学力定着度チェック 学校の自己点検・自己評価の手引 中学校版

学力定着度チェック 学校の自己点検・自己評価の手引 中学校版

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絶対評価への転換は各中学校に学力保障の結果を求めている。そこに学校の自己点検・自己評価が重視される理由がある。この背景を踏まえてその考え方と具体策を明示した。


復刊時予価: 2,277円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-071418-3
ジャンル:
学習指導要領・教育課程
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 120頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 特色ある学校づくりと自己点検・自己評価
§1 なぜ学校の自己点検・自己評価が必要なのか
1 学校の自主性・自律性の尊重
2 学力の定着を図る
§2 これからの学校経営と学校評価
1 マネジメント・サイクルと学校評価
2 これからの学校評価への取り組み
3 授業評価と学校経営
4 学校評価実践上の留意点
第2章 生徒の学習状況の評価と学校の自己点検・自己評価
§1 学習指導と評価活動の自己点検・自己評価
1 生徒の学習状況の評価
2 学習指導における自己点検・自己評価
§2 基礎・基本の定着度と自己点検・自己評価
1 基礎・基本の定着を図る教育課程
2 基礎・基本の定着度と自己点検・自己評価
§3 個人内評価と自己点検・自己評価
1 個人内評価
2 個人内評価を活用した「個」のよさを伸ばす指導
3 個人内評価の自己点検・自己評価
§4 成績通知表の工夫改善
1 成績通知表改善の視点
2 成績通知表の活用
3 成績通知表の様式
第3章 教育課程の自己点検・自己評価
§1 学校の教育目標と教育課程の自己点検・自己評価
1 学校の教育目標と教育課程
2 自己点検・自己評価
3 自己点検・自己評価を公開する
§2 各教科の教育課程の編成・実施状況の自己点検・自己評価
1 各教科の教育課程の編成の自己点検・自己評価の考え方
2 各教科の教育課程の実施状況の自己点検・自己評価の考え方
3 各教科の教育課程の編成の自己点検・自己評価の方法
4 各教科の教育課程の実施状況の自己点検・自己評価の方法
§3 道徳の教育課程の編成・実施状況の自己点検・自己評価
1 道徳の評価の対象となるもの
2 道徳の評価に当たっての基本的な考え方
3 全体計画,学級における指導計画の評価
4 道徳の時間の年間指導計画の評価
5 道徳の時間の自己点検・自己評価
6 生徒の道徳性の評価
§4 特別活動の教育課程の編成・実施状況の自己点検・自己評価
1 教育課程評価の必要性
2 特別活動の評価の観点
3 特別活動の評価基準と評価プロフィール例
4 特別活動実施状況の自己点検例
5 特別活動の自己評価例
第4章 総合的な学習の時間の自己点検・自己評価
§1 学習の成果と課題
1 自校の総合的な学習の時間に何を期待しているか
2 何を自己点検・自己評価すればよいか
3 どのように自己点検・自己評価を行うか
4 学習の成果と課題を明確にする
§2 学習環境の自己点検・自己評価
1 総合的な学習の時間の実施にかかわる学習環境
2 自己点検・自己評価による課題の明確化とその対応
第5章 学習活動の工夫改善と自己点検・自己評価の実践
§1 指導計画の工夫改善と自己点検・自己評価の実践
1 指導計画の意義と視点
2 自己点検・自己評価の基本姿勢
3 指導計画と授業改善に生かす自己点検・自己評価
4 まとめ
§2 指導方法・学習形態の工夫改善と自己点検・自己評価
1 基礎・基本の徹底した習得を支援する
2 生徒の主体的な学びの成立を目指す
3 参加型の体験学習を取り入れる
4 自己実現の場を意図的に計画する
5 教師の自己点検・自己評価
6 生徒の自己点検・自己評価
§3 選択学習の工夫改善と自己点検・自己評価
1 はじめに
2 選択学習の工夫改善例
3 選択学習の自己点検項目
4 自己評価の方法と活用
第6章 開かれた学校の自己点検・自己評価の実践
§1 学校評議員制度を生かした自己点検・自己評価
1 学校評議員制度の役割と開かれた学校
2 学校評議員制度設置上の留意点
3 学校評議員会要綱 例
4 学校評議員会による学校評価
5 成果と今後の課題
§2 保護者・地域関係者・教育委員会への説明責任
1 説明責任としての校長のビジョンの明示
2 説明責任としての学校公開
3 説明責任としての保護者会の工夫
4 教育委員会の学校訪問
5 説明責任を高める今後の課題
§3 保護者や生徒による自己点検・自己評価
1 学校の自己点検・自己評価の意義
2 保護者や生徒による自己点検・自己評価の実践例
§4 自己点検・自己評価と関係機関との連携
1 自己点検・自己評価における関係機関との連携の意義
2 自己点検・自己評価における関係機関の役割とその内容
3 自己点検・自己評価結果の公表と教育委員会の役割
§5 学校評価と小学校との連携
1 学校評価における「開かれた学校づくり」の視点
2 小学校との連携を図った指導事例
3 小学校との連携を視点とした学校評価とは
第7章 中学校における自己点検・自己評価の実践
§1 「チャレンジ精神の育成」と「地域立学校の創造」
〜学校選択の時代を見据えた開かれた学校づくり〜(北海道苫小牧市立緑陵中学校)
1 本校の自己点検・自己評価
2 保護者の期待に応える学校評価
3 コミュニティーとしての学校を創造する
4 平成13年度の「みどりの評議員」の実践の概要
5 さいごに(めざす学校評価の在り方)
§2 自立した学校を目指す自己点検・自己評価の工夫・改善
〜学習指導を例にした説明責任への取組〜(新潟県新井市立新井中学校)
1 本校の自己点検・自己評価の考え
2 学習指導を例にした自己点検・自己評価の実際
3 今後の課題
§3 確かな学力を育む学校評価
〜指導と評価の一体化・通知表の工夫〜(岩手大学教育学部附属中学校)
1 確かな学力を育む自己点検・自己評価の考え方
2 学習評価の自己点検・自己評価と校内体制
3 学校知の変革のための自己点検・自己評価の活用
§4 教科の学力の見直し・整理・連携
〜教科の存在理由を問い直す〜(大阪教育大学教育学部附属池田中学校)
1 教育課程の再編へ
2 各教科の学力の見直し・整理・連携
3 現在の状況

