現場からの教育改革21の提言

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真の子どもの教育のため、学校・地域・家庭の連携を進めよ

教育改革は真に子どものためにあるべきもの。また、家庭や地域の教育力が弱体化している中で、学校教育の改革だけに力点が置かれてはならない。学校と家庭・地域が「子どもを思う愛」によって結ばれていくことを目指し、21の提言とした。


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ISBN:
978-4-18-109315-0
ジャンル:
学校経営
刊行:
2刷
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 200頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

教育改革への思い /仲井 豊
序 章 教育のベースキャンプは
/丸山 俊治 /小林 芳春
1 子どもたちの姿から見えてくるものは/ 2 教育は,何を大切とするか/ 3 「教育改革」の主語は
第一章 どこまでも向き合う心を(学校は)
1 授業の再構築-辞書を引く小学1年生深谷圭助
1 辞書を引く小学1年生/ 2 学びたがっている…その時を/ 3 子どもの事実から教育の再建を
2 基本の運動-心とからだを意識した動きづくり石黒恒子
1 心やからだをたがやす「基本の運動」/ 2 心やからだをたがやす「体操的手法」/ 3 心やからだをたがやす子ども/ 4 生き方の根源となる基本の徹底を
3 西端プロジェクトを動かす生徒たち角谷淳子
1 トライアルのテーマは「人」/ 2 2年がかりの「ハッピーNISHIBATAプロジェクト」/ 3 地域のためにできることは何だろう/ 4 地域を見る目が深まっていく
4 設楽原総合学習“合戦と農民”の軸足東郷東小学校
1 上級生へのあこがれを生む“合戦と農民”/ 2 古戦場の学校に生まれた表現運動/ 3 設楽原総合学習をとりまく10年/ 4 子どもの育ちを促す地域素材を見つける
5 教師の力量とは何か星野恵美子
1 教師の力量とは/ 2 教室の入り口/ 3 カルテは授業を生み出す
6 地域の多様な姿を受け止めて新城小学校・新城中学校
1 町の文化に学び感性を磨く“俳句ing大会”/ 2 生徒を“舞台”に見立てた「地域と学校の文化祭」/ 3 閉じればスパイラルの向きは逆に
7 学校と地域の三つのネットワーク岩瀬竜弥
1 豊かな人間性を育む三つのネットワーク/ 2 通い合う心を育てる子どもネットワーク/ 3 力量の向上をめざす教師ネットワーク / 4 ふるさとを実感した地域ネットワーク/ 5 「小中連携」から「教育の連携」へ
8 中学生にとって,何が“手だて”か中川克夫
1 成長の時代を生きる悩み/ 2 『見えるテスト』にみる「手だて」/ 3 『方法を添える』ことによる「手だて」/ 4 『積み上げる学習』による「手だて」/ 5 『私の居場所』を確保する「手だて」
9 山の学校の授業づくり,人づくり海老小学校・巴小学校
1 複式授業の悩みは強み/ 2 巴の体験,「ものづくり」は「人づくり」
10 もう一つの学校…数チャレ教室新城算数・数学懇話会
1 こんなチャレンジの場を/ 2 『数楽チャレンジ教室』の企画と歩み/ 3 問題の作成/ 4 体験コーナーの設置
11 中核市豊田の学校改革吉田允昭
1 10年間を見通した教育行政改革/ 2 中核市の教育委員会としての課題と仕事
コラム 「教育百年のひとこま」
第二章 人間としての根っこを(家庭・地域は)
12 野鳥への思いやりの心皿井 信
1 「♪兎追いし彼の山」の遊び場が,私の原点/ 2 「愛鳥」の言葉の罪の深さ/ 3 こだわりの「自然保護教育」,それは「野鳥保護教育」/ 4 家庭での「野鳥保護教育」の実践/ 5 地域(ふるさと)に学び,地域(ふるさと)を生かす学習活動/ 6 「♪山は青きふるさと,水は清きふるさと」であるように
13 画集「市電のある風景」誕生と街づくり伊奈彦定
1 心の原風景/ 2 田舎少年の心に応えてくれた“憧れの画家”たち/ 3 教育現場に生きたデザイン理念/ 4 家族三世代をつなぐ「市電」/ 5 路面電車を活かしたまちづくり
14 私たちの“美穂”の96日間滝川晃・尚子
15 飛び石を渡る子ら太田一平
・ぼく,元気でがんばっています/ ・こんな感じ前からほしかった/ ・寮の子
16 阪神大震災から学校再開まで久宝一郎
1 ある日,突然!/ 2 おにぎり2千食/ 3 避難所と学校の関係/ 4 学校の再開と再建
17 流氷の子が,海へ戻る日管野亜矢子
1 幼い日の印象/ 2 とっかりセンターの夢/ 3 アザラシとの距離
18 高度無菌室からの帰還加藤徳男・真紀
1 移植への決心/ 2 「大事に持って,帰ったよ!」/ 3 高度無菌室/ 4 「生着」,そして退院
19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室山本修二・伊丹リ生
1 「土曜子ども教室」でこだわったこと/ 2 “日本で一番美しい花”―ササユリ探訪教室/ 3 鉄砲の戦いの「設楽原古戦場」を歩く
20 走り抜いた90年-八ヶ岳山麓に生きる斎藤一郎
1 真原の丘へ/ 2 黒いタンスの祖母/ 3 開拓地の親子/ 4 第三走者
21 時代が,その良心を見せなければ「戦後の還暦」を考える会
1 還暦を迎えた“戦後”/ 2 「戦争の時代」の特別展/ 3 異色の出版「幼児向け絵本21冊」
あとがき /小林 芳春

