学校新時代叢書3新教育課程が求める学校改革

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教育改革の集約としての新教育課程。その作成に携わった著者が、その構想を踏まえて学校現場が取り組むべき改革のテーマと取り組み方法を示す。


復刊時予価: 2,728円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-128509-X
ジャンル:
学習指導要領・教育課程
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
1章 新教育課程が求める学校改革の方向
一 機能的学力としての「生きる力」の重視
1 知・徳・体のバランス
2 内容知から方法知へ
3 豊かな人間性の育成
4 バランスのとれた学校・家庭・地域の連携
二 学校知転換の方向
1 高まる矛盾
2 学校知転換の具体策
3 人間知の回復
三 学校パラダイムの転換
1 子どもの側に立つ学校
2 学びの場としての学校
3 共に生きる場としての学校
四 これからの学校と教師の意識改革
1 教師こそ原動力
2 「伝える力」から「創る力」へ
3 「教科の眼」から「総合の眼」へ
4 「支配者」から「支援者」へ
5 学校改善の支援体制
2章 「生きる力」を育てる教育課程の改革
一 「生きる力」の育成と編成の重点
1 「生きる力」と学校教育
2 「生きる力」を育む学校教育の展開
二 道徳教育の充実
1 心の教育と道徳教育
2 道徳教育の目標
3 体験の重視
4 家庭や地域社会との連携
三 体育・健康に関する指導の充実
1 健康教育の重視
2 体育・健康に関する指導の広がり
3 生涯学習の一環としての指導
四 基礎的・基本的内容の定着
1 基礎・基本と総合的学習
2 個に応じた指導の充実
3 繰り返し指導
五 「総合的な学習の時間」の学習活動
1 三つの学習活動
2 三つの課題のトライアングル
3 「実態に応じて」とは
六 選択履修幅の拡大
1 選択履修幅の一層の拡大
2 必修と選択
3 選択と総合
七 ガイダンス機能の充実
1 ガイダンス機能の強調
2 ガイダンスの多義性
3 学校の取り組みと課題
八 ボランティア学習
1 ボランティア活動の推進
2 ボランティア活動の今日的意義
3 ボランティア学習の内容と課題
九 時間の弾力化
1 「時間」か「内容」か
2 週時間割の弾力化
3 一単位時間の弾力化
4 学校の生活化と時間の工夫
十 指導体制の工夫
1 個性を生かす教育と指導体制
2 教師の専門性と指導体制
3 教育の弾力化と指導体制
十一 開かれた学校
1 「開かれた学校」の要請
2 地域の人々の協力
3 交流学習
4 学習の場の拡大
3章 特色ある教育・学校づくりの推進
一 「特色ある教育、特色ある学校づくり」の提唱
1 特色ある教育、特色ある学校づくりの提言
2 子どもからの教育改革
二 どこに特色を求めるか
1 「特色」とは何か
2 創意ある教育活動
3 教育課程の運用の弾力化
三 「生きる力」と特色ある学校づくり
1 自ら学び、自ら考える力
2 豊かな人間性とたくましい体力
3 「生きる力」とゆとり
四 個性を生かす教育と特色ある学校づくり
1 形式的平等から個性尊重の教育へ
2 教育課程の弾力化
3 教育の過程とガイダンスの意義
五 子どもの実態と特色ある学校づくり
1 実態と常識の混同
2 子どもの生活
3 子どもの興味や関心
六 学校文化・学校の実態と特色ある学校づくり
1 地域の実態と諸側面
2 物理的環境と特色ある教育活動
3 文化的環境と特色ある教育活動
七 地域の特色や文化と特色ある学校づくり
1 なぜ、地域の特色を生かすのか
2 地域の実態の諸傾向
3 指導内容を通した学校と地域の関連
4 教材を通した学校と地域の関連
4章 新教育課程が求める学校改革の課題
一 新教育課程と子どもの基礎学力
1 基礎学力をめぐる問題
2 基礎学力の三つのレベル
3 内容知と方法知
4 基礎学力と知の総合化・実践化
二 新教育課程と社会性の育成
1 社会性を育てる
2 基本的生活習慣に追われる学校
3 社会性の基礎・基本としての社会的技術
4 価値選択能力の育成
三 規範意識の形成
1 社会規範の形成
2 規範意識の衰退
3 規範意識の形成をどう図るか
四 総合的学習と教科の関係
1 知の総合化・実践化
2 教科の眼と総合の眼
3 挫折・失敗体験と生きる力
五 教課審・学習評価観の転換
1 学力観と評価観
2 だれのため、何のための評価か
3 指導要録の改善の要点
4 今後の課題
六 地方分権と学校の自主性・自律性
1 特色ある教育と学校の自主性・自律性
2 教委の支援と学校の自主性・自律性
3 開かれた学校と学校の自主性・自律性
4 学校裁量権の拡大と校長のリーダーシップ
「新教育課程が求める学校改革」論文初出一覧

