学校改革選書2
中学校の学力向上戦略プラン集

学校改革選書2中学校の学力向上戦略プラン集

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戦略的、組織的な取組みが基礎基本を向上させる。

学力向上は現在の学校教育の最大の実践課題です。この課題の達成に向けて中核になるのが、各学校の戦略プランです。本書は代表的な中学校の研究校のプランを紹介しつつ、そこから学ぶべきコンテンツを分析・解説した、今読んでおきたい1冊です。


復刊時予価: 2,211円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-070811-6
ジャンル:
学校経営
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 112頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
1章 中学校の学力向上への戦略の構想
§1 学力とは
1 学習指導要領と学力
2 [確かな学力]と学習指導要領
§2 学力向上の背景と戦略
1 学力向上と教育課程の編成
2 時間割作成の工夫
3 授業の充実
§3 学力テストの活用と限界
1 学力と評価
2 ペーパーテスト
3 評価に対する信頼と標準化されたテストの活用
2章 中学校の学力向上戦略プラン集
§1 主体的学びを育む少人数指導 北海道苫小牧市立緑陵中学校
<事例>
1 学校のプロフィール
2 わが校の学力のとらえ方
3 学力向上の基本的な考え方
4 学力向上への戦略と特色
5 学力向上の実践例
6 わが校の学力向上の取り組みの考察
§2 自己評価力を生かした取り組み 新潟県新井市立新井中学校
§3 「学ぼうとする力」を高めるために 宇都宮大学教育学部附属中学校
§4 学ぶ意欲を育てる指導の工夫 千葉県千葉市立小中台中学校
§5 教科出発型「総合」で学力保障を 横教浜育国人立間大科学学部附属横浜中学校
§6 生徒の評価を生かす授業改善 長野県塩尻市立広陵中学校
§7 学び方を身につけさせる課題学習 富山大学教育学部附属中学校
§8 確かな学びを子どもたちに―基礎・基本を重視した教科指導― 愛知県豊川市立南部中学校
§9 子どもの学習観の転換と意欲 大分大学教育福祉科学部附属中学校
3章 実践校の取組みを通して見た学力向上策
1 学校としての取組み
2 学力をどうとらえるか
3 学力の向上への具体的な取組み

まえがき

 「最近の中学生は勉強しなくなった」とか「読めない,書けない,計算できない生徒が増えている」といった声が学校現場でよく聞かれます。実態調査の結果をまつまでもなく中学生の学力の状況について危惧している教師は多くいるようです。

 平成15年12月26日には学習指導要領の改訂についての通知が出されました。現行の学習指導要領は平成10年に改訂,告示され,平成14年度からこの学習指導要領によって各学校では教育活動を実践しているところです。わずか2年の経過を経ずしてこのたび一部改正となりましたが,今回の改正は学力問題が大きくかかわっています。

 学力問題に関して文部科学省としては様々な施策を行っていますが,「学力向上アクションプラン」は学力向上のための総合的な施策です。この施策では,習熟度別学習などによりきめ細かな指導の実現を目指す「個に応じた指導の充実」,学ぶことの楽しさを体験させ学習意欲を高めるとともに,学びの質を向上させる「学力の向上」,特定の分野で卓越した人材を育成する「個性・能力の伸長」などを主な事業としています。

 中央教育審議会答申(平成15年10月10日)では学力問題に触れながら,児童生徒一人ひとりに[確かな学力]をはぐくむためには学習指導要領の検討が必要であると提言しています。また,[確かな学力]をはぐくむことについては,「(1)知識や技能を剥落させることなく自分の身に付いたものとし,(2)それを実生活で働く力として,(3)思考力・判断力・表現力や学ぶ意欲などを高める観点から,知識・技能と生活との結びつき,知識・技能と思考力・判断力・表現力の相互の関連付け,深化・統合を図る。」ことをあげています。学力問題への対処や学力向上に取り組むためには十分検討すべき指摘と受け止められます。

 本書は,学力向上を目指す9校の実践報告をまとめたものですが,9校は生徒の学習状況の実態から課題意識をもち,学力問題の解決に向けて学校あげて組織的に取り組んでいます。読者が参考となる点は,教科の壁を乗り越えて組織的に取り組んでいる状況でしょう。中学校では教科間の壁が厚く,教科指導の在り方について学校あげて取り組むことは難しい状況が見られます。たしかに,これまでにも学力向上を目指した研究実践の報告に接することはありましたが,それは,数学や英語といった特定の教科についてのものでした。

 中学校が当面している学力問題は特定の教科についての学力向上の研究実践だけでは解決できないものを多く含んでいます。また,学力問題に関する課題として絶対評価への取組みもあげられます。学習の評価に関しては,評価の対象となる「学力」についてのとらえかたに共通理解がなされていなかったり,評価の内容・方法についても教科間で調整がとられていなかったりする実態があります。

 学力向上には「学力」のとらえかたから,生徒一人ひとりに学力を身に付けさせる授業の在り方、あるいは評価の内容・方法及び評価結果の扱い方などについて校内の共通理解,共通実践が必須となります。生徒や保護者から評価について信頼を得るには学力向上に向けて学校が組織的に取り組んでいる状況の理解を得ることです。

 本書の各学校の実践報告にもありますが,生徒一人ひとりの学力向上には特定の教科の授業改善だけでは十分とは言えません。教科間や学年間の連携はむろんのこと,教科指導と総合的な学習の時間,道徳,特別活動など学校の教育活動が学力向上に向けて一貫した方針のもとに組織的に活動することが必要です。こうした実践を行うには,1単位時間の弾力的な運用や一日の生活時程の工夫,固定した時間割の見直しなど,学校生活の全体をこれまでの流れにとらわれない新たな発想によって見直すことが必要となります。

 本書の各学校の実践報告は,それぞれの学校の実態や課題に対応して工夫した事例です。生徒会活動を活用して学力向上への取組みを進めてきた学校もありますし,小学校との連携や長期休業期間の在り方についての見直し,あるいは放課後の時間の活用など,これまでの学力問題への対処とは異なる視点から取り組んでいる状況をとらえることができます。

 完全学校週5日制,あるいは二学期制の実施など学校教育を取り巻く環境条件は大きく変わりつつありますし,生涯学習社会における学校教育の新たな役割についても考えなければなりません。こうした学校教育の転換期に中学校にはさらに学力問題が大きくのしかかています。中学校教育が大きく変化しようとする現在,変化に適切に対応し,当面する学力問題にも対処できる学校運営が求められていますが,その際,本書の各学校の実践報告から多くの示唆を得ることができるでしょう。

 全国の中学生の一人ひとりが[確かな学力]を身に付け,充実した学校生活と感じられることがなによりも大切です。多くの中学校で本書が活用され,教育活動の一層の充実に役立てられることを期待しています。

 終わりになりましたが,本書に実践報告を提供されました9校の関係者の皆様方に深く謝意を表しますとともに,各学校の今後の一層の発展を記念しまして,編者の言葉とします。


  平成16年3月   編者 /佐野 金吾

著者紹介

佐野 金吾(さの きんご)著書を検索»

東京家政学院中・高等学校長

前・教育課程審議会委員

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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