p4cの授業デザイン
共に考える探究と対話の時間のつくり方

p4cの授業デザイン共に考える探究と対話の時間のつくり方

新刊

p4cを生かして授業を主体的にする!

子どもが円座になり、疑問を出し合い、対話をして考えを深めていく教育であるp4c。様々な場面でp4cを授業に生かすことで、子ども自身が自ら問いを立て、仲間と話し合い、思考を深めていくようになります。p4cの研究を深めてきた著者が、理論と実践を紹介。


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ISBN:
978-4-18-100823-9
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 176頁
状態:
在庫あり
出荷:
2020年3月31日
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もくじ

もくじの詳細表示

はじめに
Part1 p4cとはどのような教育か
第1章 探究心を育むp4cの教育
1 探究の対話「p4c」への関心
2 p4cの礎となる3つの考え方
3 子どもたちはp4cをどのように捉えているか
第2章 基本メソッドとツール
1 p4cの基本プロセス
対話のフォーメーション
対話を始める前にルールを確認
2 コミュニティボールのつくり方・使い方
コミュニティボールのつくり方
コミュニティボールをつくるときのポイント
コミュニティボールの働き
コミュニティボールの起源
3 対話の場の「セーフティ」を育む
多彩な声を分かち合う対話
「知的安全性・セーフティ」とは?
セーフティを育むためのステップ
教師のセーフティ
4 子どもの問いから対話を始める
問いづくりの2つの方法
対話の問いを選ぶまでの流れ
問いづくりのポイント
5 深く考えるためのツール
深く考えるためのツールの使い方
ツールを活用する
6 ファシリテーションのための魔法のことば
ファシリテーションに必要な声かけ
ファシリテーションのためのフレーズを考える
魔法のことばをみんなでつくろう
ハワイの学校で使われている魔法のことば
7 対話の評価
評価のやり方
評価の問いの例
評価の理由を聞き改善点を探る
8 対話の前のウォームアップ
ボールに慣れるためのエクササイズ「スピードボール」
対話を始める前のひとこと自己紹介
考えるスイッチを入れるための質問ゲーム
9 ワークシート
10 教室づくり
探究モードに切り替える工夫
ハワイの学校の教室づくり
11 Q&A
第3章 p4cを生かした授業デザイン
1 基本的な考え方
2 特別の教科 道徳
「特別の教科 道徳」授業デザインの例
道徳にp4cを生かす授業デザインのための心構え
3 理科
メソッドのアレンジ
「理科」授業デザインの例
4 社会科
「社会科」授業デザインの例
カリキュラム・マネジメントとp4c
5 国語科
「国語科」授業デザインの例
Part2 p4cの理解を深める
第4章 p4cは「問い」から始まる
1 世界は不思議に満ちていた…
2 philosophyとは
3 問いから始まる探究
4 探究にふさわしい問いとは?
第5章 探究のコミュニティを育む
1 他者と共に考える―対話からの学び
2 サスペンド:異なる見方に心を開く
3 探究のコミュニティとは?
4 批判から共同の問いを生む
5 世界を捉える「フレーム」を外す思考の旅へ
Part3 p4cに取り組む学校教育の現場
第6章 ハワイのp4cスクール
1 思慮深さの育成を目指すワイキキスクール
レアヒの麓の学校
心の習慣
ハワイ大学との連携によるp4cの導入
子どもたちの変化がエビデンス
2 人種問題と向き合うカイルア高校の教育
カイルア地域の特徴
校内暴力の問題と対峙するエスニック・スタディーズ
p4cを基盤とした国語科の教育
「哲学探究」という社会科の新しいアプローチ
高校全体のカリキュラムへの「哲学」の浸透
第7章 日本の教育現場にp4cを取り入れる
1 地域でのp4c展開を目指して
2 p4cみやぎの発展の経緯
3 仙台市で始まったp4cの勉強会
4 p4cを経験した子どもたちの声
5 理科の授業でp4cを体験して
6 実践を支えるしくみづくり
おわりに
参考文献

はじめに

 私たちはp4cに出会って変わりました。誰かの気持ちになってみる。どうして?という疑問をもつ。自分の考えを自分の言葉で伝えるということができるようになり,世界の見え方が変わりました。だから,もっとたくさんの人にp4cを知ってもらいたいです。

