“子どもの小さな事実”に感動して始まった新学校づくりの記
フツーの女教師がつくった変革ドラマ

“子どもの小さな事実”に感動して始まった新学校づくりの記フツーの女教師がつくった変革ドラマ

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名門とは言えない学校で、フツーの教師が「自分たちでもやれば出来る!」という、子どもへの手応えから始まった学校変革のドラマ。


復刊時予価: 3,190円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-101519-X
ジャンル:
学校経営
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 248頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
向山の授業理論と教育の志 /向山 洋一
T部 新学校づくりの記
1 東小へ
2 それは清掃から始まった
3 介入授業をする
4 新たな試み
5 削る
6 再編する
7 胎動
8 短縮
9 壁
10 達成率
11 変動
12 追い風
13 豪雪
14 教育課程の編成
15 最終段階
16 教師の成長
17 最後の研修会
18 最後の研修会(追補)
U部 東小の女教師
1 生徒指導の鬼才・松尾典子
2 算数授業の改革者・渡辺松子
3 自己改革に挑む増田美和子と藤崎久美子
4 病と戦いながら使命に燃える
5 育児をしながらの教師修業
V部 女教師の証言
1 大森校長の力強いリーダーシップが学校を変えた /渡辺 松子
2 学校は研修道場 /鈴木 淳子
3 ジェットコースター気分 /増田 美和子
4 ロングラブレターただいま漂流中 /藤崎 久美子
W部 ドキュメント東小
1 新世紀はじめの職員会議
2 リスクマネジメント
3 有終の美
4 リスク
5 入学式顛末記
6 授業研究を改革する
7 殺傷事件の教訓
8 氷がやってきた
9 二学期始めの職員会議
10 第三回「食」の集い
11 忘年会は末席
12 新教育課程の詰めをする
あとがき

まえがき

 斎藤喜博の名著『学校づくりの記』は、学校をつくるということは何をどのようにすることなのかを示唆する。

 しかし、である。

 斎藤喜博が島小の学校づくりをした時代と現在ではあまりにも大きな時代差がある。

 校長の役割が大きく異ならざるを得ない状況があるのである。一番大きな違いは、マネジメントである。

 マネジメントのできない校長は学校づくりができないのである。ここで言うマネジメントとは、学校づくりの戦略と戦術のことである。校長には、経営者としてのそれが必要不可欠である。

 大方の校長は、「まかせる」という美辞麗句のもとで、自らの学校経営戦略を示せないでいる。ボトムアップという名目のもとで何もしないでいる。

 つまりは、学校がどのような状態にあるかを知らないでいる。いや、知っているつもりでいる。「つもり」でいるから、「あれは、あれ。これは、これ」なのである。あれとこれが矛盾していることに気がつかないでいる。

 マネジメントの必要性が斎藤喜博の時代と大きく異なっている理由の一つに、「責任」がある。あらゆることに学校の責任が問われる時代である。あらゆる教育活動に危機管理が必要な理由がこれである。危機管理は、子どもが安全に学習活動をすることを保障するための仕組みである。この仕組みがなければ、教育活動はできない。無作為の責任が問われるからである。

 学校は斎藤喜博の時代とは比較にならないほど世間との乖離が大きくなってしまった。世間に遅れたのである。斎藤の時代は、学校は文化的にも地域の中心であった。しかし、現在では、学校は遅れに遅れ、「学校の常識は世間の非常識」とまで言われている。

 このような事態は、個々の学校の問題ではないことを示している。教育が制度疲労を起こしていることを示している。このことに気がついた文部科学省は教育の構造改革を始める。

 しかし、である。

 改革は、まだら模様で進行せざるを得ない。財政が切迫しているからである。抵抗勢力の抵抗も無視できないからである。

 このような時代の学校づくりには、大変な困難が伴う。

 抵抗勢力はさまざまにあり得る。

 保護者である場合。地域である場合。教育委員会である場合。職員である場合。

 これらすべてが抵抗勢力である場合もあるのである。いずれが、抵抗勢力であるかで、学校づくりの戦術と戦略も違ってこざるを得ない。

 斎藤喜博は保護者と地域と教育委員会を相手にして戦ったのである。並の校長にできることではない。

 斎藤喜博の授業論、教育論、学校論、教師論は、戦いの中で作られていったのではないかと思われる節がある。とりわけ、学校づくり論にはこうした色彩が色濃く出ているように思う。

 村松東小学校の学校づくりは、斎藤と同じように学校をきれいにすることから始まる。そして、仕組みを再編することへと移り、職員研修のあり方へと続く。そして、「村松東の教育」をつくりあげる。つまりは、学校を近代的な仕組みにつくりかえることで、職員の行動様式や考えを変えようとしたのである。

 斎藤喜博の学校づくりでも女性教師が大きな役割を果たしたが、村松東小学校でも大きな役割を果たしたのは、女教師であった。まさに、「女教師がつくった学校」である。

 本書『 子どもの小さな事実=@に感動して始まった・新学校づくりの記』は、日本がバブル崩壊から立ち直るために悪戦苦闘をしている時期に、新しい学校づくりに取り組んだ田舎の学校の教師集団の物語である。

 斎藤喜博の島小学校から半世紀を経た時代の学校づくりの物語である。

 それぞれの学校がそれぞれの学校づくりの記を生み出すことに参考になるとすれば、幸甚である。

 最後に、このような田舎の学校の物語をこのような形にしていただいた明治図書樋口雅子編集長に感謝を申しあげる。


  平成十四年七月   /大森 修

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