- はじめに
- 1章 外国人児童生徒の受け入れ体制の準備
- 1 受け入れから指導までの流れを知ろう
- 1 日本語を教えるだけじゃない!外国人児童生徒の指導
- 2 7種類の指導内容とは?
- 適応指導,初期指導型日本語指導/教科指導型日本語指導/教科指導,生徒指導,進路指導/母語・母文化指導
- 2 学級担任とそれ以外の指導者の役割を知ろう
- 1 担任一人で抱え込まないでOK!役割分担が大切
- 2 教員の役割とは?
- 学級担任や教科担任の役割/日本語指導担当教員の役割
- 3 外部支援者の役割とは?
- 日本語指導員の役割/母語支援員の役割/学習支援員,ボランティアなどの役割
- 3 編・転入学の手続きをしよう
- 1 慌てず確認!転入届と就学手続きの流れ
- 2 編入学年の決定によくある悩みと注意点
- 4 利用できる指導支援サービスを知ろう
- 1 学級担任の不安を払拭する指導支援サービス
- 2 外国人家庭をサポートする生活・子育ての支援サービス
- 3 外国人児童生徒の就学にかかわる支援サービス
- 4 就学後に利用できる多種多様な支援サービス
- 5 子どもの成育状況や言語力を把握しよう
- 1 最初が肝心!就学ガイダンスの役割と「個人カルテ」
- 2 就学ガイダンスで聞き取る内容
- 6 指導資料や教材類の準備をしよう43
- 1 指導記録簿でわかる学習と成長の道筋
- 日々の学習内容や進度等を記録/ある期間での達成状況(日本語力の伸び)を記録/日本語指導教室と在籍学級との連絡事項を記録
- 2 市販教材とオリジナル教材の併用
- 2章 外国人保護者との信頼関係づくり
- 1 出身国の教育制度や学校文化を理解しよう
- 1 外国人保護者とのトラブルの原因
- 文化や価値観が違う/保護者に理解してもらうための説明が不足している
- 2 外国人保護者の理解が得られる効果的な説明とは?
- 2 日本の教育制度や学校文化について説明しよう
- 1 日本の学校教育制度の特徴とは?
- 2 日本の学校生活や学校文化の特徴とは?
- 3 日本の学校行事について説明しよう
- 1 早めに伝えて不安を払拭!主な学校行事と留意点
- 2 行事にあたって配慮すべきことは?
- 「服装」にからむトラブル/「校外で行うこと」についての不安/「休日に行うこと」への戸惑い/外国へ行く場合
- 4 教育関係費用について説明しよう
- 1 国によって違いが大きい!教育活動にかかわる費用
- 2 無償?有償?教育活動に必要な持ち物
- 3 教育活動に必要なお金はより丁寧に説明
- 4 支払いが難しい場合の支援制度
- 5 進学や就職のための準備情報を提供しよう
- 1 進学・就職準備は小学校高学年から
- 2 将来へのイメージを膨らませる進路ガイダンス
- 3 丁寧に説明したいところ(進学の場合)
- 「落第」がない/入学試験がある/入学時に多額の出費がある
- 4 丁寧に説明したいところ(就職の場合)
- 就労可能な在留資格が必要/外国人が就けない職がある
- 3章 外国人児童生徒の心の理解と学級づくり
- 1 日本の学校生活やルールを伝えよう
- 1 4種類の学校生活上のルールとは?
- 一日のスケジュールに関するルール/特別教室や設備などの使用に関するルール/登下校に関するルール/学級での生活に関するルール
- 2 不安を取り除き自己肯定感を育もう
- 1 「できないことだらけ」「低い期待」が成長の機会を奪う
- 2 安心感がもてる居場所づくり
- 学校の中に居場所をつくる/学級の中に居場所をつくる/社会の中に居場所をつくる/家庭の中に居場所をつくる
- 3 外国人児童生徒の家族のサポート
- 3 学習意欲と学力の向上を支援しよう
- 1 外国人児童生徒の「成績が伸びない」原因
- 学習言語力が身についていない/未習内容や未定着内容がある/母国で習った方法と日本で習う方法が異なる/「見た目の」日本語力で評価される
- 2 自ら頑張ろうとする意欲を引き出す支援とは?
- 4 異文化への寛容な態度を育む学級づくりをしよう
- 1 長続きしない「歓迎ムード」,何が原因?
- 2 「△△人」から「○○さん」へ
- 3 子ども同士のコミュニケーションを支援
- 4 異文化理解の取り組みにおける留意点
- 外国人児童生徒の思いは?/子どもたちの日常の疑問や違和感に応えられている?
