- はじめに
- Chapter1 「問題解決的な学習」をつくる発問設計のポイント
- 道徳科で求められる「問題解決的な学習」
- @ 問題解決的な学習における「主体的な学び」と発問
- A 問題解決的な学習における「対話的な学び」と発問
- B 問題解決的な学習における「深い学び」と発問
- 「問題解決的な学習」をつくる発問の在り方
- @ テーマ別の発問
- A 学習指導過程に対応した発問50
- B 番外編 通常の授業以外で使う発問
- 効果的な発問を導くとっておきのしかけ
- @ 子ども一人ひとりに愛情をもって問いかける
- A 問題解決的な学習に適した発問を精選する
- B 個人間の競争・論争ではなく,集団の協創・共創を促す
- C 子どもが互いの意見を尊重し合う温かい人間関係をつくる
- D 多様に広がった解決策をまとめる
- E 自分を俯瞰し,本当の自己に気づく発問にする
- F ネガティブな自己像からポジティブな自己像にする
- G ペアやグループで皆が主役の学習にする
- H 子どもたちの考えた解決策で役割演技やスキル学習をする
- I 問題解決的な発問を日常生活や他教科等でも活用する
- Chapter2 「問題解決的な学習」をつくるキー発問50
- 低学年
- 01 内容項目 A−(2) 正直,誠実 教材名 くまさんのおちゃかい
- 02 内容項目 A−(2) 正直,誠実 教材名 お月さまとコロ
- 03 内容項目 A−(3) 節度,節制 教材名 教えていいのかな
- 04 内容項目 A−(3) 節度,節制 教材名 かぼちゃのつる
- 05 内容項目 B−(6) 親切,思いやり 教材名 はしの上のおおかみ
- 06 内容項目 B−(6) 親切,思いやり 教材名 ぐみの木と小鳥
- 07 内容項目 B−(7) 感謝 教材名 ありがとうはだれがいう?
- 08 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 二わのことり
- 09 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 泣いた赤おに
- 10 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 およげないりすさん
- 11 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 モムンとヘーテ
- 12 内容項目 C−(10) 規則の尊重 教材名 きいろいベンチ
- 13 内容項目 C−(11) 公正,公平,社会正義 教材名 たっくんもいっしょに
- 14 内容項目 C−(12) 勤労,公共の精神 教材名 わたしたちもしごとをしたい
- 15 内容項目 C−(15) 伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度 教材名 ぼくのまちも,ひかってる!
- 16 内容項目 D−(18) 自然愛護 教材名 虫が大すき(アンリ・ファーブル)
- 中学年
- 17 内容項目 A−(1) 善悪の判断,自律,自由と責任 教材名 よわむし太郎
- 18 内容項目 A−(2) 正直,誠実 教材名 まどガラスと魚
- 19 内容項目 A−(3) 節度,節制 教材名 太郎のいどう教室
- 20 内容項目 A−(3) 節度,節制 教材名 ロバを売りに行く親子
- 21 内容項目 A−(4) 個性の伸長 教材名 わたしのゆめ
- 22 内容項目 A−(5) 希望と勇気,努力と強い意志 教材名 ぼくらは小さなかにはかせ
- 23 内容項目 B−(6) 親切,思いやり 教材名 心と心のあく手
- 24 内容項目 B−(8) 礼儀 教材名 三本のかさ
- 25 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 絵はがきと切手
- 26 内容項目 B−(9) 友情,信頼 教材名 友だち屋
- 27 内容項目 C−(11) 規則の尊重 教材名 雨のバス停りゅう所で
- 28 内容項目 C−(12) 公正,公平,社会正義 教材名 プロレスごっこ
- 29 内容項目 C−(14) 家族愛,家庭生活の充実 教材名 お母さんのせいきゅう書
- 30 内容項目 C−(15) よりよい学校生活,集団生活の充実 教材名 えがおいっぱい
- 31 内容項目 C−(17) 国際理解,国際親善 教材名 いつかオーストラリアへ
- 32 内容項目 D−(18) 生命の尊さ 教材名 五百人からもらった命
- 33 内容項目 D−(20) 感動,畏敬の念 教材名 花さき山
- 高学年
- 34 内容項目 A−(1) 善悪の判断,自律,自由と責任 教材名 心の管理人
- 35 内容項目 A−(2) 正直,誠実 教材名 手品師
- 36 内容項目 A−(5) 希望と勇気,努力と強い意志 教材名 夢に向かって―三浦雄一郎―
- 37 内容項目 A−(5) 希望と勇気,努力と強い意志 教材名 鑑真和上
- 38 内容項目 A−(6) 真理の探究 教材名 帰ってきた,はやぶさ
- 39 内容項目 B−(7) 親切,思いやり 教材名 命のおにぎり
- 40 内容項目 B−(10) 友情,信頼 教材名 ロレンゾの友達
- 41 内容項目 B−(10) 友情,信頼 教材名 ミレーとルソー
- 42 内容項目 B−(11) 相互理解,寛容 教材名 ブランコ乗りとピエロ
- 43 内容項目 C−(12) 規則の尊重 教材名 いらなくなったきまり
