- はじめに
- Prologue
- 水泳のトップアスリート直伝!泳法指導のポイント/チェックカード
- クロール編
- 平泳ぎ編
- 背泳ぎ編
- 知識及び技能の系統図
- Chapter1 小学校6年間の系統的な指導
- 1 小学校での水泳運動系領域のねらい
- 2 1・2年生の指導計画
- 3 3・4年生の指導計画
- 4 5・6年生の指導計画
- Chapter2 つまずき解決で泳げるようになる逆引き水泳指導アイデア
- 水の中を移動する運動遊び
- 1 水が怖い
- 2 顔をつけられない
- 3 水につかって歩いたり,走ったり,移動したりできない
- もぐる・浮く運動(遊び)/浮いて進む運動
- 4 もぐることができない
- 5 浮くことができない
- 6 背浮きができない
- 7 バブリングで水中で息を吐くことができない
- 8 ボビングで水面に顔を出したときに息を吸うことができない
- 9 け伸びがうまくできない
- 10 スタートがうまくできない
- クロール
- 11 一生懸命ばた足してもぜんぜん進まない
- 12 一生懸命手をかいてもぜんぜん進まない
- 13 下半身が沈んでしまう
- 14 息継ぎのタイミングがうまくいかない
- 15 息継ぎで顔を水面から出しすぎる,正面を向いてしまう
- 16 ゆったりと長く泳ぐことができない
- 平泳ぎ
- 17 あおり足になってしまう
- 18 足の動きが難しい
- 19 一生懸命キックしてもなかなか進まない
- 20 手をかいても進まない
- 21 手と足のタイミングがつかめない
- 22 下半身が沈んで推進力がうまく得られない
- 23 上半身が起きすぎて,前進の力が途切れている
- 24 息継ぎの動作が終わった後,浮力が保てなくなっている
- 25 うまく滑るように進めない
- 背泳ぎ
- 26 体が沈んでしまう
- 27 手の動作をつけると進まない
- 28 まっすぐ進めない
- 29 息継ぎのタイミングがわからない
- 安全確保につながる運動
- 30 背浮きの姿勢で呼吸を続けて浮いていられない
- 31 浮き沈みの動きに合わせて呼吸できない
- Chapter3 よりよい学習環境を整える課題解決アイデア
- 1 学校教育における水泳指導を取り巻く環境の変化
- 健康・安全
- 2 チェックリスト
- 3 準備運動
- 4 バディシステム
- 5 プールの使い方,教師の配置
- 6 見学の子どもの対応
- 7 子どもの健康管理,緊急時の対応,心肺蘇生法
- 運営・管理
- 8 プール開きまでのスケジュール
- 9 効率的なプールの管理・維持
- 10 無駄のない時間割の編成
- 11 負担軽減のための教師の分担
- 12 施設・用具管理
- 13 水泳期間中のTo Do
- 外部委託事例
- 14 メリット・デメリット
- 15 教師の役割・連携の取り方
- 参考文献
- おわりに
はじめに
私の出身は千葉県富津市で,海の近くで育ちました。私が小学生のころ,漁師をしていた祖父から「もし海や川で流されたときは,決して泳いではいけない。何かにつかまって浮き,助けを待ちなさい。」,祖母からは「夏のお盆時期は,土用波が来るから海に入ってはいけないよ。」と何度も教えられました。当時,私はスイミングスクールに通い,クロールや平泳ぎができるようになっていたため,「泳げるから大丈夫でしょ。」とその教えが理解できませんでした。今になって,祖父と祖母の言葉は「安全確保につながる運動」で学ぶ内容であったのだと思います。「泳ぐことと,助かるために浮いていることは別物なんだよ。」そんな祖父の言葉も思い出されます。本書を執筆するにあたって,2人の教えが私の原点にあることを改めて感じています。この場を借りて,亡き祖父と祖母に心から感謝の意を表します。
学校にプールが整備され始めたのは1960年代で,1950年代の水難事故の多発や1964年の東京オリンピックを契機に全国の学校に普及しました。1990年代には小学校のプール設置率が80%を超え,一般的になりました。
それから半世紀ほどが経った現在,新型コロナウイルス感染症の影響による水泳学習の中止,夏の猛暑による熱中症リスクの高まり,老朽化したプール設備の維持管理の困難さ,さらには水泳指導の外部委託が進むなど,教育環境は大きく変化しています。一方で,水難事故は後を絶たず,命を守るための水泳学習の重要性が再認識されています。学校の水泳学習では何を学ぶべきか,教師はどのように指導すべきか。本書は,これらの課題に向き合い,現代のニーズに合った新しい水泳指導のあり方を提案するものです。
最後に,本書が先生方や関係者の皆様にとって役立つ一冊となり,子ども達にとって安全で楽しい水泳学習が実現されることを心より願っています。
2025年4月 /森田 哲史
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- 明治図書