- まえがき
- 生徒の自己決定を目指すキャリア支援ロードマップ
- 教師の心構え
- Case1 生徒が本音で話してくれない
- Case2 行きすぎたアドバイスをしてしまう/生徒がついてこない
- Case3 ついつい口をはさんで否定したくなってしまう
- Case4 「いいじゃん!自分で決めなさい」で終わってしまう
- コラム 卒業生の声(1)/卒業生の声(2)
- やりたいことが定まらない生徒に
- Case5 自分はどうしたいかが分からない
- ワークシート 価値観チェックシート
- Case6 何に興味があるか分からない
- ワークシート 自分歴史シート/ライフラインチャート
- Case7 自分が何に向いているか分からない
- ワークシート 強み発見シート
- ワークシート ジョハリの窓シート
- Case8 将来,働いている姿がイメージできない
- ワークシート お仕事バイキング
- コラム 卒業生の声(3)
- Case9 興味があることが仕事にどうつながるか分からない
- ワークシート Will-Can-Needから将来像を言語化してみよう!
- どうやって決めたらいいか分からない生徒に
- Case10 選択肢から1つに決めきれない
- ワークシート 意思決定マトリクス
- コラム 卒業生の声(4)
- Case11 偏差値で大学を選ぶべきか悩む
- コラム 卒業生の声(5)
- Case12 自分の将来と向き合おうとしない
- ワークシート 3つの未来
- コラム 卒業生の声(6)
- Case13 アドバイスを聴けば聴くほど,分からなくなってくる
- ワークシート 自分軸を取り戻す10の思考実験
- コラム 卒業生の声(7)
- Case14 いろんなことをやりすぎて何が大切か見失っている
- 思い込みに気付けない生徒に
- Case15 「自分はダメだ」と思い込んでいる
- Case16 進みたい道が「現実的ではない」と言われる
- ワークシート 目標を実現するGROWモデル
- コラム 卒業生の声(8)
- Case17 なかなか一歩を踏み出せない
- Case18 偏った情報から進路を決めようとしている
- 生徒のピンチをチャンスに
- Case19 生徒の環境に思いがけない危機が訪れた
- Case20 保護者と生徒の意見が食い違っている
- あとがき
まえがき
本書では,キャリアコンサルタントになる上で学んだキャリア理論や心理学,そして現場での知見を踏まえて,主に以下の内容を読者の皆さんと共有していきます。
@高校生が進路を自己決定するための具体的な支援の方法
A生徒の中にある答えを引き出すための考え方や方法
「@高校生が進路を自己決定するための具体的な支援の方法」について,高校進学率が95%を迎えた現在の日本において,変化の激しい時代の中でも,すべての高校生に保障できるものは何か。それは,「自分で納得できる選択をする」という心構えと技術ではないでしょうか。神戸大学・西村和雄特命教授と同志社大学・八木匡教授は,国内2万人へのアンケートを行い「所得や学歴よりも『自己決定』が幸福度に強い影響を与えている」ことを明らかにしています。本書では,高校生と向き合う先生方が生徒の自己決定を支援するために,学校教育で日々活用できるキャリア理論や心理学の知見をシェアし,共に考えていきます。
「A生徒の中にある答えを引き出すための考え方や方法」について,先生の悩みとして「上級学校や就職のことはよく分からない」「生徒の人生の重大な決断に安易にアドバイスなんかできない」といったものがあります。もちろん,これらに詳しければ具体的なアドバイスはできるかもしれませんが,中途半端に知っていたり,昔の経験で語ってしまったりしては,知らぬうちに偏ったアドバイスをしてしまうことにもなりかねません。大切なことは,生徒に魚を与えるのではなく,魚の釣り方を教えるという視点,つまり,生徒自身が自分で自己決定をしていくためのスキルを身につけられるように支援することではないでしょうか。したがって,本書では以下の通りコーチングやカウンセリングの考え方を中心に,「生徒の中に答えがあり,答えを出すのも生徒である」という立場を取ります。アドバイスは絶対ダメという意味ではありません。しかし,特に「自己決定」については緊急時でない限り最優先にするという前提としています。また,個別具体的な出願戦略や,自己推薦書・面接対策の具体的方法については,各予備校からの情報や別書に譲ります。(図省略)
さらに,「自己決定」をしていく過程は,2022年度より高校でも必修化した総合的な探究の時間で生徒がつまずきがちなテーマ決めや,総合型選抜の大学入試における自己PRにもつながる内容です。
なお,キャリア教育という文言が日本の公的な場で初めて登場したのは1999年のことです。2011年の中央教育審議会・学習指導要領答申では,キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と定義しました。以来,多くの学校では「仕事を知る」「大学を知る」「自分を知る」といった内容を中心に,職業体験や大学訪問,自己理解学習をカリキュラム化していることでしょう。しかし,生徒一人ひとりの成長段階や悩みはまちまちです。40〜50名を受け持つ担任の先生にとっては,その一人ひとりに手厚く寄り添うことは難しく,事細かに状況を明確に捉えることも物理的な困難を伴います。そこで,少しでも進路面談の解像度を高めるべく,本書は進路面談を行う際にありがちな20のケースを取り上げ,それぞれのシチュエーションでどのような支援ができるかを検討したものです。解説にはキャリア理論・心理学の理論を援用し,高校生に寄り添う先生方に自信を持って支援にあたってもらえるように工夫しました。また,生徒の状況に応じて活用していただけるワークシートも添付しました。一気に読み進めていただいても結構ですし,実際に生徒の進路面談を行って壁にぶつかった際,関連するページからご覧いただいても大丈夫です。必要になったときに,ふと手に取っていただけたら,これ以上の喜びはありません。
2025年4月 /齋藤 亮次
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- 明治図書