生活科・総合的学習で高める「学校力」

生活科・総合的学習で高める「学校力」

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学校力が子どもを育てる。

生活科と総合を柱にすることは、学習指導と生活指導の統一をめざす教育活動。基調提案−検討方式の話し合いなどユニークさに注目。


復刊時予価: 2,332円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-070202-9
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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はじめに――「学校力」を高めるための総合的な哲学・展望・戦略 /藤井 千春
序論――学校力で子どもを育てる /湯浅 邦彦
T 子どもたちの学びの姿
――自然発酵する学校力
第1節 夢広場 生活科で子ども熱中の秘密
1 1年1組 だいすき! わたしたちのがっこう――がっこうはたのしいよ――
2 1年2組 だいすき! わたしたちのがっこう――おくじょうプールであそぼう――
3 2年1組 まち,大すき! ひみついっぱい,三の丸
4 2年2組 まち,大すき! おもしろはっけん三の丸
〈生活科こぼれ話〉「あさがおへの思い」から学ぶ
第2節 「がんばる自分発見」で自信いっぱいの総合的学習
1 3年1組 ひみつがいっぱい 三の丸のお店 ――見たい! 聞きたい! 伝えたい!――
2 3年2組 人〇 まち〇 三の丸!――会いたい,たくさんのすてき――
3 4年1組 がんばり隊! 住みよい三の丸
4 4年2組 きれいな三の丸つくり隊!
〈中学年総合的学習こぼれ話〉
20年後の自分――三の丸のまちに生きる小さな大人たち――
5 5年1組 米一粒の向こうに見えるものは?
6 5年2組 『食人』たちのこだわり――米への想い――
7 6年1組 『銀杏坂』の大銀杏から
8 6年2組 廊下から見える弘道館
〈高学年総合的学習こぼれ話〉一生懸命やってわかる世の中のやさしさと厳しさ
第3節 「なりたい自分」を意識する実践のすごさ――記録から見えてくること
1 子どもが育つカリキュラムのポイント
2 今ふり返ると――卒業生は語る
U 子どもたちの育ちの姿
――一人と皆で高まる学校力
第1節 ドラマがあるから教師も張り切る
1 前校長の証言 生きて働く子どもの姿
2 現校長の所感 「校長先生,あのね」と飛び出してくる子どもたち
3 現教職員はこう考え,こう動いた
(1) 子どもたちを温かく見守るスクールボランティア活動―自分自身のために―
(2) 今日も元気に,毎日がキッズ・アドベンチャー!
(3) 「受けとめようと する意志に 満ちたまなざし」
(4) 多士済々
(5) 興味は広く,“不思議”は調べて
(6) 人とのかかわり
(7) A男のつぶやき
(8) 子どもの世界
(9) われら料理クラブ
(10) 12時55分!
(11) もう一つのダイヤモンド
(12) 思いやりの気持ち
(13) 切磋琢磨
(14) 「息づいているもの」
(15) 「名前を書いたゴミ袋
(16) 育つ思い
4 旧教職員の思いはこうだった
(1) 稲の花
(2) 「花と団子とそして愛」―黎明期(10年度後半から11年度の動きについて)―
(3) 季節感が体感できる環境づくりに学ぶ児童の姿
(4) 心のときめきが聞こえる
(5) マジックかして
(6) 伸びようとする子どもたち
第2節 子どもが伸びるから出る保護者・地域の応援歌
1 保護者はこう見ていた
2 進学先水戸市立第二中学校の先生方のご意見
3 教育実習生はこう言う
4 NHK関係者のありがとう!
第3節 全国区の目から見て――助言者の声
――日本生活科・総合的学習学会 第11回全国大会(茨城大会)関係の先生方――
1 “はじめの一歩”から“365日後の一歩”は
2 お堀も弘道館も,子どもには遊びの世界
3 生活科大好きっ子に魅せられて
4 「学級の仲間の生き方に学ぶ場」としての話し合い
5 聞き合う学び・話し合う学び
あとがき――多くの方々に支えられた研究の軌跡
研究同人

