- まえがき
- T章 小学校新教育課程運営の基本
- ◆§1 新しい教育課程運営を基礎付けるもの
- 1 義務教育の構造改革の四つの戦略
- 2 「確かな学力」の向上をめぐる施策の動き
- 3 学校評価を生かした教育課程の改善
- 4 教育基本法等の改正を踏まえる
- ◆§2 新しい教育課程運営の課題
- 1 教育課程の運営を経営目標に位置付ける
- 2 教育課程の編成について一層の工夫を進める
- 3 確かな学力の向上
- 4 人間性,社会性を育てる
- 5 カリキュラムの改善能力を高める
- 6 教育活動についての説明力と公開性を高める
- U章 学校教育の質の保証と教育課程運営の在り方
- ◆§1 目標の明確化,評価と検証に基づく教育課程運営
- 1 目標の明確化
- 2 教育課程実施の評価
- 3 教育課程運営の見直し
- ◆§2 学力調査の活用と教育課程の改善
- 1 全国的な学力調査の活用
- 2 各教育委員会による学力調査の活用
- 3 校内での学力調査の検討
- 4 学力調査の検討を生かした教育課程の改善
- ◆§3 学校評価システムを生かした教育課程の改善
- 1 学校評価のシステム
- 2 自己評価の活用と教育課程の改善
- 3 外部評価委員会による学校評価の活用
- ◆§4 教員評価,教員の資質向上と教育課程の改善
- 1 教員の資質能力と教育課程
- 2 教員評価の導入・進展
- 3 キャリアプランの作成と活用
- ◆§5 地域との連携を生かした学校改善
- 1 学校評議員会の活用
- 2 各種委員会等の活用
- 3 学校改善とお知らせ
- V章 新しい教育目標の実現を目指す教育課程の運営
- ◆§1 学習や生活の基盤作り
- 1 言葉を重視した教育活動の具体化
- 2 コミュニケーション能力の育成
- 3 体験を重視した教育活動の展開
- 4 学習意欲を高め,学習習慣を付けさせる教育活動
- ◆§2 確かな学力を育てる
- 1 人間力の向上と生きる力の育成
- 2 基礎的・基本的な知識,技能の確実な定着
- 3 知識や技能を活用する力の育成
- 4 自ら課題を追究し自ら考える力の育成
- ◆§3 児童の社会的自立を進める
- 1 健全な倫理観の涵養と主体的な判断力の育成
- 2 心身の健康の保持と増進
- 3 主体性・自律性を育む教育活動
- 4 特別支援教育の充実
- ◆§4 社会の変化への対応
- 1 ICTを活用した教育活動の展開
- 2 メディア・リテラシーの育成
- 3 環境教育の充実
- W章 教育内容の改善を踏まえた教育課程の運営
- ◆§1 国家・社会の形成者としての資質の育成
- 1 国家・社会の形成者としての資質の育成
- 2 豊かな人間性と感性の育成
- 3 健やかな体の育成
- ◆§2 国語力,理数教育,英語教育の展開
- 1 国語力を育てる教育活動の展開
- 2 理数教育の充実を目指す教育活動の展開
- 3 英語教育の充実を目指す教育活動の展開
- ◆§3 総合的な学習の時間の改善
- 1 総合的な学習の時間の課題と改善の具体化
- 2 現代的な教育課題への取り組み
- X章 教育課程の枠組みの改善
- ◆§1 授業時数,指導方法等の改善
- 1 授業日数,授業時数の確保と運用の具体化
- 2 基礎・基本の確実な定着と個に応じた指導
- 3 知識や技能を活用する力の育成と個に応じた指導
- ◆§2 発達や学年段階等に応じた教育課程の編成
- 1 学年段階に応じた教育課程の重点化
- 2 幼稚園との円滑な接続を図るための工夫
- 3 中学校との円滑な接続を図るための工夫
- 4 教科担任制の意義と活用
- ◆§3 学校週5日制下での学習機会の拡充
- 1 学校週5日制実施の趣旨と経過
- 2 児童の学習・生活と土曜日の効果的な活用
- 3 児童の学習・生活と長期休業日の効果的な活用
- 4 家庭や地域との連携改善
まえがき
本書は,教育改革の中に置かれている新教育課程の基本的な考え方やその運営について,学校教育をとりまく環境の変化等を踏まえて多角的に解説したものである。これまでの教育改革は,昭和60年にまとめられた臨時教育審議会答申で提起された方向性に基づいて実施されてきたといってよい。それは,個性化の原則,生涯学習社会への移行,変化への対応などを内容としたものであり,その後の教育課程政策にも具体化されてきた。この流れは,平成10年代以降の社会の構造改革の中で,次の時代に向けた新しい流れの中に置かれている。その主な内容は次のとおりである。
第一に義務教育の質の向上を目指す改革である。そのための方策として,目標達成型の政策手法が導入されつつある。国や地方自治体,学校ごとに達成目標を明確にし,創意工夫をこらした取り組みを通して,目標の達成状況を検証する仕組みの具体化である。学校評価の取り組みや全国的な学力調査の実施はこの方向に基づくものである。
第二は,学力政策における国際的な動向の影響である。特にOECD(経済協力開発機構)が提起する知識・技能の活用力やリテラシーを重視する方向性である。今後は,各学校の教育課程の運営においてもこの学力観を踏まえた取り組みが求められる。
第三は,教員の資質・能力の向上にかかわる施策の改善である。教員養成段階,採用段階,現職研修の段階にわたって新しい施策が実施されるとともに,教員評価を生かした一層の指導力向上が課題になる。
第四は,教育基本法及び関連する法律の改正に伴う地方教育行政及び学校教育の改革である。これらの法律の改正は,第二次世界大戦後の学校教育の基調の改正につながるものであり,教育内容・方法を含め今後の学校教育の在り方を方向付けるものとなっている。
本書ではこれらの改革の基調を踏まえ,次のような内容を中心に編集し,各学校における教育課程運営の手引きとなることをねらいとした。
第T章では,これからの教育課程運営を方向付ける諸条件を押さえるとともに,新教育課程運営の課題を6項目にわたって説明している。
第U章では,学校教育の質の保証にかかわる項目として,目標達成型の教育課程運営,学力調査の活用,学校評価システム,教員の指導力向上,家庭・地域の連携の五つを取り上げ,それぞれについて具体的に述べている。
第V章では,今後の教育課程の改善の内容を四つの観点から取り上げ,各学校における取り組みのポイントを解説している。特に教育課程運営の基盤となる言葉と体験の重視の具体化や,学力と社会的自立を総合的に育てる教育課程の運営について説明している。
第W章では,新教育課程の具体的な内容を取り上げ,教育課程上の位置付けや学習指導上の留意点等について述べている。国家・社会の形成者としての資質育成や人間性を育てる道徳教育の充実,国語教育,理数教育,外国語教育の充実を,どのように教育課程に具体化するのか,その基本的な考え方とポイントを整理している。
第X章では,教育課程の枠組みについて,授業時数の設定や指導方法の改善,発達段階や各学校段階間の連携の改善,学習機会活用の工夫について取り上げ,配慮事項等を整理している。
冒頭に述べたように我が国の学校教育は新しい改革の流れの中に置かれつつあるが,その正否は各学校における教育課程の編成と実施・評価にあるといってよい。その意味で本書が広く活用され,各学校における教育課程の改善を通して,児童生徒に豊かな学習と実り多い未来を提供するきっかけになれば幸いである。
平成19年5月 /工藤 文三
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- 明治図書