- まえがき
- 第1章 現場は「改善」で進もう
- 日本の小学校教師は千手観音
- みんなで創り上げてきた,世界に誇る日本型学校教育
- 日本型学校教育は,さらに多くを期待されている
- そして,新学習指導要領全面実施が迫る
- 学校の働き方改革実現のためには教師を増やしたい…が
- 「改革」は国と教育委員会,学校は「改善」
- 学校改善の鍵1:学校を変える主役は我々教職員
- 学校改善の鍵2:ICTは使える!そして+αのアイデアが必要
- 学校改善の鍵3:日常を変える
- 思い込みを超えると,+αのアイデアはどんどん広がる
- 人手不足は急速に進行中,準備が急がれる
- column 着任したらまず掃除する
- 第2章 ICT+αで学校の日常を改善するアイデア
- 1 ICTで子供ファーストの朝をつくる
- 01 職員朝会を全廃する
- 02 子供を教室で迎える
- 03 全校で一人残らず行う朝の読書
- 04 職員室スタッフの打ち合わせは8時40分に始める
- 05 校務支援システムで「チーム学校」を支える
- 06 校務支援システムで先々を見通す
- 2 職員会議は年4回に精選する
- 07 職員会議は年4回
- 08 原案は,前年度のデータを十分に使う
- 09 経営方針と小さな企画会議で議論を活性化
- 10 管理職の「ふらふら情報収集」の意味
- 11 反省は,即日,立ったまま行う
- 12 ペーパーを使わない方が効率的に情報共有できる
- 13 知らせる努力・知る努力
- 3 ICT+αで全校の状況を把握する
- 14 9時30分に全児童の健康情報を共有
- 15 出欠席情報と健康情報は同時に入力
- 16 「ほけんしつカード」で担任も保護者も安心
- 17 連絡なしで登校が遅れている児童を把握する
- 18 マークシートを活用し学校評価をコンパクトにする
- 19 不要になった行事黒板を「重要情報共有黒板」に変える
- 20 月予定は3ヶ月分を掲示
- 4 学校と家庭で作る6年間通知表
- 21 子供の育ちを長い目で見る「6年間通知表」
- 22 学校と家庭で作る,世界に一つの「MY通知表」
- 23 安全・安心な「渡しきり通知表」
- 24 「プレミアムな通知表」にする
- 25 「個人情報保護袋」でさらに情報管理を徹底
- 26 評価研修日を設定する
- 5 ICT+αで安全・安心な学校をつくる
- 27 電子メール連絡を軸に,複数の連絡手段を用意する
- 28 停電に強い緊急連絡手段の確保
- 29 登下校管理システムの利用
- 30 メールでの連絡可能状況を可視化する
- 31 学校への信頼を高める「安全・安心情報」
- 6 ICTで日常の一斉授業を改善する
- 32 一斉授業の改善には,まず大型提示装置と実物投影機が必要
- 33 大型提示装置は,大きいほどよい
- 34 実物投影機を徹底的に使う
- 35 ベテラン教師の技が光る実物投影機
- 36 実物投影機活用の具体的なアイデア
- 37 指導者用コンピュータが,さらに授業の幅を広げる
- 38 導入の一歩先にある「常設・固定」まで進む!
- 39 学習者用コンピュータを効果的に使う
- 7 情報を守り共有する「ワイガヤ」職員室
- 40 職員室に個人情報保護ゾーンを設定する
- 41 職員室に100インチスクリーンとプロジェクタ
- 42 安心して話せる「職員室内電話ボックス」
- 43 みんなの力で職員室改造
- 44 校長室は経営企画室に改造
- 8 ICT+αの前に必要なインフラ整備
- 45 「よくわかる!◯◯小」(学校基本ガイド)
- 46 ICTインフラが教育の質を支える時代
- column 忘れられないあの日のメール
- 第3章 改善を実現するためのヒント
- 時間とコストは切り下げ,質を向上させる
- 予算をかけるべきところにかける
- 「学校に無駄はない」この気持ちを超えられるか
- 次の仲間のために,「今こそ,変える」覚悟を
- 「痛くない手術はない」見通しを示し励ます
- 小さな成功に光を当て共有する
- 「知らせる努力・知る努力」が究極の情報共有
- 軽やかに日常授業の改善を図る研究も大切
- 確かな教材を徹底的に使う
- ミドルリーダーを育てる企画会議
- 来客は歓迎し,日常の学校を見ていただく
- ボトムアップを実現するために必要なリーダーシップ
- column トランシーバーで情報共有
- 参考文献
- あとがき
まえがき
この本では,小学校での業務を改善しながら,同時に教育の質をどう向上させるかというアイデアをみなさんにご報告します。
この報告のポイントは,2点あります。
第一に,学校現場での実践をもとにした報告であることです。
今,学校の働き方改革が大いに議論されています。わたしたちの目や耳には,国や教育委員会レベルでの大きな改革についての情報がたくさん入ってきます。現場からの悲鳴にも似たレポートもたくさんあります。しかし,学校現場でどんな改善が可能なのか,どんな改善をすべきなのかといった情報は,意外と少ないのではないでしょうか?
書店の教育書のコーナーで最も多いのは,新学習指導要領への対応を中心とする授業研究に関する書籍です。働き方については,学者や教育の専門家による示唆に富む提言に加え,一人一人の教師の仕事の効率化に関する本が人気のようです。
本書では,小学校で試みた組織的な業務改善のアイデアをご紹介します。
国や教育委員会による法令の改正に及ぶような根本的な「改革」はもちろん重要です。同時に,学校現場での我々自身の組織的な「改善」も大切です。本書が,学校現場で奮闘するみなさんへの具体的な手助けになればと願っています。
第二に,ICTの活用を中心にした報告であることです。
学校への導入がどんどん進んでいるICTを活用した学校改善のトライアルをご紹介します。といっても,みなさんのご期待ほどにはICTは登場しないかもしれません。どちらかというとその周辺の話が多くなります。
ICTを導入しただけでは,学校の業務改善はほとんど進みません。
最新の電気自動車を購入しても,充電設備がなければ使えません。気温や渋滞への対応など,これまでのガソリン車とは若干異なる運転ノウハウが共有されなければ,その実力を発揮できないのと同じです。
当然のことですが,教育の情報化とは,最新のICT機器を導入することとイコールではありません。導入に伴ってICTの周辺を設備したり業務の流れを変えたりすることが大事です。つまり,ICTに+αのアイデアが必要なのです。+αのアイデアを加えることで働きやすい環境が生まれます。そんなアイデアをご報告します。
新学習指導要領の全面実施直前ですが,文部科学省では,すでにその次の課題にもなりそうなSociety5.0に向けた検討が始まっているようです。時代の大きな変わり目はまだまだ続きます。教育に対する期待はますます高まるばかりです。
そんな大波に堂々と向かっていけるスマートでしなやかな学校づくりが必要です。きっとその学校は,ねじりはちまきでがんばる学校ではありません。必要な情報がスムーズに共有され,互いに信頼し合い,フランクな空気に満ち,みんながWin-Winになれる明るい学校です。
国や教育委員会には,根本的な改革を期待しましょう。そして,我々現場は,指をくわえて待つのではなく,自分たちにできることはないか,そのヒントを考え,トライアルしていきましょう。
よりよい学校,より働きやすい学校づくりの主役は,現場の我々です。現場の小さなアイデアにこそ,日本の学校の未来があります。現場の力を今こそ発揮しようではありませんか。
2019年1月 /新保 元康
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