はじめに――「学校力」を高めるための総合的な哲学・展望・戦略

   早稲田大学助教授 /藤井 千春


1 学校長のリーダーシップと「学校力」

 公立学校をめぐる課題は多い。

 しかも,私立学校や塾との競争や比較の中で,公立学校に対する評価は厳しい。公立学校の存在意義はどのような点にあるのか,すなわち,塾の学習指導の方法との相違,私立学校の教育活動の特色との相違はどのような点にあるのかを明確に説明すること,また,地域の学校として,どのような特色ある学校づくりをめざすのか,そして,それをどのような方策で実現するのかを具体的に示すことが,「待ったなし」で求められている。

 「上」から言われたとおりに大過なく,他の学校と足並みを揃えて横並びで,教育活動をルーティーン的にこなしていればよいという時代ではなくなった。

 各学校での創意工夫を生かした自主的な教育活動が期待される時代となった。

 それだけに,学校長には学校経営における実力が問われている。

 しかし,意欲的な学校長であれば,このような状況を「面白い時代になった」と前向きに受けとめるであろう。創り上げたい学校像を生き生きと思い描くであろう。

 学校を子どもたち,教職員,保護者や地域の人々の元気のよさに溢れた場にできること,すなわち,次のような点に,教育活動の経営者としての学校長としての実力が示される。

 1 子どもたちが活気ある意欲と温かい仲間意識に溢れた学習活動を展開していること。

 2 教職員が子どもとの生活に自己の職務を通じての自己実現を実感していること。

 3 保護者や地域の人々が学校に積極的に生きがいを感じて協力していること。

 つまり,公立学校における教育活動の経営の要点は,子どもたち,教職員,保護者や地域の人々の活気ある意欲と温かい仲間意識,いわば「元気のよさ」を引き出して,子どもたちの「生きる力をはぐくむ」活動として組織できる点にある。そして,子どもたち,教職員,保護者や地域の人々の活気ある意欲と温かい仲間意識が基盤となって,子どもたちの成長,教職員の自己実現,保護者や地域の人々の生きがいを生み出し得る教育活動が展開されることに,その学校の「学校力」が示されるのである。

 学校長はこのような教育活動の展開のプロデューサーである。

 それだけに,学校長には,ア.人間の成長についての確かな哲学,イ.それを具現する道筋についての展望,ウ.それを辿っていくための戦略,をもつことが求められる。子どもの成長についての温かくやさしい信念,大切なことの具現のために揺れずに闘うという強い意志,長年の教師としての経験から培われた確かな知恵が不可欠といえる。つまり,「学校力」には,その学校の学校長の信念,意志,知恵が反映されている。「勇将のもとに弱卒なし」といわれる。

 どの子どもも「よりよい自分になりたい」という願いをもっている。どの教職員も「よりよい仕事をしたい」という願いをもっている。どの保護者や地域の人々も「学校に役立つような協力をしたい」という願いをもっている。子どもたちも,教職員も,保護者や地域の人々も,そのような願いが認められ,その願いの実現に向けて動くことのできる場,そして動くことを支えてくれる人を求めている。したがって,学校長の教育活動の経営における基本的な役割は,子どもたち,教職員,保護者や地域の人々のそのような願いを意欲へと転化し,さらに行動へと具体化できるようにヴィジョンを提案し,盛り上げて,励ますことである。夢と希望を与え,その実現への行動を力強く支えることがリーダーの役割である。教育活動の経営においても,そのようなリーダーシップが期待されているのである。

 教育とは,人間の可能性を信じ,その実現をめざして粘り強く働き掛ける活動である。

 哲学を固め,展望を描き,戦略を練り,そして明確な理念の実現に向けて強い意志としたたかな知恵で,子どもたち,教職員,保護者や地域の人々の前向きな意欲と温かい仲間意識に溢れた教育活動を励まし,支えることが公立学校において期待される学校長の役割といえる。

