- まえがき
- ▼T 刻一刻と迫っている
- ▼U 学力向上改革元年
- ▼V 「学びのすすめ」が抱える負の遺産
- ▼W 学力の向上を阻んでいるものは何か
- ▼X 混沌からの脱出
- ▼Y これが! 基礎学力だ!
- ▼Z 教師を鍛える方略(1)
- ▼[ 教師を鍛える方略(2)
- ▼\ 教師を鍛える方略(3)
- ▼] 教師を鍛える方略(4)
- ▼]T 身銭を切って学ぶ
- ▼]U 学力向上と校長の責任
- ▼]V 習熟度別少人数授業の教訓
- ▼]W 到達度テストの実施と結果の開示
- ▼]X 絶対評価対応型システムをつくる
- ▼]Y 「到達度テスト」と「評価規準」
- ▼]Z もうひとつの「教育改革」案
- あとがき――公開職員会議で公約する
まえがき
平成十四年度は、これ以降の教育の動向を決めるターニングポイントとなる年度となるであろう。
平成十四年度には何があったのか。
(1) 学校週完全五日制の実施
(2) 改訂学習指導要領の実施
(3) 相対評価から絶対評価への転換
(4) 総合的な学習の実施
(5) 学校評価の情報開示の義務化
(1) 学校週完全五日制の実施
自治体や地域における各種団体が知恵を絞って子どもの受皿づくりに奔走した数年間であった。
教師にも市町村職員という名目のもとで様々な協力という名前の依頼があった。休みを返上して協力せよというのである。『校長の「責任」とは何か』(明治図書)で、この件について異義を唱えた。当該市町村に住んでもいない教師を休みを返上して参加させようとは何事か。人の子どものために遠距離を何時間もかけて参加させてどうしてやる気がでようか。それよりも、教師は自分の住居のある校区で活動をすべきである。若い教師は自分の子どもと参加できる、それなりの歳の教師は地域の子どもと活動できる。これならば、やる気にもなる。というのが趣旨であった。
前者の策をとった自治体の活動は低調であり、一年もしないうちに開店休業状態の活動がいくつもある。子どもが参加する気になれない活動だからである。
後者の策をとった自治体の活動は盛んである。地域おこしになっている活動まである。当然の帰結である。
(2) 改訂学習指導要領の実施
(3) 相対評価から絶対評価への転換
(4) 総合的な学習の実施
この三つはセットである。
総合的な学習は数年の試行期間があった。
ということは、計画ができているはずであった。事実、学習状況調査でも計画ができている学校はほぼ全部といってよい状態であった。
ある県は、全ての学校へ調査に入った。実地調査である。そこで、驚くべき事実が判明した。
1 総合的な学習の計画がまったくないに近い状態の学校。
2 計画はあるにはあるが計画とは呼べないような状態の学校。
3 できているが半分しかできていない学校。
4 できているが内容が総合的な学習の趣旨に合わない状態の学校。
これらの学校は、調査ではどのようになるか。
計画はできている。
これである。
調査をした指導主事も唖然とする状態であったのだ。
改訂学習指導要領の実施に向けて学校が完備しなければならない総合的な学習にしてもこのような状態なのである。完全学校五日制の受皿などはどのような状態か推して知るべしである。
相対評価から絶対評価への転換が、学校に何をもたらすのかも知らない教師が授業をしている。学校で話題になったこともないという教師もかなりいる。話題になったことがないということは、研修をしていないということでもある。
となると、校長の責任は免れない。
絶対評価への転換についての研修が行われていないとなれば、本書のテーマについても茫然自失の状態だと思わざるをえない。
これである。
学力保障は校長と教師の責任である。
絶対評価は評価基準の客観性の確保が生命線である。評価基準が曖昧では、絶対評価の意味がない。なぜならば、相対評価と比較にならないほど教師の恣意的な評価が行われかねないからである。
評価基準の客観性が確保できないと指導力のない教師ほどデタラメな評価をすることになる。なぜならば、子どもの評価が低ければどうしてこのような評価なのか説明をしてくださいという保護者の要望に答えなくてはいけなくなるからである。保護者の要望を防ぐにはデタラメでも、成績を良くして付ける以外に手がないからである。絶対評価だから良い成績の人数に制限がない。これを悪用するのである。
絶対評価の意味と意義について、まずは、研修をしなければならない。
絶対評価への転換とウラハラになっているのがこれである。
(5) 学校評価の情報開示の義務化
学力についての情報は公開される。
指導力が不足している教師は教師として子どもの前に立てなくなる。教壇を去らなければならなくなる。
学校の顧客主義への転換である。
このようにみてくると、校長と教師が全力で取り組まなければならないことが分かる。
校長は何をしなければならないか。
(1) 教師の指導力を向上させるための研修システムをつくる。
(2) 評価基準や学力実態の公開に耐えるPLAN−DO−CHECK−ACTION(マネジメント)を導入する。
(3) 積極的に説明し、情報を公開する。
教師は何をしなければならないか。
一に研修、二に研修、三四がなくて五に研修
ではどのようにして何を研修したらよいのか。
本書では、従来型の研修を廃止して、新しい研修を提案する。教師の指導力はこうすれば向上するという研修を提案する。
子どもの学力保障は、校長と教師が責任を果たす、取るという決意、覚悟なくしてはありえない。
最後になるが、私たちの試みをこのような形で世に問うことを勧めていただいた江部満氏に感謝を申し上げる。
平成十五年三月 /大森 修
この本は、大森校長先生からの今の校長、教師たちへのエールだと受け取りました。
教師としての気概を持って、今後の教師生活を送ります。
読後、やる気が出てきました。管理職をめざしたいと思いました。