場合,準備をせず,いきなり山登りをするようなものです。ですから,常に若手教員は,不安と共にいると考えた方がよいでしょう。
その不安を取り除き,一つひとつの体験が確実に若手教員の自信につながるように指導することになります。
もし,あなたが若手教員だったら,どんな指導者を求めるのでしょう。私は,指導者への思いは次のようなものだと考えています。
・私のことをよくわかってくれている指導者
・私が困った時にそばにいてくれる指導者
・私の失敗や不足を補ってくれる指導者
・未熟な私を尊重してくれる指導者
・私の知らないことを教えてくれる指導者
これらの期待に応えることができれば,優れた若手を育てることができると思います。
あなたの感性が若手教員を育てる
本書では,このように若手の期待に応える優秀な指導教師になるための第一歩を踏み出す機会としていくつかの提案をしています。特に「〜を感じたら」と表現して項目をまとめ,あなたの感じ方を大切にしました。それは,あなたの教育観は,あなたの体に染みついた感覚となって表れるからです。
本書の提案に対して,納得することもあれば,疑問を感じたりすることもあるでしょう。それがあなたらしさです。すべてを受け入れるのではなく,自分らしく若手教員を育てることが,若手教員の育ちにつながります。
是非本書を参考にし,あなたの若手教員の指導観を磨いてください。そして,輝かしい日本の未来を築く子どもたちを若手教員と一緒に育てましょう。
2014年5月 /須田 敏男
-
- 明治図書