 三の丸小学校の研究活動への参加を通じて,小貫紀久先生,湯浅邦彦先生,池田吉人先生と三人の学校長と出会った。学校長に期待されるこのような役割は,これら三人の先生たちの学校長としての教育活動の経営に端的に示されてきた特質である。


2 子どもの「くらしづくり」に「総合」される教育課程

 学校に緊急に取り組むことが求められている課題は多い。

 「学力」を低下させないこと,「心の教育」に取り組むこと,「学校週5日制」に伴う行事の精選と授業時数の確保,地域との連携,「総合的な学習の時間」の実施など,直面している課題は多様である。

 まさに学校は多忙である。

 これらの課題に個別に対応していてはキリがない。ますます学校は多忙をきわめるだけである。

 要は,子どもたちを「元気よく」することである。つまり,子どもたちの活気ある意欲と温かい仲間意識を育てることを,教育課程の中心柱に据えることである。子どもたちを「元気よく」するのでなければ,子どもたちに対するいかなる働き掛けも効を奏さない。子どもたちを「元気よく」することが,教師の指導・支援が「通じる」ための不可欠の基盤である。

 この点で,生活科と総合的学習は,子どもの活動を中心に据えることのできる時間である。したがって,まずは生活科と総合的学習での学習活動において,子どもたちを「元気よく」することである。つまり,第一に,生活科と総合的学習における学習活動を通じて,子どもたちに自分からものごとに取り組みやり遂げることに対する意欲・能力・自信,すなわち「前向きな生活への構え」と,友だちや地域の人々に温かくかかわり合うことに対する意欲・能力・自信,すなわち温かい仲間意識を育てられることである。そして,第二に,その連続において,このような意欲・能力・自信が各教科や各領域における学習活動で試され,発揮され,また修正されて発展的に高められるように,教育課程を総合的に構想・編成することである。

 つまり,多様な課題に個々バラバラに対応するのではなく,子どもを「元気よく」することを中心に,総合的に対応するという発想が必要なのである。学校のかかえる多様な課題は,子どもたちの活気ある意欲と温かい仲間意識,いわば「前向きな生活への構え」をもった「元気な子どもを育てる」ことによってしか,根本的には対応し得ない課題なのである。

 したがって,生活科は低学年における一教科としてではなく,低学年における子どもたちの活気ある意欲と温かい仲間意識を育てる時間として,また,総合的学習も,たんに各教科や各領域で習得した知識・技能を総合的に活用する時間としてではなく,このような時間として位置付けることが必要となるのである。いわば,生活科と総合的学習を教育課程における「くらしづくり」の中心的な柱として位置付け,そこで「元気な子どもを育て」て,他の教科や領域における学習活動へと波及させるという戦略をたてるのである。

 このような観点からいえば,教育課程全体が,「子どもたちのくらしづくり」というテーマにおいて,総合的に構想・編成されることが必要である。つまり,「総合」は,教育課程全体において,その意味について検討され実現されなければならない。


3 子どもたちの「くらしの姿」における具現

 生活科と総合的学習の研究に取り組むことの成果は,学校のあらゆる活動における子どもの姿,いわば子どもたちの「元気のよいくらしの姿」において示されなければならない。この点で,生活科や総合的学習の研究の成果は,見栄えのよい学習活動に示されるものではない。いくら目新しい華々しい学習活動が研究発表の授業において展開されていたとしても,各教科や各領域での子どもの活動への取り組みの姿に,活気ある意欲と温かい仲間意識として示されないならば,その研究はニセモノ・ミセカケにすぎない。

 三の丸小学校では,生活科と総合的学習に取り組みの重点を置いている。しかし,研究のねらいはあくまでも生活科と総合的学習を柱,あるいは窓口としての子どもたちの「元気のよいくらしづくり」である。生活科や総合的学習において育てた意欲・能力・自信を,学校生活の全領域において関連的に発揮・発展させていくことがねらいなのである。

