- はじめに
- T 調査研究型カリキュラムのデザイン
- /田中 博之
- 1 21世紀に調査研究がなぜ必要なのか
- 2 子どもを研究者にする総合的な学習
- 3 単元の基本モデルと典型的な活動
- 4 実践スキルの評価ポイント
- U 子どもを研究者にする総合的な学習
- ――そのために行う教師の支援とは /浅井 和行
- 1 子どもたちを研究者にしよう
- 2 学習者として育てる
- 3 研究者として育てるためのカリキュラム
- 4 学習活動の流れ(3つのE)
- 5 支援のポイント
- 6 調査研究型カリキュラムの評価を工夫する
- V リサーチの達人を育てる実践事例(小学校編)
- A 世界にアピール! ふるさと石田
- ――地域・情報 /森内 裕之
- 1 子どもたちにつけたい力
- 2 単元構想のアイデア
- 3 地域を生かす工夫
- 4 子どもたちの活動の流れ
- 5 評価とこれからの課題
- B 食から探ろう世界の文化
- ――国際・情報 /稲葉 弘和
- 1 単元の基本構想について
- 2 各単元の実践
- 3 最後に
- C クロメダカを絶滅の危機から守れ!
- ――環境・情報 /島木 浩次
- 1 子どもたちにつけたい力
- 2 単元構想のアイデア
- 3 地域を生かす工夫
- 4 子どもたちの調査活動の流れ
- 5 ビオトープづくり
- 6 調査結果の広報活動
- 7 実践を振り返って
- D 祭りに生きる
- ――郷土 /田中 千草
- 1 子どもたちにつけたい力
- 2 地域を生かす工夫
- 3 単元構想のアイデア
- 4 子どもたちの活動の流れ
- 5 学習を終えて
- W リサーチの達人を育てる実践事例(中学校編)
- A 2年生『アジアを実感しよう!』の取り組み
- ――国際 /東 秀和
- 1 生徒たちにつけたい力
- 2 単元構想のアイデア
- 3 地域を生かす工夫
- 4 生徒たちの学習の流れ
- 5 これからの課題
- B のりもの解体新書〜メカドックF〜
- ――科学技術 /糸山 常利
- 1 はじめに
- 2 子どもたちにつけたい力
- 3 単元構想のアイデア
- 4 地域を生かす工夫
- 5 子どもたちの活動の流れ
- 6 評価とこれからの課題
- C 富士山学習
- ――郷土 /小泉 幸伸
- 1 子どもたちにつけたい力
- 2 単元構想のアイデア
- 3 地域を生かす工夫
- 4 子どもたちの活動の流れ
- 5 評価方法
- 6 成果とこれからの課題
- X 実践事例の評価と課題
- /田中 博之
- 1 小学校コメント
- 2 中学校コメント
はじめに
人間の行動や意思決定にとって,リサーチは欠かせない。過去と現在についてのデータを収集・分析することによって初めて,未来の予測や次なる適切な行動の選択が可能になるのである。また,人間が働きかける対象の特性を十分に知って初めて,その対象との的確なインタラクションのあり方を考えることができるようになる。
このように人間が生きるためには,人間を取り巻く環境やそこに置かれた状況についての情報を得ることが,最も重要な基本的作業であると考えることができるのである。
リサーチ,つまり調査研究は,21世紀社会においても科学技術の発達のみならず,複雑な地球課題の解決や,多様な人間関係上の問題解決のために不可欠の知的活動であるといえるだろう。したがって,21世紀の学校教育においては,こうした重要性を持つ調査研究に関わる多様な資質・能力を育てることが大きな課題になっているのである。
そこで,第2巻では,本講座で提案している総合的な学習のカリキュラムデザインの中からまず「調査研究型カリキュラム」を選んで,その特徴を豊富な実践事例とともに考えてみることにしたい。
調査研究型のカリキュラムデザインを始めに選んだのは,まずこれが最もオーソドックスな課題解決的学習の方式だからである。総合的な学習においてであれば,調べ方や発表の仕方,さらには,活動内容の広がりが,一つの教科に収まらないほどの多様性を持つようになるが,多くの教科学習において,調査研究,つまり「しらべてまとめて伝える」ことは日常的に行われている。このように最もなじみのある学びのスタイルから総合的な学習のカリキュラムの特徴を探っていくことにしたい。
さて,本書の構成は次のようになっている。
調査研究型の総合的な学習は,子どもを研究者に見立てて,そのために必要な調査研究能力やプレゼンテーション能力を育てることをねらいとしている。
そこで,まず始めに,Tで,「調査研究型」の総合的な学習の特徴を,その社会的な必要性,子どもに育てたい力,単元モデル,典型的な単元アイデア,そして評価のあり方という5つのポイントから考えてみることにしたい。
次に,Uでは,もう少し具体的に,この「調査研究型」の特徴をとらえてみたい。著者の浅井和行先生は,すでに10年以上も前から,環境問題をテーマにした総合的な学習を試行して来られた。そのような豊富な実践経験に裏付けられた英知をまとめていただくことにした。
VとWでは,小学校と中学校における実践事例の報告をお願いすることにした。全国で,この「調査研究型」の総合的な学習を試行している優れた先生方に,執筆をお願いしている。例えば,地域自慢をリサーチしてコンピュータで発表する子どもたち,黒メダカを絶滅の危機から救うために,専門家とともに県内の生態調査をしたり,学校にビオトープを作って魚や昆虫を増やそうとしている子どもたちにも登場してもらった。ここからぜひ実践化に向けての豊かなアイデアを汲み取っていただければ幸いある。
最後にXでは,VとWの7つの実践事例について,編者のコメントをのせている。いくつかの実践を比較したり,実践報告には必ずしも書かれていないそれぞれの実践の特徴やメリットを,できるだけわかりやすく解説してみることにした。ここから,総合的な学習における授業づくりや,子どもを見る視点を読み取っていただければと願っている。
さて,編者をはじめこの18年間にわたって,常に新しいアイデアとたくましい実行力で,総合的な学習のカリキュラム開発の最前線を切り開いてくださった共同研究者の先生方に,深く感謝したいと思う。日本の子どもたちを幸せにして,子どもの教育を通して新しい日本の創造に貢献しているのは,まさに本書で実践事例を提案してくださった先生方なのである。
最後になったが,編者らのこのような真摯な取り組みに注目して,研究成果の公開をこのような全6巻という大きな講座で行うことを勧めてくださった明治図書企画開発部の江部満さんには,心から最大級の感謝の意をお伝えしたいと思う。
21世紀の学校改革が本講座から始まることを切に願っている。
編者 /田中 博之
-
- 明治図書