   仙台市立八本松小学校6年生


 p4c(ピー・フォー・シー)という教育があります。対話を通して哲学的に問い深めていく「philosophy for children子どもの哲学」という取り組みです。英語の名称の頭文字をとって,p4cと呼んでいます(4はforを遊び心豊かに読み替えたものです)。

 p4cという教育の手法は極めてシンプルです。円座になり,疑問を出し合い,その中から1つ選んでみんなで考える……基本のフレームは,とてもわかりやすいものです。p4cは,対話を通して共に考える学びの時間です。特別な教材やテクノロジーは必要ありません。シンプルな手法ゆえに,学級づくりや教科指導のさまざまな場面で生かすことができます。

 はじめてp4cの実践を見た人は,これまでにも教育現場で盛んに行われてきた「話し合い活動」のように捉えるかもしれません。特に目新しい教育ではないと判断する人も少なくないでしょう。

 しかしながら,この教育は,子どもたちのポテンシャルを,これまでのオーソドックスな学校教育とは異なる視点で捉え直し,新たな学びの可能性を模索する試みでもあります。例えば,p4cのユニークなアプローチとして,次の3つのポイントを挙げることができます。

 第一に,「教師が問いを出し,子どもたちが答える」というのが従来の授業の形式だとしたら,これまで教師が担っていた「問う」という役割を,子どもたちにも広げていこうとしています。なぜなら,考えるという行為は,問いを抱くことによって活性化されるからです。p4cでは,子どもたちのワンダー,すなわち物事を不思議に思う気持ちこそが探究の原動力になると捉えています。自分の疑問に目を向けることが,主体的な学びにつながると考えています。「問題に答えること」に終始する学習では,子どもたちの探究力を十分に引き出すことができないのではないかという問題認識のもと,「問う」という行為の価値を再認識して,学びの質的転換を図ろうとしています。

 第二に,p4cでは,多様性を最大限に生かした学びを追求しています。学校とは本来,多彩な個性・感性が集う場です。同じ授業を受けても,疑問に思うこと,興味を引かれることは,人によって異なります。人それぞれ視点が違うわけです。その違いを共有することで,物事の見方を広げ,理解を深めるきっかけを生み出すことができます。画一的な教育では,学ぶ過程に視点の多様性が生かされることはほとんどなく,また,学習の到達点も1つに収束しがちでした。関心も,深め方も,到達点も多様であることを許容しつつ,共に考える学びの場をつくることが,p4cの目標です。

 第三に,学ぶ場をつくる役割を,子どもたちに積極的に委ねていこうとしています。例えば,騒がしいとき,話しづらいとき,わかりづらいときなど,これまでは教師が中心となって学級や授業のマネジメントをしていましたが,p4cでは,子どもたちも共に対話の場づくりに参加します。対話の流れを子どもたちが決めるというだけでなく,対話にふさわしい場を自分たちで試行錯誤しながら育んでいく。そうした経験を通して,子どもたちは学びのオーナーシップを獲得していくことができるはずです。

 もちろん「多様性の尊重」や「主体性の追求」は,教育現場においてこれまでも必要だとされてきたことです。必ずしも新しい目標ではありません。ただし,十分に実現できているかというと,疑問が残ります。画一的な教育の問題点は,これまでに幾度も指摘されてきました。「個性を伸ばす教育を!」という声は頻繁に聞こえてきます。批判的思考力や協同問題解決能力を育むことの重要性は,OECDによる生徒の学習到達度調査(PISA)の普及により,国際的に議論されるようになりました(シュライヒャー 2019)。日本の学習指導要領のなかでも,教師から子どもへの一方通行的な教育を改める試みが推奨されています。「主体的・対話的で深い学び」という目標はまさに,従来型の授業の問題点を踏まえて教育の質的転換を求めるものです。

 教育をもっとクリエイティブに変えていこうという流れは着実に大きくなっています。教育政策は変化していますし,オルタナティブ教育の事例も蓄積され始めています。ただし,抜本的な改革が教育現場で急速に進むというわけではありません。教育改革とは,古い船を捨てて新しい船に乗り換えるというよりも,航海を続けながら,船を修理し続けるようなものです。既存の教育システムを土台として,新しい考え方や手法をどのように生かしていくかということが,私たち教育者に課せられた挑戦です。