 このところ数年間,三の丸小学校の子どもたちの学力は向上している。

 参観者からは子どもたちの聞く態度について高く評価される。もちろん聞く態度とは,いわゆる表面的な「お行儀のよさ」ではない。発表する友だちの話を温かく聞き,自分の知っていることや考えていることとつなげて,質問やアドバイスとして関与していく力である。そのようなつながりを見付けて,友だちの発表を発展させることを助けようと真剣に聞いている。

 この点で,子どもたちの情報摂取に対する集中力が育っている。発表者の発言に,聞く側の子どもたちの温かい期待感と,吸い込まれるような集中力が見られる。このため発表者が大切なことを発言した場合,よく覚えている。だから,教師が説明した場合にも,しっかりと聞いて理解する。ドリルやプリントには全力で取り組む。このような学習に対する意欲的・積極的な構えが形成されている。だから,各教科における学習活動の効果がきわめて高いものとなるのである。

 また,子ども相互のかかわり合いが温かく活発である。地域の人々や参観者などの訪問者に対する接し方には,ホスピタリティーが溢れている。

 参観者から子どもたちの温かく明るい挨拶の声を高く評価される。そのような挨拶ができることは,学校における子どもたちの心の開放の現れである。学級では,子どもたち相互の思いやり合い,助け合う相互行為が多く見られる。お互いに対する言葉がやさしい。声や表情が和らかい。それぞれの子どもが教室における自分の居場所を実感できている。相互を尊重し合う雰囲気の中で,それぞれがみんなと一緒の中での自分の存在に素直な自信をもっている。このため,地域に調べ活動や体験活動に出掛けた場面で,地域の人々から予想外の好意をもっての対応を受けることも多い。また,地域の人から聞いた話の意味を共感的に受けとめて,その意味について深く考えようとする。そのようにして子どもたちは地域の人々とのつながりを広げ,発展させることができる。

 さらに,子どもたちが自分たちで状況を判断して動く行動を随所に見ることができる。

 多くの小学校が集まっての地区の行事などでの子どもたちの整然とした行動については,他校の教員から高い評価を得ている。また,三の丸小学校の教員からは,運動会の練習などは1回の練習だけで十分であるという声を聞く。教師の説明をよく聞いて理解し,自分たちで状況を判断して動くことができるからだという。だから授業時間を多く振り向ける必要はなかったという。当然,地域に出掛けての子どもたちの調査活動や体験活動においても,子どもたちは自分たちで安全や礼儀を考えて行動できる力が育っている。

 つまり,生活科と総合的学習の学習活動を通じて,このような意欲,自信,集中力,温かさ,自主性などを育てることが,中心的な目標として位置付けられている。それにより,各教科や各領域での子どもたちの「生きる力」が総合的に形成されたのである。

 もちろん,三の丸小学校でも,日々の教育活動においては,大小多様な問題が発生している。しかし,子どもたちの「元気のよいくらしづくり」への総合という視点に立つとき,それだけ問題の発見は早く,対応は確実なものとなる。さらに問題解決への取り組みを,子どもたちの成長にとって意義ある結果へと連続させることも可能となる。


4 「くらしづくり」に総合される学習指導の方法

 生活科や総合的学習は,学習指導と生活指導とを統一する教育活動といえる。

 したがって,このような観点から学習指導の方法は工夫・検討されなければならない。

 三の丸小学校の生活科と総合的学習における特徴的な学習方法は,「基調提案−検討方式」での話し合い活動と,地域に出かけて地域の人々とかかわり合う調べ活動や体験活動である。