まえがき

 完全学校週5日制の実施によって中学校の授業日数は少なくなり,学習指導要領においてもすべての生徒が学習すべき内容については基礎的・基本的内容に厳選していることなどにかかわって世間では学力低下問題が話題となっています。また,学習評価として長い間中学校で定着していた相対評価による評定が目標に準拠した評価,いわゆる絶対評価に変わったことによる教師の不安や生徒や保護者の混乱した状況も見受けられます。

 新しい学習指導要領では,基礎的・基本的な内容の確実な習得を図り,自ら学び自ら考える力など,生徒一人一人に「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしており,このねらいを実現できるよう各中学校では教育活動の工夫改善に努力しているところです。そこで,文部科学省でも,学校現場でこのねらいが実現できるよう教育課程審議会に「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」の諮問をしました(平成11年12月7日)。文部科学省の教育課程審議会への諮問事項は次の3点についてです。

 1 今後の児童生徒の学習評価の在り方

 2 学習指導要領に示す目標・内容の達成状況の評価の在り方

 3 教育課程の実施状況等から見た学校の自己点検・自己評価の在り方

 審議の結果は平成12年12月4日に答申として公表しています。答申の内容は諮問を受けた3点に関しては新しい学習指導要領のねらいを十分に踏まえたものとなっていますが,特にこれからの学習評価,学校評価の在り方について重要な提言となっています。

 新しい学習指導要領のねらいには,授業によって身に付けられる知識や技能だけでなく,豊かな人間性や主体的に問題を解決する資質や能力,健康・体力など生徒による主体的な活動によって育まれる資質・能力まで含まれているところから,評価については中学校が取り組んできたこれまでの評価観や評価方法では対応仕切れません。特に生徒一人一人が学習指導要領に示されている目標・内容をどの程度身に付けているかについての評価は従前のような中学校で主流となっている評価方法としてのペーパーテストや定期テストだけでは十分とは言えません。

 長い間,中学校では高等学校進学の資料として相対評価による評定が重要な役割を担っていたため,相対評価を可能とする授業と評価方法が行なわれてきました。しかし,これからは生徒一人一人が学習活動によって教科等の目標の実現に向けてどのように変容しているのか,また,どのような点でつまずき,それを改善するためにどのような指導を必要とするのかを明らかにする評価,いわば学習評価は結果を求めるだけでなく学習指導と評価を一体化した考え方が大切です。学習評価を適切に行なうことは,学習指導要領に示す目標が生徒一人一人に実現できる学習活動を行なっていることの証となりますし,その証を公開することは公的教育機関としての中学校では当然の責務とも言えます。

 学習の評価を適切に行なうには,各教科の学習活動が適切に行なわれていることが前提となりますが,学習指導要領に示された各教科の目標が実現できる学習活動を展開するためには,各教科担当者が目標の実現に向けてどのような授業を展開しているかについての授業評価,また,適切な授業の展開を可能とする教育課程の実践状況に関する教育課程の評価が必要です。学校評価とは学習評価,授業評価,教育課程評価を一体化してとらえようとする考え方です。

 今回の学習指導要領の改訂によって,各中学校においてはそれぞれの学校の置かれた実態に応じた教育活動の実践,特色ある学校づくりが強調されていますが,その結果については当然校長が責任を負うことになります。そこで,学校における自己点検・自己評価が学校評価として強く求められることになりました。

 先の答申においては学校の教育課程の実施状況の自己点検・自己評価として,次のような事項を例としてあげています。

 1 各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間それぞれについて指導目標,指導計画,授業時数,評価の規準など具体的な教育課程の編成状況,

 2 各教科等の授業時数や指導内容の実績など事実としての教育課程の実施状況,

 3 個別指導やグループ別指導,ティームティーチングなどの個々に応じた指導や,体験的な学習,問題解決的な学習,選択学習への取組み状況など指導方法や指導体制の工夫改善の状況,

 4 年度当初の指導目標の実現状況,生徒の基礎・基本の習得状況や全国的な学力調査の結果との比較など学校全体としての生徒の学習状況,

 本書は答申の考え方に基づいて,各中学校における学習評価を含めた学校評価を適切に行なうために必要とする評価の各項目・事項について,評価を進めるに当たっての基本的な考え方や評価の方法・手続きなどに関しての論述と実践事例等によって構成しました。

 各事項の執筆者は,各分野の実践者や研究者として活躍している方々であり,さらには国立教育研究所,教育課程研究センターによる「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料」作成のために研究協力した学校の実践者の方々です。

 中学校では学校評価が意図的・組織的に行なわれていない状況が伺われますが,学校評価の実施と評価結果の公開は文部科学省令である学校設置基準の改訂によっても義務付けられています。このような時に,本書が校内研修会等で活用され,学校評価,学習評価について共通理解のもとに適切な評価活動が行なわれることができれば幸甚です。

 信頼性と妥当性のある評価活動が行なわれていれば,保護者や地域の方々からも学校教育について理解と協力が得られますし,学校としては従前にも増して充実した教育活動の展開が可能となります。関係各位の研鑽を切に願っています。


  平成14年10月30日   編者 /佐野 金吾

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