 そうした状況のなか,p4cは1つの大きな可能性を与えてくれます。そのように述べる理由は,次の2つの特徴によります。第一に,先ほども述べましたが,p4cの手法はとてもシンプルであるため,さまざまな場面で応用可能だからです。この教育を取り入れてみたいと思ったら,明日から実践することができます。第二に,子どもたちの多彩な個性・感性を学びの原動力に変える工夫がp4cの手法やツールにつまっていて,工夫を部分的に授業に生かすことができるからです。現行の教育の枠組みを抜本的に変えなくても,p4cの要素をカリキュラムに散りばめることで,子どもたちの個性を生かした主体的な探究を支援することができます。

 とはいえ,p4cは小手先の教育対策ではありません。やり方はシンプルですが,その土台にある考え方の理解を深めていくことが重要です。そこで,本書では,p4cという教育の根底にある思想を紐解くとともに,日本の教育現場で生かす具体的な方法を示すことを目指しました。

 p4cという教育の原型をつくり,初等中等教育の現場に普及させたのは,アメリカの哲学者,マシュー・リップマンです。彼は1970年代前半から,哲学対話をベースにした教育の開発に取り組みました。学校教育において「考える力の育成」が必ずしも重視されていないということ,「考える」ことそのものに焦点をあてた教育が発展途上だということを認識し,哲学対話による教授法を構築しました。リップマンの提案は,思考力育成への関心が高まっていたこともあって,世界のさまざまな国に伝わり,それぞれの地域の社会的・文化的背景の影響を受けながら,多様な形へと発展していきました(土屋 2019,高橋・本間 2018,豊田 2017など)。

 本書では,この教育の実践拠点の1つであるハワイで発展したp4cに焦点をあて,理論と手法を紹介します。私は,ハワイ大学の大学院生だった2004年に,トーマス・ジャクソン教授と出会い,p4cを学びました。はじめて対話を見たとき,子どもだけでなくあらゆる世代の人にとって大切な学びが宿っている,社会で生きる私たちに必要なことがつまっていると感じました。思考力の育成だけではなく,共に考えるコミュニティを育むうえで不可欠な他者へのケアや自尊心の深まりについても深い洞察を与えてくれるのが,ハワイスタイルのp4cです。

 私は,2006年に帰国後,p4cを日本の学校に紹介する活動を始めました。なぜ日本の子どもたちにも必要な学びだと考えるのか,現行のカリキュラムのなかで生かすことは可能なのかなど,教師との議論を積み重ねた結果,実践の輪は少しずつ広がり,現在は,宮城県,新潟県,兵庫県など,さまざまな地域の学校との協働が進んでいます。日本の教育現場で蓄積された声も,本書を通じて広く伝えたいと思っています。

 本書は,三部で構成されています。第一部では,p4cがどのような方針にもとづく教育なのか,基本的な考え方を示し,日本の教育現場で展開する際に参考となるフレームを提示しました。第二部では,p4cの理解を深めるために,「問い」と「コミュニティ」という観点からこの教育の特徴,欠かせないポイントを掘り下げました。第三部では,p4cが教育現場でどのように生かされているのか,ハワイと宮城県の事例を紹介しています。

 子どもたちの多彩なワンダーがひらき,思考が豊かに広がる探究を,本書によって支援することができたら,著者として大きな喜びです。

著者紹介

豊田 光世(とよだ みつよ)著書を検索»

1975年生まれ。新潟大学佐渡自然共生科学センター准教授。博士(学術)。兵庫県立大学環境人間学部講師,東京工業大学グローバルリーダー教育院特任准教授を経て,2015年9月より現職。

ハワイ大学マノア校の哲学部修士課程に在籍していた2004年,p4cと出会う。以後,日本の教育現場や地域社会において豊かな対話と探究を展開するための教育実践と研究に従事。2013年から宮城教育大学との連携で,宮城県内の学校でp4cを生かした公教育のモデルづくりを展開。宮城県での成果をもとに,新潟県佐渡市,兵庫県姫路市などでもp4cの可能性を追求している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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