- プロローグ
- 第1章 退屈な授業から脱却する!学習ゲームの可能性
- 1.退屈な授業の背景にあるもの
- @ 授業がうまくいかない根本原因を探ろう
- A 子どもからの「退屈サイン」を見逃さないために!
- B 子どもが授業に集中してくれないのはなぜ?
- 2.退屈な授業から脱却する!学習ゲームの試み
- @ 学習ゲームで授業はこんなに楽しくなる
- A 子どもの学ぶ楽しさを引き出すゲーム発想
- B 学習ゲームとは「ゲーム形式の言語活動」である
- C 学級づくりと授業づくりの関係
- D 子どもの発達段階とゲームの難易度の関係
- 3.気を付けよう!学習ゲームの落とし穴
- @ 「楽しいだけで学びなし」の状態
- A 教師がコントロールできない状態
- B 置いてきぼりの子がいる状態
- 第2章 どんな学習ゲームもうまくいく!100%活用術
- 1.どんな学習ゲームを導入するか
- @ ゲームの「学びのしかけ」を見極めよう
- A 面白素材を使って教育内容にアプローチする方法
- B 教育内容を学習ゲーム風に改編する方法
- C 個人作業か,グループ活動か
- 2.いつ学習ゲームを導入するか
- @ 学習ゲームに適した雰囲気づくり
- A 学習ゲームを使った学級の雰囲気づくり
- B 学習ゲームの時間の確保の仕方
- C 盛り上がったゲームを再びやるか,いろいろなゲームを試すか
- 3.どうやって学習ゲームを学びに結びつけるか
- @ 楽しい以外の学びの目標を設定する
- A 1人の子に焦点化して達成度を把握する
- B ゲームの途中で微調整を入れる
- C 途中で「振り返り」をする
- 第3章 授業を楽しくする!オススメ学習ゲーム50選
- 空気をあたためるアイスブレイク10
- 1 間違い漢字探しゲーム 全学年
- 2 ○×クイズゲーム 全学年
- 3 後出しジャンケンゲーム 全学年
- 4 協力漢字づくり 全学年
- 5 数集まり 全学年
- 6 バースデー・ライン 全学年
- 7 アイコンタクトゲーム 全学年
- 8 共通点探しゲーム 高学年
- 9 2つのホント1つのウソ 高学年
- 10 漢字ビンゴゲーム 全学年
- ことば遊びで脳みそフル回転の学習ゲーム10
- 11 アクロスティック 高学年以上
- 12 あいうえお作文 中学年以上
- 13 早口ことば 中学年以上
- 14 同音異義語探し 高学年
- 15 漢字しりとり 中学年以上
- 16 物名(もののな) 高学年
- 17 ダジャレ遊び 全学年
- 18 ファンタジーの二項式 高学年
- 19 無理問答 高学年
- 20 当たり前体操! 高学年
- 体を動かして「つながり力」アップのゲーム10
- 21 魂で握手 全学年
- 22 インパルス 中学年以上
- 23 拍手回し 全学年
- 24 アクション回し 中学年以上
- 25 表情リレー 中学年以上
- 26 体しりとり 中学年以上
- 27 ゾンビゲーム 高学年
- 28 ウインク・キラー 高学年
- 29 リーダーを当てろゲーム 高学年
- 30 震源地ゲーム 全学年
- 学びあいを通して「論理力」を鍛えるゲーム10
- 31 ショウ&テルゲーム 全学年
- 32 イエス・ノーゲーム 中学年以上
- 33 だから,しかしゲーム 中学年以上
- 34 他己紹介ゲーム 中学年以上
- 35 「欧米式」作文コンテスト 高学年
- 36 リンクゲーム 中学年以上
- 37 10の条件ゲーム 中学年以上
- 38 問答ゲーム 中学年以上
- 39 ダイヤモンドランキング 中学年以上
- 40 質問力ゲーム 高学年
- エンタメで楽しく!多重的知能をみがくゲーム10
- 41 チェッコリ 低・中学年
- 42 たぬきうた 全学年
- 43 パートナーソング 高学年
- 44 エコーソング 全学年
- 45 ぼいんしょうゲーム 中学年以上
- 46 あるあるネタ合戦 中学年以上
- 47 お笑い山手線ゲーム 全学年
- 48 ぶたのしっぽ 中学年以上
- 49 三文字しりとり 高学年
- 50 せんだみつおゲーム 中学年以上
プロローグ
学習ゲームは「楽しい授業」の大本命!
