ICT活用で主体的・協働的な学びをつくる教育DX理論&実践ガイド

ICT活用で主体的・協働的な学びをつくる教育DX理論&実践ガイド

授業でも校務でも力を発揮できる新たな手法が身に付く

ICTによる新たな変化にも対応できる力が身に付くよう、本書では理論と実践を組み合わせながら、先進的な取り組みをわかりやすく解説していきます。小学校各教科に加え、情報教育やプログラミング、保育現場での実践も収録した10年先を見据えた1冊です。


紙版価格: 2,970円(税込)

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電子版予価: 2,673円(税込)

7/24刊行予定

ISBN:
978-4-18-109028-9
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
幼・小
仕様:
B5判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年5月16日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
本書のねらい
Chapter 1 教育の情報化とは
教育DX時代の学びの姿
教育の情報化の経緯
情報教育の推進
教科指導におけるICT活用
校務の情報化のねらい
Chapter 2 授業での教師のICT活用
教師のICT活用と情報端末
「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて
Chapter 3 授業での子供のICT活用
理論編
各教科等で目指すICT活用のポイント
実践編
1 国語 小学校1年 子どもをまもるどうぶつたち
教材のデータ化による自主的な学びと交流ツールとしての活用
2 国語 小学校2年 100年後の未来の商品をおすすめする「テレビショッピング」を放送しよう
撮影動画の比較による自身の変容の実感
3 国語 小学校6年 株主総会を開こう
ICTを活用した提案書の作成とプレゼンテーション
4 社会 小学校3年 事故や事件からくらしを守る
インタビュー動画の撮影とアンケート機能の活用
5 社会 小学校4年 水害からくらしを守る
動画資料やテレビ会議システムの活用や情報発信
6 社会 小学校6年 日本とつながりの深い国々
地図アプリの活用と共同編集機能によるグループでの調べ活動
7 算数 小学校1年 いろいろな形
カメラ機能を活用した撮影・発表(家庭学習との連携も可能)
8 算数 小学校2年 箱の形
チャットを活用した話し合いの活性化
9 算数 小学校5年 比べ方を考えよう〜割合〜
1人1台端末による効率的な作図と子供の状況把握
10 理科 小学校5年 流れる水のはたらき
インターネットによる調べ学習とクラウドを活用した分析,比較活動
11 理科 小学校6年 てこのはたらき
授業支援ソフトの機能を効果的に活用した理科学習におけるデジタルノート
12 理科 小学校6年 大地のつくりと変化
Googleスライドを活用したデジタル理科新聞づくり
13 生活 小学校1年 学校たんけんをしよう
学校たんけんを通したタブレット操作スキルの向上
14 生活 小学校1年 もうすぐ2年生
端末に保存した写真による成長の振り返りと気付きの共有
15 生活 小学校2年 とび出せ!町のたんけんたい
地図アプリを活用した町探検
16 音楽 小学校4年 旋律づくり「歌のにじ」
タブレット端末持ち帰りによる動画機能を活用したリコーダー習得
17 音楽 小学校6年 表現を工夫して歌おう「明日を信じて」
書き込み機能による楽譜への記入や意見の共有
18 図工 小学校2年 かぶって変身
ペイントソフトによるシミュレーションとデジタル作品集の作成
19 図工 小学校3年 さわってわくわく〜壁から飛び出す不思議な生き物〜
気付きの記録と振り返りによる表現の見直し
20 図工 小学校6年 ひびき合う形と色を求めて〜版で表す有終の美〜
学習履歴を相互評価してイメージに合う表し方を追求
21 家庭 小学校5年 整理整とん
カメラ機能やGoogleドキュメント,共有ドライブの活用
22 家庭 小学校6年 自分のペースで製作!得意な子も苦手な子も満足のナップザックづくり
授業はじめのアンケートフォームで知識や技能を定着
23 体育 小学校3年 器械運動〜鉄棒運動〜
体育授業における初めての端末活用の工夫
24 体育 小学校5年 ゲーム〜タグラグビー〜
デジタル版作戦ボードの活用による集団技能の向上
25 体育 小学校6年 器械運動〜マット運動,跳び箱運動〜
課題の提示や試技の撮影,学習カードの活用
26 体育 小学校6年 陸上運動〜走り高跳び〜「自己新記録を高めよう!」
撮影,デジタル学習カードの活用,感想の分析で「納得解」の形成を目指す
27 外国語活動 小学校3年 “What do you like?”(何がすき?)
インタビュー活動での活用によるねらいの達成と意欲の向上
28 外国語活動 小学校3年 “What’s this?”(これは何でしょう?)
プレゼンテーションソフトの活用とテレビ会議システムによるクイズ大会
29 外国語 小学校6年 “Let’s think about our food.”(オリジナルカレーを紹介しよう)
テレビ会議システムによるALTとのやり取りやインターネットによる検索活動
30 特別の教科 道徳 小学校6年 きまりを守るのは何のため?〜C 規則の尊重〜「星野君の二るい打」
ICTの活用による授業と家庭学習をつなぐ取組
31 特別の教科 道徳 小学校6年 命のかがやき〜生命の尊さ〜「命を見つめて」
アンケート機能の活用や意見の共有
32 特別の教科 道徳 小学校6年 誠実な心で〜A 正直,誠実〜「手品師」
意見の共有で思考の広がりや深まりを確認
33 特別活動 小学校6年 卒業タイムカプセルプロジェクト
8年後の「あなた」へ送る「わたし」のメッセージ動画
34 特別活動 小学校6年 動画日記で宝物を紹介しよう
動画の撮影と共有による家庭学習への意欲向上
Chapter 4 幼児教育・保育でのICT活用
実践編
1 幼稚園 年長児 折り紙製作「ハロウィン」を作ろう
タブレット端末に保存した画像によるイメージ共有と製作工程の録画
2 幼稚園 年長児 おにもびっくり!?わたしのパンツ
作品の画像共有でイメージの育成
3 幼稚園 年長児 知育ロボットを使って遊ぼう
遊びながらプログラミング的思考を体験
4 幼稚園年長児 小学校1年 しょうがくせいとつくろう!ひらがなひょう
交流を通したタブレットの活用
Chapter 5 情報教育・プログラミング教育でのICT活用
理論編
情報活用能力の育成
プログラミング教育の推進
情報モラル教育の推進
実践編
1 算数 小学校5年 正多角形と円〜プログラミング〜
2 理科 小学校6年 MESHを活用した効率のよい電気利用を考えるプログラミング学習
3 総合 小学校5年 久留米市のまちづくり〜メタバースの世界〜
4 朝活 小学校全学年 朝活動「ICTタイム」でスキルアップ
5 国語 小学校6年 ゲストのよさを引き出すトーク番組を放送しよう〜ろく子の部屋〜
6 国語 小学校3年 長崎県の友達と学校自慢動画を交換して,仲良くなろう
7 情報モラル 全学年 自分で自分を守るために
8 情報モラル 全学年 ネットでのコミュニケーションを考える
おわりに
執筆者一覧

