学校情報化のマネジメント―あなたの学校の[IT戦略]に欠かせない24の視点
校長・教頭・教委職員・PTA関係者のための

学校情報化のマネジメント―あなたの学校の[IT戦略]に欠かせない24の視点校長・教頭・教委職員・PTA関係者のための

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第一人者が、あなたの学校の子どもたちは「今必要なもの」を情報化によって得ることができますかと問いかけ、現実に抱える問題の解決ポイント示す。


復刊時予価: 2,563円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-103411-9
ジャンル:
学校経営
刊行:
3刷
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
Q1 「情報化」とは、どういうことを意味するのでしょうか?
Q2 学校教育は、「情報化」とどのように関わるのでしょうか?
Q3 「情報教育」「情報リテラシー」「メディア・リテラシー」「テクノロジカル・リテラシー」など、様々な用語が氾濫していますが、どのような意味なのでしょうか?
Q4 「将来パソコンはなくなる」というのは本当でしょうか?
Q5 学校にコンピュータやインターネットが導入されることによって「学校教育が変わる」と言われていますが、本当でしょうか?
Q6 学校にコンピュータやインターネットを導入する最大の「目的」は何なのでしょうか?
Q7 「コンピュータによる授業の『効率化』」などと言うと、反発されることが多いのですが?
Q8 「教員の意識改革」ということがよく言われますが、どうすればこれを実現できるのでしょうか?
Q9 カタカナやアルファベットが並ぶ専門用語はどうも苦手なのですが。
Q10 実は「デジタル」ということばの意味が分からないのですが、今さら人に聞けません。
Q11 「衛星通信」と「インターネット」は、仕組みや機能の点でどう違うのでしょうか?
Q12 コンピュータの利用方法と比べると、「インターネット」の活用は具体的なイメージが湧きにくいのですが?
Q13 教育用のハード・ソフト等の企業は、学校現場の「ニーズ」ということをあまり考えていないのではないでしょうか?
Q14 教育用のハード・ソフト等の企業は、学校や教員にとっての「コスト」ということをあまり考えていないのではないでしょうか?
Q15 各教科の授業で使える「ソフト」や「コンテンツ」を増やすには、どうしたらいいのでしょうか?Q16 コンピュータやインターネットの活用といわゆる「学力低下」との関係は、どう考えればいいのでしょうか?
Q17 コンピュータ等の活用と「総合的な学習の時間」はどのような関係になっているのでしょうか?
Q18 「情報化」の「影の部分」とはどういうことなのでしょうか?
Q19 コンピュータやインターネットの活用と「心の教育」との関係は、どう考えればいいのでしょうか?
Q20 情報化への対応やその促進について、「校内の体制」はどう考えればいいのでしょうか?
Q21 情報化をきっかけとして「学校外の人々との関わり」が増え、戸惑うことも多いのですが。
Q22 「教員の研修」については、どんなことに注意すればいいのでしょうか?
Q23 「著作権」や「肖像権」の問題が話題になることが多いのですが、どんなことに注意すればいいのでしょうか?
Q24 学校全体の戦略的な「スクール・マネジメント」という視点から見て、「情報化」への対応において注意すべき基本的なポイントは何でしょうか?
あなたの学校では、「何のため」「誰のため」に情報化を進めているのですか?
あなたの学校の子どもたちは、「今最も必要なもの」を情報化によって得ることができますか?
「誰かの個人的な理想」ではなく、先生方や子どもたちが「現実に抱える問題」の解決を目指していますか?

はじめに

 社会全体の「情報化」が急速に進む中で、「学校教育の情報化」ということも多くの人々の関心を集めていますが、情報化という概念が極めて広範で曖昧なものであるため、学校教育の情報化に関する議論は、混乱やすれ違いを招くことも多いようです。情報技術は、様々な「目的」のために「手段」として利用できる「便利な道具」ですが、その適切・効果的な活用を進めるためには、「目的」と「手段」を峻別した「マネジメント」が不可欠です。

 組織体のマネジメントとは、「選択と自己責任」の原則に基づき、長期的・短期的な「目的」を選択・設定し、その達成に向けて有効で効率的な「手段」を選択・実施し、その結果の「評価」を行って次の目標設定につなげていく、といったこと(いわゆる「plan」「do」「see」)を意味しますが、これはあらゆる組織体のすべての活動にとって不可欠なものです。

 こうしたマネジメントには、「全体」を対象とする「戦略レベルのマネジメント」と「部分」を対象とする「戦術レベルのマネジメント」がありますが、学校という組織体のマネジメントについては、前者に相当する「学校全体の方針」に関するものが「スクール・マネジメント」、後者に相当する「各学級や個々の授業の運営等」に関するものが「クラス・マネジメント」などと呼ばれることが、国際的には多いようです。

 本書は、「情報化」というテーマに関して、「戦略レベル」の「スクール・マネジメント」を行う上で重要な視点を解説したものですが、他の先進諸国の専門家やOECDなどの国際機関が「学校教育の質を決定づける『三要素』」と呼ぶもの(カリキュラム、教員の質、スクール・マネジメント)のうち「スクール・マネジメント」の重要性は、日本ではこれまであまり注目されず、校長先生の経験や個人的資質・人間的魅力などに頼る面が多かったとも言われています。

 これは、「スクール・マネジメント」の一環として各学校ごとに設定すべき「戦略レベルの目的・手段」というものが、「上から」(諸法令や学習指導要領、検定教科書、各種の財政措置などによって)与えられてきたためだ、と言う人もいるようです。しかし、一連の大綱化や規制緩和などにより、各学校が独自に設定できる(独自に設定しなければならない)「目的」や「手段」が極めて多くなってきており、「情報化」や「総合的な学習の時間」など様々なテーマについて、戦略レベルの「スクール・マネジメント」が不可欠になっています。具体的には、各学校が「自己責任」に基づく「選択」の結果として独自に策定する「トータル・プラン」といったものが、それぞれの課題について必要になっていると言えましょう。

 特に「情報化」という課題は、学校教育の多くの側面・活動と広く関係するため、こうした総合的な視点やプランが極めて重要ですが、目に見える形で整備が進むコンピュータなどを「授業でどう使うか?」といった「戦術レベル」の課題に目を奪われがちだったためか、学校教育の情報化に関する議論の多くは、「木を見て森を見ない」という傾向にあったようです。

 例えば、「校長自身がパソコンを使えないようでは…」などということがよく言われますが、マネジメントを行うタクシー会社の社長は、必ずしも運転免許を持っている必要はありません(ただし「社長の仕事」をする上で運転が必要な場合は別です。同様に、「校長の仕事」をする上でパソコンが必要な場合は別でしょう)。

 アメリカの一部には、「校長の仕事は『授業』ではなく学校全体の『マネジメント』である。また、『専門家』である教員への適切なマネジメントにはシビリアン・コントロール的な考え方が必要である。このため、教員経験者は校長になれないこととする」という制度をとっている地域があります。このような制度の当否は別として、戦略レベルの「スクール・マネジメント」を「独立した分野」と考える欧米の発想からは、学ぶべき点があると思われます。

 本書は、このような問題意識に基づき、「戦術レベル」の「木」の話ではなく、「戦略レベル」の「森」を対象とする「スクール・マネジメント」に不可欠な視点について、「Q&A」による解説を筆者個人の立場で試みたものです。本書が、校長・教頭・教委職員・PTA関係者など、学校情報化のスクール・マネジメントに関わる多くの方々にとり、少しでもお役に立つよう祈ります。


   /岡本 薫

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