- まえがき
- 1章 小学校の学力向上への戦略の構想
- §1 学力とは
- 1 学力とは
- 2 学力を解剖する
- §2 学力向上の背景と戦略
- 1 学力向上と教育課程の編成
- 2 学力向上の重点
- 3 時間割の工夫
- 4 授業の充実
- §3 繰り返し学習の意味
- 1 知識・技能の定着のための繰り返し学習
- 2 問題発見解決力を育てるための繰り返し学習
- 3 学び方を育てるための繰り返し学習
- §4 学力テストの限界と活用
- 1 学力テストはなぜ必要か
- 2 学力テストの限界
- 3 学力テストの活用
- 2章 小学校の学力向上への戦略プラン
- §1 学びがいを実感させる授業 /北海道教育大学教育学部附属札幌小学校
- 1 学校のプロフィール
- 2 わが校の学力のとらえ方
- 3 学力向上の基本的考え方
- 4 学力向上への構想と特色
- 5 学力向上への実践例
- 6 わが校の学力向上の取り組みの考察
- §2 総合の学びを各教科に生かす /新潟県上越市立大手町小学校
- §3 「自己評価力」育成で確かな学びを /埼玉大学教育学部附属小学校
- §4 確かな力を育てる算数科学習 /東京都三鷹市立北野小学校
- §5 個をみつめ,個を生かす授業づくり /神奈川県横浜市立本町小学校
- §6 「学習リテラシー」に着目して /富山大学教育学部附属小学校
- §7 「学習力」を育む多奈良の学習法太 /奈良女子大学文学部附属小学校
- §8 高台教育パワーアップ大作戦 /広島県東広島市立西条小学校
- §9 個性と創造性からみる学力向上 /香川大学教育学部附属高松小学校
- §10 学力向上のカギは学習意欲の向上にあり /熊本大学教育学部附属小学校
まえがき
「学力の定着・維持・向上」問題は,現在の学校教育の在り方にかかわる極めて大きな問いを投げかけているように思います。
その第一は,学力低下に関する問題です。「よみ,かき,けいさん」をゴールと考えて,子どもたちをひたすらドリル漬けにし,単調な繰り返し訓練に追い込むものから,「確かな学力」(知識・技能,学ぶ意欲,学び方,課題発見能力,問題解決能力,思考力,判断力,表現力)のように自分で課題を見つけ,自ら学び,主体的に判断し,行動し,より良く問題を解決する資質や能力と捉えていくものまで実に多様です。学力の中身,構造をどのように捉えるかで,子どもの学習の目標と内容が大きく左右されることになります。
したがって,各学校には,「学力」をどのように捉えるかを明確にすることが求められていると思います。このことによって,学力低下を肯定する考えによる学力を越えることも,学力低下を否定する考えによる学力を補完することも可能になるからです。
第二は,子どもに「学力の定着・維持・向上」を保障する戦略の問題です。たとえ一部分とはいえ学力の低下が事実とすれば,その原因を探り回復するようにすべきです。また,学力が低下していないといってもある部分については不十分だということであれば,その部分を充実させることが求められるのです。
いずれにしても,各学校が捉えた「学力」を,子どもに確実に身に付けるためには,戦略すなわち方針と構想,計画と方法,実践と評価が必要となります。これらを効果的に進めるためには,校長の経営力と教師の授業力が高い水準で必要となってくるのです。
「学力の定着・維持・向上」問題の要因等の全てを学習指導要領や授業時数に求めて旧態依然とした教育活動を進めてよいものでしょうか。校長の経営力が発揮されて学校が組織的に運営されるようになり,教師の授業力が目的的に発揮されることになれば,この「学力の定着・維持・向上」問題の明るい将来が見えてくるような気がします。
第三は,評価の問題です。これまでも各学校は,子どもの「学力の定着・維持・向上」を決して意識していなかったわけではないと思います。にもかかわらず,結果的に「学力の定着・維持・向上」へのこだわりが弱かったかのような印象を与えているのは,「評価」についての認識と行動が曖昧だったからだと痛感しています。
各学校(教師)がこれまで行ってきた評価は,言い過ぎを許していただければ目の前の子どもがどのような状況であるかを捉え,通知表や指導要録のための評価・評定をしているに過ぎなかったのではないでしょうか。
これからは,評価についての考え方を各学校(教師)が次のように捉え直し活用することが大切であると思います。
(1) 評価は,設定した目標を達成したかどうかを捉えることである。
(2) 授業の中で個人(子ども一人一人)について評価を行い,どの子どもにも設定した目標を達成できるよう援助するために活用する。
(3) 単元または学期等の節目に総括的な評価を行い,それを活用して教師は指導計画の修正や指導法を改善し,子どもには学習の見通しや自己認識をもたせるようにする。
(4) いくつかの方法を組み合わせて学校全体の傾向を評価し,教育課程の実施の結果を捉え「結果責任の説明」ができるようにするとともに教育課程編成の改善に活用する。
実は,以上のようなことをすでに発想の中に取り入れ先導的な実践をしている学校があります。文部科学省の「学力向上アクションプラン」の指定校として,都道府県教育委員会の「学力向上施策」の研究校として,あるいは独自の「学力定着」の実践校として取り組んでいる学校です。誠に心強いかぎりです。
そこで,本書は,学力論争や学力低下論争を越えて,子どもたちに「学力の定着・維持・向上」を保障するために具体的に取り組んでいる全国の学校の中から10校を選んで,次のような構成で紹介していただくことにしました。
〇学校のプロフィール
〇学校としての学力の捉え方
〇学力向上の基本的な考え方
〇学力向上への戦略(構想)と特色
〇学力向上への具体的な取り組みの紹介
〇わが校の学力向上の取り組みの考察(現時点における成果と課題)
ご協力頂いた各学校の校長先生,研究主任,関係の先生方には,ご多用の中にもかかわらず本書のために玉稿を賜りまして誠にありがたく厚く御礼申し上げます。一人でも多くの人々の目にとまることができ,子どもたちの「学力の定着・維持・向上」のためにいささかでも役立つことができれば幸いとするところです。また,企画から編集まで万事お世話いただいた安藤征宏氏に特に名を記して感謝申し上げます。
2004年2月 編者 /小島 宏
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明治図書
















