- まえがき
- 10の姿について
- この本の用語集
- Prologue 子どもの心への入り口
- 1 みんな生きているよ
- 2 同床異夢って?
- 3 半分に込めた思い
- 4 愉快な発想
- 5 発音が似ている言葉
- Chapter1 楽しい行事
- 6 みんないっしょに進級するの?
- 7 集合写真の撮影時に
- 8 こいのぼりは?
- 9 プールでの不思議
- 10 スイミング教室にて
- 11 短冊に願いを込めて
- 12 華やかな万国旗
- 13 リレーで育つ仲間意識
- 14 運動会に関する同音異義語
- 15 太陽が丘公園での体験は?
- 16 お芋,掘れたよ!
- 17 動物園で
- 18 梅小路蒸気機関車館へ行って
- 19 世界が広がる園外保育
- 20 サッカーで育つ心と体
- 21 貴重なお餅つき体験
- 22 優しい心が育つ一円募金
- 23 もうすぐクリスマス
- 24 サンタクロースがやってくる
- 25 新年って?
- 26 対面でカルタをしていると
- 27 真剣勝負のカルタ大会
- 28 節分の豆まき
- 29 音楽発表会で心を一つに
- 30 卒園しても
- Chapter2 日常の保育のなかで
- 31 曖昧な会話
- 32 縄となかよし
- 33 あこがれの跳び箱
- 34 パラバルーン活動での空間認識
- 35 速く走れるには理由が
- 36 やる気みなぎる赤白帽子
- 37 心に残るノーチャイムデー
- 38 パス画に詰まった独創性
- 39 満3歳児のスタンピング遊び
- 40 造形活動中の直感的思考
- 41 造形活動中の論理的思考
- 42 音と親しむ子どもたち
- 43 心が弾むカスタネット
- 44 合奏をしていると
- 45 歌詞の意味は?
- Chapter3 身近な保育環境
- 46 紛らわしい言葉
- 47 音源はどこかな?
- 48 身近な椅子
- 49 机の周りで
- 50 靴の履きかえは?
- 51 これはどこ?
- 52 かばんへの特別な思い
- 53 言葉は正確に
- 54 名札への思い
- 55 不思議な虫眼鏡
- 56 ポケットの中には?
- 57 洗うって?
- 58 手洗い場にて
- 59 歯を磨いていると
- 60 トイレにて
- 61 風とスウィング
- 62 視点を変えると
- 63 遊具から広がる子どもの世界
- 64 さわやかな人工芝グラウンド
- Chapter4 身近な自然環境
- 65 どこから水を飲むの?
- 66 自分で育ててみると
- 67 初めてのチューリップ栽培
- 68 アネモネとおしゃべり
- 69 ヒヤシンスといっしょに
- 70 パンジーへのおすそ分け
- 71 オジギソウは元気?
- 72 ドングリと友達
- 73 子どもとタンポポ
- 74 いちご組とイチゴ
- 75 小鳥に代わって
- 76 チョウチョウの戯れ
- 77 増えていく私のチョウチョウ
- 78 キンギョの死
- 79 仲間分けって?
- 80 お月さま見つけたよ
- 81 星から連想するものは?
- 82 雪が降ると
- 83 雲って何でできてるの?
- 84 空の機嫌は?
- 85 雷が鳴ると
- 86 影は友達
- 87 台風のあとで
- 88 地震って?
- 89 煙からのイメージは?
- Chapter5 身近な人たち
- 90 お母さんの温もり
- 91 父の日をきっかけに
- 92 弟妹への思い
- 93 いっしょに分けっこ
- 94 会えて嬉しい敬老参観
- 95 祖父母に思いを馳せて
- 96 先生の家は職員室?
- 97 大好きなアンパンマン
- 98 心に残る我が子のつぶやき
- 99 入園面談・説明会にて
- 100 1・2歳の子どもたち
- 101 2・3歳の子どもたち
- 102 体験入園にて
- 103 目的語を省略すると
- 104 同音異義語の受け取り違い
- Chapter6 五感を研ぎ澄ませて
- 105 触って感じる心
- 106 そう聞こえたの!
- 107 耳を澄ませば
- 108 連想したにおい
- 109 嗅いだにおいのイメージは?
- 110 大人の味は?
- 111 イメージした味は?
- 112 愛情がこもったお弁当
- 113 ほかほかのお弁当
- 114 考えているの
- 115 昼食後のひととき
- 116 おやつの時間に
- 117 そう見えたの!
- 118 私から見ると
- 119 髪の毛のイメージは?
- 120 花火のあとで
- 121 心もきれいになる掃除
- 122 美しい心を育むとは?
- 123 錯覚って不思議
- Chapter7 好奇心と探求心をくすぐる言葉と数
- 124 興味の始まりはサイコロ
- 125 大きいの意味は?