- 44 内容項目 C−(12) 規則の尊重 教材名 図書館はだれのもの
- 45 内容項目 C−(13) 公正,公平,社会正義 教材名 「スイミー作戦」「ガンジー作戦」
- 46 内容項目 C−(17) 伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度 教材名 米百俵
- 47 内容項目 C−(18) 国際理解,国際親善 教材名 青い目の人形
- 48 内容項目 D−(19) 生命の尊さ 教材名 妹の手紙
- 49 内容項目 D−(22) よりよく生きる喜び 教材名 六千人の命のビザ(杉原千畝)
- 50 内容項目 D−(22) よりよく生きる喜び 教材名 わたしはひろがる
はじめに
特別の教科となる道徳科では,問題解決的な学習を積極的に取り入れ,従来の「読む道徳」から,「考え,議論する道徳」へと質的転換することが目指されています。道徳科の成否は,こうした問題解決的な学習に代表される「考え,議論する道徳」を実現し,主体的・対話的で深い学びを各教科等に先がけて適切に導入し,より多様で質の高い授業をどれだけ豊かに展開できるかにかかっています。
ただ,その一方で,「道徳科で問題解決的な学習をやりたいけれど,どうやればいいの?」「従来のやり方とどう違うの?」という学校現場の声を聞くことがあります。問題解決的な学習では,子どもが道徳的問題に向き合い,「どうしたらよいか?」を主体的に考え,協働して解決します。その点で,従来のように「登場人物はどんな気持ちだったか?」を読み取る道徳の指導法とは根本的に異なります。
また,「道徳科で問題解決的な学習をやってみたけれど,うまくいきませんでした」「子どもたちからいろんな意見が出て,収拾がつかなくなりました」という悩みを聞くこともあります。慣れないうちは,子どもたちの多様で不規則な意見にうまく対応できず,立ち往生してしまうこともあるでしょう。この指導法に熟達された先生方は,想定問答を念頭に入れ,事前にシミュレーションしておき,臨機応変に子どもたちへ問い返しをしています。例えば,多面的・多角的な考えを促す発問,多様な意見をまとめる発問,互いに納得できる最善解を導く発問などを事前に準備しておき,授業中,必要に応じて繰り出すのです。
こうした子どもが本気で考え,議論したくなるような発問を,教師がどれほど豊かにもっており,タイミングよく発信できるかが,道徳科を成功・充実させるうえでの鍵(キー)となります。そこで本書では,問題解決的な学習をつくるために重要な発問を50ほど精選し,「キー発問50」と銘打つことにしました。こうしたキー発問を教師が自由自在に活用できるようになると,子どもたちの方も道徳を学ぶことが楽しくなり,自らの成長を実感できるようになり,やる気も高まっていきます。
本書のキー発問50は,すでに有効性が検証された有意義なものばかりであり,教材や子どもの実態に合わせて調整できます。本書で提示するキー発問,例えば,「自分がそうされてもよいか?」「その結果,どうなるか?」「人間としてどうしたらよいか?」などは,他の教科・領域でも使えます。また,子どもたちの個人的な悩み,人間関係のもつれ,集団内のトラブル,社会的問題,そして今日的課題などにも使えます。こうしたキー発問は,実効性や汎用性が極めて高いため,子どもたちの日常生活における行為や習慣にもよい影響を及ぼし,学校の道徳教育全体で機能するのです。
21世紀を生きる子どもたちは,答えが一つではない様々な道徳的・社会的な諸問題に向き合うことになります。そこで,子どもたちが主体的に考え,判断し協働して問題を解決しながら,よりよく生きる力の基盤となる道徳性を育めるように,教師はこうしたキー発問をぜひ多方面で活用していただきたいところです。
本書の授業例は,問題解決的な学習の道徳授業に熟達している竹井秀文先生がキー発問50に対応させて開発・実践されたもので,柳沼が全般的に監修しています。竹井先生の道徳授業は,子どもたちが自然と道徳的問題に興味・関心をもち,その解決を目指して誰もが主役として生き生きと活躍できるように創意工夫されています。本書で取り上げたキー発問50も,竹井先生のリアルな道徳授業の中で活用されているのをご覧いただくことで,よりビビットにライブ感覚でご理解いただけるでしょう。実際に,どの教材でどのタイミングにどのように問いを発し,問い返せば効果的なのか。ぜひ,教師と子どもたちの当意即妙なやり取りをご理解いただきたいところです。
ぜひ道徳科で本書の問題解決的なキー発問をご活用いただき,我が国でも本当の「考え,議論する道徳」が豊穣に展開されるようになることを祈念いたします。
平成29年12月 /柳沼 良太
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- 明治図書
- 場面ごとの発問が書いてありとてもわかりやすいです。2021/2/2420代・中学校教員
- 竹井先生の本は、どれも内容が素晴らしいのですが、発問に特化した本は特に竹井先生の持ち味が出ていて良い。2019/4/1450代・小学校教員
- 簡単な一時間の流れが載っているとありがたい。2019/3/2730代・小学校教員
- 表紙がきれいでした2018/8/3040代・教委
- 子どもの反応にどう切り返したら「深い学び」につなげることができるのだろうと日々悩んでいるところですが、この本でヒントをもらいました。発問に特化されていますが、板書もあるとさらによく分かるなあと思いました。2018/6/1050代 小学校研究主任