はじめに

(1) 2050年代の学校はどうなっているか?

 2050年頃の日本はどうなっているのでしょうか。社会の変化が激しく,将来の予測が困難になっていますが,社会全体の変化について,さまざまな分析結果が出されています。例えば,国際連合広報センターが公表した「世界人口推計2019年版」では,「わずか十数年のうちに,地球上の人口は現在の77億人から約85億人に,さらに2050年までにほぼ100億人に達する見込み」であることを報告しています。一方で,日本やヨーロッパのように,人口減少がさらに進み,出生率の低下や高齢化の問題が更に深刻になる国も増加し,世界の二極化が進んでいくとしています。

 そんな2050年頃の日本の学校はどうなっているのでしょうか。今の形で存在しているのでしょうか。私は,教育方法を学ぶ大学の授業で,教師を目指す大学生に次のことを話してから授業を進めるようにしています。


  みなさんが教師となって活躍するであろう10年後に,学校での指導や学びは確実に変化しています。ですから,今までの指導法だけでは十分でありません。教育方法の授業では,10年後の授業に活かせるような新たな手法を自ら学び取ってほしい。


 これから教師を目指す大学生だけでなく,教師になって悩んでいる若手教師,これまで授業をやってきて行き詰まった教師にも,これまでの学校や教室,授業での「常識」にとらわれず,新しい発想や多様な考え方を取り入れて進めてほしいと思います。


(2) 今の教師に必要なのは「アンラーニング」

 アンラーニングとは,学習棄却と呼ばれていて,これまでのやり方や考え方を棄却して(捨てて),新しいやり方や考え方を取り入れることです。前述したように,これだけ変化が激しい社会の中で,学校だけが変化しないことはなく,常に変化していく学校の中で,古いものを捨てて,新しいものに置き換えるアンラーニングを教師が取り入れることが,今まさに求められています。このことは,授業を進めるだけでなく,校務を処理する上でも同様であり,教師の働き方改革にもつながることといえます。