- 126 数を連想させるものは?
- 127 数の読み方はややこしい
- 128 文字と数の結びつき
- 129 始まりって?
- 130 どこが違うの?
- 131 思考錯誤した計算
- 132 時計と音の結びつき
- 133 目のつけどころは?
- 134 量が違うと
- 135 文字の形は?
- 136 なぞなぞ遊び
- 137 言葉から連想したものは?
- 138 今までの経験と知識から
- 139 パターン化された問答
- 140 おめでとうって?
- 141 主語がなかったら?
- 142 慣用句を聞いても
- 143 いろいろなお尻
- あとがき
- 執筆者一覧
まえがき
本園は,約40年にわたる保育のなかで感動した“子どものつぶやきと行動”を収集し,記録しています。その収集数は8,800を超えました。当初は,子どもの心の一端を探りたいという一心で,園長が感動した子どものつぶやきと行動を収集しようと保育者に提案したことが始まりでした。収集がある程度の数になると,ある種のパターンに気がつきました。ただ単にかわいいね,ほほえましいね,と受け止めるだけでなく,子どもはどのように世界が見えているのか,どのようなことを考えているのか,どのような道筋で物事を考察しているのか,私たち保育者の思いが的確に伝わっているのかなど,より深く子どもの心を探るために,さらに子どもの言動に心を傾け,記録し,整理してきました。その取り組みは子どもと向きあう保育者の姿勢を改めるきっかけになり,育ちを見守り,様子を観察する視野を広げ,保育者の指導力向上に役立ちました。子どもはまさしく,私たちの先生です。
さて,近年の研究で,幼児教育が生きる力の基礎になることが改めて分かりました。まさに幼児教育が生涯学習の基礎を担っているのです。幼児期の遊びを通した主体的,協同的な学びもしっかりとした学習であると再認識されたのです。幼児期の経験が就学以降の学びを支えているのです。それらを踏まえて平成29年に改訂された幼稚園教育要領,保育指針,教育・保育要領では,幼児期に育みたい子どもの育ちを「資質・能力の3つの柱」として示されました。@知識及び技能の基礎 A思考力,判断力,表現力の基礎 B学びに向かう力,人間性等です。また,学びの連続性を保障し,幼・保・こ・子連携・接続を促進するためには幼児期に育つ力について保育者と小学校教諭間の共有が大切ですので,就学前である5歳児後半の具体的な姿を示したものが「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」,いわゆる「10の姿」です。これは,一人ひとりの育ちを認める主体的・対話的な深い学び,いわゆるアクティブ・ラーニング(能動的学習)によって培われます。つまり達成感や自信につながる主体的な遊び,思考や知識が広がる対話的な学び,子どもたちの間のコミュニケーションからさらに次の意欲につながる深い学びです。それらは,非認知能力,社会情動的スキルとも言われ,乳幼児期から育てる重要性が指摘されており,生涯にわたって大きな影響を与えることが分かっています。非認知能力の土台は,愛着関係(アタッチメント)です。丁寧で温かい応答的な関わりを受けることが安心して育つ第一条件であり,年齢ごとの発達特性を踏まえた大人の質の高い援助が大切です。
ここで本園のつぶやきの収集に話は戻りますが,この収集の記録はまさしく子どもへの質の高い援助につながりがあると考えます。@子どものありのままの姿を受け止める A子どもの主張をしっかり聞く B子どもが理解できる話し方かどうか振り返ることができる C子ども特有の表現方法を理解できるなどの観点からです。
本書は,本園の保育者26名が,過去に収集した言動をキーワードごとに分類したなかから2,3のエピソードを選んでいます。子どもの言動にはすべて意味があると考えて読み解くと,その心が見えてくると考え,保育者から見たポイントを執筆しています。子どもの年齢とエピソードごとに「10の姿」に深い関わりがある項目を記し,ページ上にも当てはまる項目に色付けしています。“このエピソードはどの項目と結びついているかな?”と読みながら予想するのもおもしろいかもしれません。各保育者が考えたものなので,視点に少々統一性がないこともある点は,どうかご了承ください。
今回,作成途中で子どものつぶやきの捉え方について編集者同士で何回も討論しました。討論したところで子ども本人にしか分からないのですが,子どもの視点や考えについて意見を交わす貴重な時間でした。つまり,@子どもの心を探る A子どもと関わる立場の一人の人間としての姿勢を探る,この二方面からの“コツとスキルを探る”が本書のテーマかも知れません。
本書が,皆さまに保育や子育てがもっともっとおもしろく,楽しいものと感じていただける一助になれば幸いです。
2025年6月 編者 /梶田 祐子・佐々木 伸和
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- 明治図書