まえがき

 平成八年七月の第十五期中央教育審議会の第一次答申に始まった今次の一連の教育改革は、平成十二年十二月の教育課程審議会の答申によって一つのサイクルを締めくくったといってよい。つまり、「生きる力」という学力の在り方が教育改革の入口であり、教育課程の編成の基本方針、学習指導要領の改訂という経路をたどり、目標に準拠した評価の在り方という教育改革の出口にいたったわけである。

 しかし、これはあくまで、国全体の教育政策上の改善のサイクルであり、学校においては、いよいよ平成十四年度から本実施に入る。つまり、学校改善の本番に突入するわけである。その本番を前に、すでに学力の在り方をめぐって、さらには基礎・基本と総合的な学習をめぐって等々と、学校における悩みも深まり、教育課程改善に向かっての基本的姿勢のゆらぎすらうかがわれる。もっといえば、一体、今次のこの一連の教育改革は、いずれの方向を目ざしているのか、たどりつこうとするのか、その方向性がややもすれば拡散しがちになってきている。

 そうであるだけに、まずもって、この一連のサイクルをたどり、位置づけ、改善の方向をしっかりと把握するとともに、学校にとって何が課題であり、どこに取り組みの課題があり、どう取り組めばよいのかを、自覚的にとらえることがまず不可欠である。学校の創意工夫がこれまで以上に強調されたがために、より強く自らの課題として意識できるかどうかが、今次の一連の教育改革を左右する鍵ともなっているからである。「学校次第、教師次第」となってきたわけである。

 たとえば、特色ある学校づくり、特色ある教育づくりの「特色」の意味を、他校にない「アッ」と周囲を驚かすような「花火」ととらえたり、奇異をてらい大向こうをうならせる活動と受け止めたなら、それは根なし草の一瞬の流行と化してしまう。何よりも子どもにとっては迷惑な教育となる。また、「ゆとり」を何もしないで空をポケーッとながめている時間だとしたら、それこそそこに生きる力を期待することは難しい。子どもが課題に思いきり没頭し、そのための時間と活動を保証し、そこに精神的余裕も生まれてくるというのが、「ゆとり」の意味するところである。さらにまた、教科等の基礎・基本がしっかり身に付いて初めて、総合的な学習は豊かなものとなっていくわけで、両者を対立的にとらえていては、生きる力の育成は覚束ない。

 本書はこうした立場から、今次の一連の改善の流れをしっかりおさえ、子どもや地域にしっかりと根をおろした学校改善をはかるために、ここ数年の雑誌等で提案してきた論稿をまとめたものである。教育課程の編成と展開の過程を中軸に、学校は今後の教育改革にどう取り組み、推進していくかを、学校の目線、子どもの目線に立って考え、論じたつもりである。元より、学校改善、教育改革に終着駅はない。そのことを前提に、前向きに積み上げていく他はない。その仕事は、しんどいが喜びでもある。そう思いたい。読者の皆様とともに、私もまた次の一歩を踏み出したい気持ちで一杯である。

 本書をまとめるに当たっては、雑誌等、初出掲載させていただいた各社にお礼を申し上げると共に、また、それら論稿を整理し、編集していただいた明治図書出版の安藤征宏氏、多賀井寿雄氏に記して感謝申し上げる次第です。


  二〇〇一年七月十五日   /児島 邦宏

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      明治図書

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