T大学出身の大学教授・Y先生から聞いた話である。
小学校に行き始めたころに登校しぶりをしたY先生におばあちゃんが言ったそうである。「学校はつまらないところ。でも我慢するところ。我慢して勉強しなさい。う〜んと勉強してエラくなりなさい」。
そしてそのY先生の息子さんの話である。
いま私立高校1年生である。
「学校の授業はとにかくつまらない。つまらない授業を押しつける学校は納得がいかない。学校,変えるべし。そのために僕はエラくなる!」
父と息子の時間差はおよそ30年である。
* *
1980年代の半ばぐらいまでは「授業はつまらないもの。学校は我慢をして行く場所」という考えが保護者の中にもあった。先生たちは親身になって勉強を教えていたけれど,授業で子どもたちが我慢するのは当然であった。
しかし親も子も学校以外の「学び」に触れるチャンスが増えるにつれて,授業=つまらないもの。それでよいとは考えなくなった。学校もできるだけ楽しく学ばせてほしい。そんなふうに考える人たちが増えてきた。
* *
学習ゲームを一言でいうと「楽しい授業」の大本命である。
たとえば,教科別の好き嫌いランキングの最下位の位置をいつもキープしている国語もゲームを使った授業をすると子どもはイッキに活気づく。
学習ゲームをするとなぜ教室が活気づくか。楽しいか。
それは教室にゲームをめぐるコミュニケーションが生まれるからである。伝統的な一斉授業などでは,教師が語り,子どもたちはその話を聞くだけであるのに対して,学習ゲームの授業では「ゲーム=勝ち負けのある遊び」をめぐって教室の中に様々なコミュニケーションが生まれるのである。
たとえば,次の図からできるだけたくさん漢字を探すゲームがある。
(図省略)
まずは個人で。次にみんなで黒板に漢字をいっぱいに書き出す。
とくに楽しいのは「みんなで漢字を出し合う」ところ。
わいわいがやがややりながらみんなの知恵を黒板に漢字で出していくと,連帯感・充実感・達成感をじわじわと味わうことができる。
もちろん授業には体育スポーツやグループで協力しながらやる理科実験,工作や楽器の演奏など,他にも楽しい授業は多々あるが,共通しているのは,みんなが協力しながら,体を動かしながら学ぶ,そんな勉強である。
実技系でない教科でそれをするにはゲームが一番なのである。
「楽しい授業」と「楽しいだけの授業」の違い
たとえば,漢字学習がしたい。どんな方法があるだろうか。
子どもに漢字を覚えさせようとする際,最初に漢字の意味や書き順などを教えた後に,ミニテストを行うことが効果的である。一定の数の漢字を覚えるためには,こうした学習法で漢字を定着させることが大事である。
漢字の読み書きは「基礎学習」であるので子どもも納得する。
しかしこうした漢字テストの学習だけでは,漢字についての興味・関心を育てることができない。確かに漢字を知っていることが大事なことはわかるけれども,単調な漢字ドリルの学習に手こずる子どもたちがいる。
そういう時に役に立つのが「学習ゲーム」である。先に示した「漢字探しの授業」を教室で行うことによって,ふだん漢字に関心を持てないでいる子どもたちも漢字に対して関心を持つためのきっかけが与えられる。
たとえば,先ほどの漢字ゲームの答えを列挙してみよう。
一,二,三,四,五(△),七,八,十
川,石,木,又,火,水,氷
巳,己,已,巴
卍
区,凶
汗,汁,江,…
全部で40個以上の漢字が出てくる。
こういう漢字探しの授業では協同学習でいう「課題明示」「個人思考」「集団思考」という学習の流れをとることでモチベーションが上がるだけではなく,こうした漢字のカタチについての知的好奇心が生まれてくる。
たとえば,「巳,己,已,巴」などのよく似た漢字。
これらの漢字を使った「已己巳己(いこみき)」という四字熟語がある。意味は,互いによく似ていること。よく似ていて見分けがつきにくいこと。「巳,己,已」の3つの漢字を使って四文字熟語というのも面白い。
ちなみに学生たちとやると「区」などの漢字に歓声が沸く。
「汗」が発表されると,ため息が漏れる。
漢字探しという1つのゲームから様々な漢字の面白さが発見できる。こういう知的発見を子どもたちは喜ぶだけでなく,漢字学習をする際の「小さな違いにも注意して書く」ための学びの重要な足場を作ることになる。
* *
学習というのは「これが大事である」として精選された内容を理解して,覚えるという側面が1つ。しかしもう1つの側面として,その学んだことを整理し,考えることや発信することに使うという大事な側面がある。
漢字テスト学習などは前者の力を伸ばすための方法論である。
一方,漢字ゲームは後者の力を伸ばす方法論と言える。
* *
授業で学習ゲームを使うと,とにかく楽しい。
しかし,楽しいだけでなく,楽しく大事なことが学べる。
ただし,効果的に使うには少々工夫が必要である。最近は学習ゲーム本が数多く出ている。本書がそれら類書と違うのは,その工夫を説明した点だ。
第1章では「学習ゲーム」を使う前提になる考え方を。
第2章では「学習ゲーム」の活用テクニックを。
第3章では「学習ゲーム」のネタ50と学びのしかけを。
これまで学習ゲームはよく使っているし,自分の授業の中に学習ゲームをうまく導入できているという方は,第3章だけ読んでもいいだろう。
定番の学習ゲームと共に少し珍しいゲームも紹介した。
しかしこれまで学習ゲームを授業に取り入れてはみたのだけど,いまひとつ使いこなせていないなと思う方は,第1章,第2章から読んでほしい。
きっと,なるほど,と気づく点が幾つかあるはずである。
2014年7月 /上條 晴夫
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- 明治図書
- 著者の豊富な知識が反映されている書籍である。2021/9/150代・大学勤務
- ちょっとした時間にゲームをしたり学習に関する遊びができる余裕をもつことは大切だと思うので、様々なネタを知るのによかったです。2016/3/1630代・小学校教員
- 自分が欲しい情報が詰め込まれていて満足しています2015/4/21