総合的学習の開拓33
総合的学習を生かすマニュアル
調べ方・まとめ方・プレゼンテーションの仕方

総合的学習の開拓33総合的学習を生かすマニュアル調べ方・まとめ方・プレゼンテーションの仕方

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総合的学習を成功させるための調べ方、まとめ方、プレゼンテーションの仕方を中心に、情報収集活用能力、対人交渉能力、コミュニケーション能力、表現力などの育て方を解明


復刊時予価: 2,277円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-102116-5
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 120頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T 総合的な学習で「生きる力」と「豊かな心」を育む
1 総合的な学習と教科学習
2 問題解決的な学習の特徴
(1) 問題解決のプロセス
(2) 問題解決と知的機能
3 総合的な学習とコミュニケーション能力
(1) 討論や話し合いにおけるコミュニケーションスキル
(2) 社会的スキル
(3) 社会的スキルを育てるためのプログラム
(4) アサーティブ・コミュニケーション技法
(5) 社会的相互作用
(6) 情報活用能力
(7) モラルジレンマ資料を用いた情報倫理教育
(8) 安全に心がけ,マナーやルールを守った探究・体験活動
U 調べ方マニュアル
1 調べ学習について
2 公共図書館で調べる
3 電話,手紙による資料の収集
4 FAXによる資料の収集
5 Eメールによる資料の収集
6 役所,研究所,施設,会社などを訪問する
7 インターネットで調べる
8 学習マナーと諸届け
V 調査・体験活動マニュアル〈全体として特に注意すること〉
1 インタビューの場合
2 施設訪問・見学の場合
3 施設での実演・実習の場合
4 資料などを請求する場合
5 校外での観察の場合
6 校内での実験の場合
7 緊急時の対処の仕方
W まとめ方マニュアル
1 集めた資料の整理の例
2 一般的なレポートづくりの例
3 レポートを書くときの注意
4 「起承転結」に沿って,学んだことをまとめることもできます
5 レポートの書き方の例
6 図や表に表わす
X プレゼンテーション(発表)の仕方マニュアル
1 プレゼンテーションの道具
2 プレゼンテーションの手順
3 発表原稿を作る上で注意したいこと
4 発表のとき注意したいこと
5 プレゼンテーション技術を身につける

はじめに

 いよいよ「総合的な学習」がはじまる。移行期の今,さまざまな試みが日本の各地で行われている。町の書店にも,「総合的な学習」に関連する書物や雑誌がたくさん店頭に並ぶようになった。だが,「教科書」中心に教えてこられた先生方にとって,「総合的な学習」はいろいろとやっかいな問題をはらんでいる。それは,「揃える教育から違える教育へ」,「教える教育から育てる教育へ」,「知識注入型教授から創造的,問題解決型授業へ」,「教える側から子どもの側に立つ授業へ」,「教師中心主義から児童中心主義へ」,「机上学習から体験学習へ」というように,教育の内容や方法,評価の視点の変更を迫るものであり,教育観や授業観,学力観を大きく変えることを私たち教師に求めているからである。

 「総合的な学習」は,これまでの教育を真摯に反省した結果新しく出されたものであり,21世紀を拓くにふさわしい「生きる力」や「たくましく豊かな心」をもった人間の育成である。それは,質の高い学び,人間としてのあり方,生き方を身につけ,向上心をもち,自他の尊厳を等しく尊重する倫理観や価値観,豊かな感性をもち,グローバルな視点に立って社会参加し,自己の責任で問題を解決していける能力や資質を備えた自尊感情の高い日本人を育てるということである。

 しかしながら,この未来を拓く新しいタイプの「総合的な学習」に対して,それは学力低下をもたらし,「生きる力」の養成にならないという根強い批判がある。われわれは,学力低下の問題について,教育心理学の立場から,この「総合的な学習」を価値ある,意味ある学習とするための理論的検討を行った。また並行して五ヶ瀬中等教育学校が6年間の中高一貫教育として取り組んだ「総合学習−フォレストピア学習」を縦断的に,横断的に分析し,それが「生きる力」の育成にさまざまな効果をもたらしたことを明らかにした。われわれはこの4月に,それらをまとめて,明治図書から『総合的な学習で育てる知識・能力・態度―教育心理学による解明―』と題して出版した。

 今回この第二弾として,ここに「調べ方・まとめ方・プレゼンテーションの仕方」を上梓する。それは「総合的な学習」を具体的に進めていく上で重要,かつ基本的な力,たとえば,情報収集活用能力,対人交渉能力,コミュニケーション能力,表現力などが子どもたちに十分備わっていないためである。子どもの自主性,主体性に任せるといっても,何をどのようにしたら,自分で課題を見つけて,探究活動をし,どのように思考を展開して,検証しながら結論づけていくことができるのか,について,基本的な知識がなかったり,何もわかっていなかったりするのであれば,たちまち子どもたちは暗礁に乗り上げ,実のある学習活動は期待できなくなり,ひいては「総合的な学習」のねらいを達成することができなくなってしまう。

 本書では,この「総合的な学習」を各学校で実行していく際に,子どもたちが自らの課題を見つけ,問題解決のプロセスに沿って,事実を集めたりがむずかしいので,作業する中で,仮説を立て,何度も繰り返し検討し,答えを探し,全体としてまとめ,最後に発表するという一連の問題解決,探究の過程を具体的に支援する手だてやプラン,指導技術を整備し,「学習の手引き」,「学習マニュアル」の形としてまとめ,子どもたちの側に置いて,必要に応じて使えるようなものとした。

 ここで提示している「調べ方」「調査・体験活動」「まとめ方」「プレゼンテーション(発表)の仕方」は一般的で,基本的なパターンを表したものである。多くは子どもの探究活動に直接関わっている。しかし,連想法による資料の整理,認知・概念地図法などのように,内容によっては,教師の教材理解や指導観を知る助けとなるものがある。他にも視点を変えれば教師の指導技術に役立つものがある。マニュアルの柔軟で,創造的な活用をお願いしたい。

 当然のことと考えられるが,学校の方針や指導の先生の方針によって,あるいは利用を考えている学年によっては,順序を入れ替えたり,付け加えたり,文言を工夫したり,省くものがあってよいだろう。ただ,よりよい人間関係を保つための「マナー」,図書館のようなみんなが使う場での「学習マナー」,インターネット上でのマナー「ネチケット」,著作権のような人権の問題などは,ぜひ子どもたちに問題提起し,考えさせ,マナーは人間として大切な習慣であることを自覚した上で定着させていただきたい。もちろん先生方もこれらについて十分な知識をもって指導に当たっていただければと考えている。

 本書の出版が「総合的な学習」の実践に少しでも貢献でき,「生きる力」の育成に向けた教育実践のお役に立つことができれば,幸せなことである。

 執筆に際して,院生の伊藤昭治さんには読み合せや校正で大変お世話になった。お礼申し上げます。

 最後に,江部 満さんには,いつもながら本書の企画から刊行に至るまでお世話いただくとともに,貴重な助言を数多くいただきました。ここに記して,衷心よりお礼と感謝を申し上げます。ありがとうございました。


  2001年5月16日 30回目の結婚記念日に

   兵庫教育大学教授・同附属中学校長 教育方法講座 /荒木 紀幸

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      明治図書

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