教育改革への思い

   前愛知教育大学学長 /仲井 豊


 本書に記述されている内容の全体を通して共通しているものは,学校や施設・教育行政機関・病院あるいは地域や家庭などそれぞれの異なった場において,懸命に生きようとしている人々の姿,または生きてきた証がそのまま表現されていることであります。環境・境遇・条件・立場などはみな違っていますが,示されているものはすべて実践の歩みであり,それぞれの中に「人のひたすらに生きる」姿とその願いを読み取ることができます。

 人の暮らし方や生涯は様々であり当然異なっていますが,いずれもかけがえのない貴重なものであり,それぞれの価値を持っています。それだけに,今の時代,これからの時代を,いかに生きていくかが重要であります。その生き方や生きていくために必要な事柄を学ぶ,これを支えるのが教育であると考えます。

 「学ぶ」ことは個人が行うことでありますが,学校や家庭・地域あるいは広く社会とのつながりの中で,個がどのように存在し,育まれていくかを認識して学んでいかなければなりません。

 これからの時代を担う子どもたちの今置かれている状況は,必ずしも良好であるとはいえません。身近に起こる子どもたちの問題,虐待・いじめ・不登校・差別・犯罪など,深刻さを増しているように感じられます。

 子どもたちの問題は,わが国だけではなく世界に広がっており,それぞれの形で大きな課題をかかえ大変な時代を迎えております。たとえばユニセフによりますと,世界の子ども人口22億人の内,半数に近い10億人の子どもはその生存を脅かす貧困下で暮らしているといわれています。

 こうした子どもたちの問題のほとんどは,現代社会の歪みから生じているもののように思われます。原因や背景を作ってきたのは,大人社会であることは間違いありません。ことは,まさに大人の責任であるといえます。

 こうした状況をいかに変えていくかが,社会に課せられた課題であります。

 日本および世界の現実を直視する中で,今何が欠落したか,何を実行に移していくべきか,社会の課題として真剣に考え取り組まなければなりません。私たちは身の回りが少し落ち着いてくると,現象には目が行くが,とかく自分にかかわる問題ではないとして,急速にトーンダウンし,子どもをめぐる問題を取り上げなくなってしまいます。しかし,個々に起こっていることは,やがて社会の動きに波及し,わが身にも関係してくることはよくあることであります。

 本書に述べられている内容の中で,子どもから大人に向けて発信している重要な指摘がいくつかあります。子どもたちの見せる何気ない内面の姿,切ないほどの叫び,私たちは子どもから教えられることがたくさんあることに,もっと敏感に,もっと柔軟に気がつかねばなりません。

 教育に直接携わる者はもちろん,子どもの育つ地域社会の一員として大人がもっと子どもの声に耳を傾け,子どもと共に考え,行動する大切さを様々な立場から本書の事例が主張しているように思います。

 知識や経験豊富な大人は,子どもたちへの理解を深めつつ,社会で生きていくために必要な事柄,それは社会的自立の能力ともいえるものを,子どもたちに教え込まなければなりません。それらは,基礎学力であり自分のことができる生活力であり,また他者の存在を意識して人との協力ができ,ことの善悪が判断できる能力などであります。

 学ぶことは,楽しいことばかりではなく,苦しみを伴うものであります。こうしたことに耐え,困難を乗り越えていく術も教えていかねばなりません。これが大人の責務であると考えます。

 本書の第二章の提言は,こうした角度から事例が記述されています。実に多方面にわたる立場から,人としての根っこにあたるものをそれぞれの流儀で語ろうとしています。学校編とも言うべき第一章とは違った目で,教育のあり方を主張しているように思います。

 今日,国政レベルで教育改革が叫ばれ,未来を担う子どもたちを育てる理念や原則を定める重要な法律である教育基本法が改正されたり,教育再生の議論も盛んに行われています。

 この論議で最も注目したいことは,議論に直接かかわっている人たちが,教育現場の問題や課題をいかに認識し,これを基にした教育の本質にかかわる改革をどのように行っていこうとしているかであります。

 今後,多くの関連法や制度の見直しが本格化するものと思われます。それらが,教育現場の苦悩と乖離した政治主導の改正であってはならないと考えます。国や行政が,これまで以上に教育現場を尊重し,教師や多くの国民の声に率直に耳を傾けていく必要があることを痛感いたします。

 教育現場からも,積極的に声を上げていってほしいと願っております。

 教育改革は,真に子どものためにあるべき教育を打ち立てていくものでなくてはなりません。家庭や地域の教育力が弱体化しているといわれる中で,学校教育の改革だけに力点が置かれてはならないと考えます。本書のいくつかの実践が,学校と家庭・地域が「子どもを思う愛」によって結ばれていくことを目指しているのもこの点だと思います。

 本書の21の提言一つ一つがそうであるように,読者の皆様がそれぞれの立場でまた関係する方々との協力のもとに,それぞれの教育改革を進めていっていただくことを期待しております。


  平成19年3月

著者紹介

仲井 豊(なかい ゆたか)著書を検索»

愛知教育大学学長(1995〜2001),同教授(1975〜2001)

第19次日本南極地域観測隊隊員(1977)

現在 愛知教育大学同窓会会長,愛知教育大学名誉教授

鳳来寺山自然科学博物館学術委員

小林 芳春(こばやし よしはる)著書を検索»

愛知県新城市小中学校・愛知教育大学附属養護学校教員(1956〜1994)

新城市教育委員会教育長(1994〜2005)

現在 設楽原歴史資料館専門研究員

現場からの教育改革をすすめる会代表

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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