 例えば,AI(人工知能)が急速に普及していて,産業界に止まらず,教育現場にも入ってきています。英文を日本語に翻訳するAI,チャット形式で対話しながら文章を生成するAI,長文を要約して要約文を作成するAIなど,多種多様なAIの活用が生活に溶け込んできています。学校において,教師がこれらのAIを使うべきか,また子供たちに使わせるべきかといった議論を耳にします。これからの学校では,教師や子供たちがAIを積極的かつ賢く活用して,指導や学びをさらに充実させていくことが重要であると考えています。しかし,現場の教師の中には,その一歩を踏み出せないでいる人が多いようです。新しいことに挑戦的に取り組んで,試行錯誤しながら,目の前にある壁を越えてほしいと考えています。


(3) アフターコロナでのニューノーマル

 新型コロナウイルス感染症によって,私たちの生活は大きく変化しました。また,新型コロナウイルス感染症の感染状況が落ち着き始めて,日常生活も戻りつつある中でも,従来の方法に戻さず,新たな方法を日常の習慣とすることも出てきています。例えば,会議をWeb会議で開催するようにして,テレワークが一般化して,働き方が変わってきている業種も見られます。まさに,アフターコロナでのニューノーマルといえます。アフターコロナでの学校はどうなっているのでしょうか。これまでの校務等を見直して,感染状況が落ち着いた後も,ペーパーレス化やWeb会議の活用を継続している学校も見られるようになりました。また,公立の小中学校では,1人1台の情報端末の導入期と重なったこともあり,家庭に情報端末を持ち帰って,子供主体の家庭学習の在り方を見直している地域や学校も見られ,学校でのニューノーマルを見いだしていくことが期待されます。


(4) 大学での学びの変化

 大学においても,ICT活用に関する学びは大きく変わってきています。現在,すべての大学生が身に付けるべきICTスキルは,従来からの文書作成や表計算,プレゼンテーションといった内容ではなく,数理・データサイエンス・AIの基礎などのこれから必要な力を確実に身に付けていくこととなっています。全国の大学生全員が,数理・データサイエンス・AIへの関心を高め,適切に理解し活用する基礎的な能力を身に付けていくよう,大学での情報教育の充実が進んでいるところです。

 さらに,教育学部の学生においては,教育の方法と技術からICT活用を取り出した「情報通信技術の活用の意義と理論」を学ぶことになっています。この科目では,ICT活用のスキルだけではなく,ICTを効果的に活用した学習指導や情報教育,校務の推進について理解し,基礎的な指導法を身に付けることになります。

 このように,これからの学校や教師は,確実に変化していきます。これからの学校や教師の変化に対応できるよう,授業や校務でどのようにICTを活用していくか,本書を通じて,理論と実践の両面からその在り方を考えてみたいと思います。


【参考文献】

 ・国際連合広報センターが公表した「世界人口推計2019年版」


  2024年1月   中村学園大学教育学部教授 /山本 朋弘

著者紹介

山本 朋弘(やまもと ともひろ)著書を検索»

中村学園大学教育学部教授

博士(情報科学)。東北大学大学院情報科学研究科を早期修了。鹿児島大学大学院教育学研究科准教授を経て,2021年から現職。文部科学省「教育の情報化に関する手引」検討委員,文部科学省ICT活用教育アドバイザー等,文部科学省の検討委員等を歴任。日本教育工学協会副会長,九州教育情報化研究会事務局長、日本教育工学会,日本教育メディア学会の編集委員。

堀田 龍也(ほりた たつや)著書を検索»

東北大学大学院教授,東京学芸大学大学院教授

東京学芸大学教育学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。東京都公立小学校教諭、富山大学教育学部助教授、静岡大学情報学部助教授、独立行政法人メディア教育開発センター准教授、玉川大学教職大学院教授、文部科学省参与等を経て、東北大学大学院情報科学研究科教授。東京学芸大学大学院教育学研究科教授、学長特別補佐を兼担。

中央教育審議会委員、デジタル学習基盤特別委員会委員長。

日本教育工学会会長。2011年文部科学大臣表彰。

清水 康敬(しみず やすたか)著書を検索»

東京工業大学名誉教授

東京工業大学工学部電気工学科卒業。工学博士。助手,助教授,教授。教育工学開発センター長,大学院社会理工学研究科長。

国立教育政策研究所教育研究情報センター長。独立行政法人メディア教育開発センター理事長。東京工業大学監事,学長相談役。中央教育審議会,著作権審議会,文部省,文部科学省,郵政省,総務省の委員長歴任。日本教育工学協会会長,日本教育工学会会長。電子情報通信学会業績賞,文部大臣賞。総務大臣表彰。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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