- はじめに
- Chapter1 学校の働き方改革の現在
- 学校の働き方改革の現在
- ――多様化するニーズと対応に追われる学校
- 学校の働き方改革の目的は?
- ――なぜ、学校の働き方改革は進まないのか@
- 結果を求めすぎていないか?
- ――なぜ、学校の働き方改革は進まないのかA
- 職員室での議論がかみ合わない理由とは?
- ――なぜ、学校の働き方改革は進まないのかB
- 働き方改革が職員に「受け入れられない」理由とは?
- ――なぜ、学校の働き方改革は進まないのかC
- Chapter2 チームが動き始める!マネジメントとリーダーシップを大切にした学校の働き方改革
- 組織の健全性と効果性という視点
- ――学校の働き方改革に生かしたい「組織開発」@
- 「見える化、ガチ対話、未来づくり」という3ステップ
- ――学校の働き方改革に生かしたい「組織開発」A
- 学校の働き方改革で求められるリーダーシップ
- 学校の働き方改革の8段階プロセス
- ――ジョン・コッターの「組織変革の8段階プロセス」を参考にして
- Chapter3 全職員が動いた! 学校の働き方改革
- プロセス0
- 校長こそ「学校の働き方改革」に対する想いや願いを語ろう
- ――オーセンティックリーダーシップを発揮して
- プロセス1
- 危機意識を高める
- ――「校長だより」の発行
- プロセス2
- ビジョンと戦略を生み出す@
- ――理想の1日を描く
- ビジョンと戦略を生み出すA
- ――業務の優先順位を考える
- プロセス3
- 職員の自発を促す
- ――「個人定時退校日」「夕方のチャイムの設定」など退勤を促す取り組み
- プロセス4
- 短期的成果を実現する
- ――朝の打合せの実施方法の見直し
- プロセス5
- 変革のためのビジョンを周知徹底する
- ――「豊田小学校働き方改革キックオフミーティング」の実施
- プロセス6
- 変革推進のための連帯チームを築く@
- ――サーバントリーダーシップを大切にして
- 変革推進のための連帯チームを築くA
- ――具体例 ICT機器を活用した業務改善・授業改善
- 変革推進のための連帯チームを築くB
- ――具体例 職場を快適な空間に/遊び・雑談を勤務時間内に
- 変革推進のための連帯チームを築くC
- ――具体例 給食指導、見直してみませんか?
- プロセス7
- 成果を生かしてさらなる変革を推進する
- ――「フィードバックミーティング」の実施
- プロセス8
- 新しい方法を学校文化に定着させる
- ――「活き活き×やりがい職場調査」の実施
- 豊田小学校での取り組みを振り返って
- ――働き方改革の推進と新たな学びの展開の一体化を目指して
- Chapter4 これから改革を進めるスクールリーダーのみなさんへ
- 謙虚なリーダーが、職員の力を引き出す
- 変わりつつある教育委員会の取り組み
- ますます求められる管理職のマネジメント力
- ――他業種に比べ遅れている学校の働き方改革
- 感情労働が多くを占める学校でできることは
- ――注目される「勤務間インターバル制度」
- 校長が頼ることができるコミュニティを大切にする
- おわりに
- 参考文献
はじめに
みなさん、こんにちは。私は名古屋市教育委員会事務局 教育支援部 義務教育課に勤めています中村浩二と申します。このたびは本書をお手に取っていただき、本当にありがとうございます。
まずは自己紹介をします。私は平成29年4月に名古屋市立東築地小学校の教頭となり、管理職としての道を歩み始めました。その後、平成31年4月に名古屋市立矢田小学校へ教頭として異動。令和4年4月には名古屋市立豊田小学校へ校長として赴任しました。
この6年間、管理職として「学校の働き方改革」に取り組んできました。ありがたいことに「学校の働き方改革に対する管理職としての想い」や「学校の働き方改革の具体的な取り組み」について、テレビや新聞、書籍、雑誌、SNS……等々、各種メディアを通して発信させていただく機会に恵まれました。
また、発信した内容に共感をいただいた団体様や個人様から、研修講師の依頼をいただく機会も増えました。その中で、心に残っているエピソードを紹介します。
令和5年8月。奈良県生駒市の研修に講師として招かれたときのことです。
研修前、ある管理職の先生から、こんなことを伺いました。
「管理職の思いとは裏腹に、働き方改革について先生方の理解が得られなくて、働き方改革が進まないことが悩みなんです。長時間労働が解消されないので、先生方の健康が損なわれないかと心配で……。」
一方、兵庫県芦屋市の研修では、先生からこんな訴えがありました。
「働き方改革が大切なのは分かるんですけど。時短、時短の掛け声で、自分のやりたいことができず、だんだん働きがいを感じられなくなってきて。定時退校日に早く帰っても、結局、家に仕事を持ち帰るだけで、実態は何も変わらないんですよね……。」
学校の働き方改革に対する本音を語る表情からは、管理職の苦悩や、先生の「働き方改革に対するモヤモヤした気持ち」が伝わってきました。
しかし、研修を終えると、
「なるほど。働き方改革はこうやって進めれば、みんな前向きな気持ちで取り組めますね。」
「働き方改革の目的をきちんと理解することが、改革の第一歩につながることが分かりました。」
と感想を述べられ、お二人とも笑顔で帰っていかれました。(写真省略)
平成30年7月に「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が公布されました。翌平成31年、中央教育審議会では「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」が取りまとめられました。
それから5年、文部科学省からは「全国の学校における働き方改革事例集」が公開されるなど、取り組みやすい事例(ICT機器を活用した業務の効率化・教員業務支援員の活用・留守番電話の導入・日課表の見直しによる下校時刻の繰り上げ・会議の実施方法の工夫など)が、多くの学校で共有されるようになりました。
しかし、実態は、前述の研修会での先生方の発言のように、各学校において、働き方改革がスピード感をもって進められていくという印象はあまりありません。実際、「令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」においても、「時間外勤務月45時間」を超える教員が、未だに高い割合を占めていることが明らかになっています。
なぜ、学校の働き方改革は、なかなか進まないのでしょうか?
それは、「何」をするかの前提となる、「どのように」働き方改革を進めるとよいのかという課題が、各学校で解決されていないからだと考えます。そして、この課題を解決するためには、「組織開発の視点を大切にした管理職によるマネジメント」と「職員の意識に働き掛ける管理職のリーダーシップ」が大切であると6年間の管理職としての取り組みから実感するようになりました。
本書は、学校の働き方改革において「何」をするかにとどまらず、「どのように」働き方改革を進めればよいのかについて、みなさんにご理解いただくことができるように、「組織開発の視点を大切にした管理職によるマネジメント」と「職員の意識に働き掛ける管理職のリーダーシップ」による効果的かつ効率的な働き方改革の方法をまとめたものとなります。
この本をお読みいただくことで、各学校での働き方改革が、職員の理解と納得の基に進められるようになり、働きやすくかつ働きがいを感じられる持続可能な学校づくりのお役に立つことができるようになることを願っています。
とりわけ、校長先生や教頭先生といったスクールリーダーのみなさんにとって、本書と巡り合ったことが、「組織開発」や「リーダーシップ」について関心をもつきっかけとなり、学校運営の改善につながるとしたら、こんなにうれしいことはありません。
「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校づくりのための働き方改革」について、一緒に考えてみませんか?
/中村 浩二
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- 明治図書