- 4章 外国人児童生徒に配慮した授業づくり
- 1 子どもの個性や課題に応じた指導をしよう
- 1 大人とは違う!外国人児童生徒への日本語指導
- 2 指導にあたって確認しておくことは?
- 児童生徒と保護者の母語,家族の文化的背景/児童生徒の日本語習得状況/児童生徒の来日時期と滞在予定期間
- 2 「日本語で学ぶ力」を育てよう
- 1 教科指導型日本語指導とは?
- 2 教科指導と教科指導型日本語指導の違いとは?
- 3 学習活動に参加するための3種類の「日本語の目標」
- 教科用語の習得(「日本語の目標」@)/学びへの参加につながる表現の習得(「日本語の目標」A)/表現力の向上につながる語彙の習得(「日本語の目標」B)
- 4 「日本語の目標」を設定するときの留意点
- 毎時間,3種類の「日本語の目標」すべてを入れる必要はない/「読む・書く・聞く・話す」の活動をバランスよく入れる/学級の児童生徒のことばの実態(習得状況)を把握する
- 3 教科指導の中で日本語の習得を支援しよう
- 1 日本語習得の支援方法
- 理解支援/表現支援/記憶支援
- 4 わかりやすい授業づくりの工夫を知ろう
- 1 わかりやすい授業づくりの観点
- 2 事例でみる!口頭説明の多用を避けた授業展開
- わかりやすい言葉使いをする/教科用語や抽象概念の理解ができる手だてをとる/手がかりとなる言葉や文章を明示する
- 3 事例でみる!内容理解の手助けがある授業展開
- 重要な学習内容・習得すべき内容を意識する/「学習内容の可視化」を心がける
- 5章 外国人児童生徒の学びを支える指導の実際
- 1 初期指導では生活に必要なことから教えていこう
- 1 写真でわかる!初期指導の実際
- 日本の学校文化に慣れる「適応指導」/日常会話ができる「初期指導型日本語指導」/「初期指導=適応指導+初期指導型日本語指導」の実際
- 2 教科指導を通して意識的に日本語の力を育てよう
- 1 具体例でわかる!教科指導型日本語指導の実際
- 日本語で学ぶ力を育てる/ターゲットセンテンスを設定する/「日本語の目標」を設定する/継続的・蓄積的に育てる
- 3 夢の実現に向けた進路指導をしよう
- 1 日本語力と学力の獲得意欲につながる進路指導の実際
- 目標ができると児童生徒は伸びる/本番を想定した具体的な面接指導/作文指導は「内容」「書き方」「言葉の意味」まで丁寧に
- 困ったときに役立つ参考文献・HP一覧
はじめに
日本語でのコミュニケーションが難しい外国人児童生徒は,どのくらい在籍していると思いますか? 実は,現在では,全国の公立小・中学校の約25%の学校に在籍しています。もちろん,学校によって在籍数も違いますし,地域によって国籍や言語の多様性も異なりますが,それにしても予想以上に多く在籍していると思ったのではないでしょうか。
日本語でのコミュニケーションが難しいとか,日本での生活が初めてだという外国人児童生徒の学級担任になることは,現在ではそう珍しいことではなくなっています。しかしながら残念なことに,外国人児童生徒の学級担任として何をする必要があるのか,何を知っておく必要があるのかなどについて,学級担任の先生たちには必要な情報が届いていないのが現状です。
そこで,本書は,外国人児童生徒の学級担任になって,「困った」「どうしよう」と思っている先生たちの悩みを,少しでも軽くできればと思って作りました。外国人児童生徒の指導で必要な情報はほぼ網羅していますので,安心して取り組んでください。
本書には,大きな特徴が2つあります。
1つは,外国人児童生徒の学力をどのように形成していくのか,そのための授業づくりの方法を説明しているところです。外国人児童生徒というと,日本語が話せるようになるにはどうしたらよいかに関心が向くかもしれませんが,外国人児童生徒にとっても,学力向上は重要な教育課題なのです。
もう1つは,外国人保護者と良好な協力関係を築いていくための方法を説明しているところです。文化的相違が原因で,外国人保護者と学校との間では,しばしば無用の衝突が起こります。外国人保護者との衝突は,適切な情報交換によって避けることができますので,ぜひその方法を知ってください。
その他にも,学級経営の留意点や進路指導の方法,学校外の指導協力者との連携についても説明しています。外国人児童生徒の学級担任になって戸惑いや不安が大きいと思いますが,本書が少しでも力になれればと思います。
2013年12月 /臼井 智美
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- 明治図書
- 役立ちました2020/4/1150代・男性