 「基調提案―検討方式」での話し合い活動とは,第一発言者の発表を基調提案として,第二発言者以下の子どもたちが,それぞれ調べたことや考えたことに基づいて,質問や意見,アドバイスして,検討を加えていくという形式で進められる話し合い活動である。基調提案として発表される内容は,必ずしも完成された研究報告でなくてもよい。研究途中での中間報告でよい。むしろそのようにして自分の研究について検討を加えてもらうことにより,「みんなに助けてもらった」という意識が生み出されることが大切なのである。

 基調提案する子どもはドキドキして発表に臨む。そして,友だちからの質問や意見,アドバイスを受けて答えることにおいて,友だちの自分に対する真剣で温かいかかわりを感じ取る。そのようにして発表した子どもは,その時間,自分がみんなに主人公として認めてもらえたことや自分の頑張っている姿を受け入れてもらえたこと,自分の研究について温かく真剣な関心を持ってもらえたことなどを実感する。つまり,教師はその時間,発表者が,「自分がみんなに大切にしてもらえた」と感じられるように話し合い活動を展開させるのである。そのように発表者が実感できることにより,その後,発表者は基調提案する友だちを温かく励ますとともに,発表している友だちの研究に対して,温かく真剣にかかわっていこうとするのである。このようにして,子どもたちの聞く態度や仲間意識が形成されていくのである。

 地域に出掛けての活動において,子どもたちは単なる事象の調査にとどまらず,地域の人々に出会い,地域でくらすことに関する思いや願いを聞くように活動を展開させる。特に地域で活動する大人としての生き方に触れることができるように配慮する。

 三の丸小学校の校区は商業地域であり,古くからの商店も多い。そのような中で,子どもたちは,商店を経営することなどに関して,大人たちが抱いている目標や心がけている誠実さなどを聞き,また自分の目で大人たちのそのような活動を確かめて,その意味を考えることができる。また,「お手伝い」的な活動を体験させてもらい,大人たちと本物の活動を共有することにより,大人としての生き方の素晴らしさを実感するとともに,自分の成長への意欲を高めることができる。子どもたちは「いい生き方」をしている大人と身近にかかわることにより,つまり,大人としての誠実な活動を観察し,教えられ,また手伝い,認められることにより,よりよい自分へ成長しようという意欲と自信を高める。このようなかかわり合いが,子どもたちの「前向きな生活への構え」,すなわち,自分なりの目標を持った意欲的な生活態度や他者と温かくかかわる態度の形成を可能とする。このようなねらいにおいて,地域に出掛けての学習活動がなされている。

 話し合い活動も地域に出掛けての活動も,子どもたちの「元気のよいくらしづくり」への総合という観点から,そこへ連続されるように指導・支援されている。


5 教職員たちの自己実現,地域の人々の生きがい

 「学校力」は,直接的には,子どもたちの「元気のよいくらしの姿」において示される。また,「学校力」を高める教育活動は,子どもたちに「前向きな生活への構え」,すなわち活気ある意欲と温かい仲間意識を形成させ,それらにあふれる学校での集団的な「くらし」を経験させることを目的とする。公立学校の存在意義は,そのような集団生活を子どもたちに経験させる点にある。つまり,集団の教育力を引き出して,みんなで力を合わせて,互いに学び合い高まり合うという学習活動を経験させる点にある。

 しかし,そのような教育活動の展開が可能となるには,教職員にとって学校での「くらし」が,教師としての自己実現として充実されることが伴わなければならない。どの子どもも,よりよい自分になりたい,価値ある存在としてふさわしい活動ができる自分でありたいという願いをもっている。同様にどの教職員もよりよい仕事をしたい,価値ある教師としての自分を実感したいという願いをもっている。教職員もそのような夢と希望を持てること,そして,自分の夢と希望を実現し得る取り組みを励まされ,支えられることを願い求めている。

 したがって,「学校力」は,教職員たちの日々の仕事における自己実現,すなわち和やかな意欲に示され,また,それによって支えられるといえる。三の丸小学校の研究の進展,すなわち子どもたちと教師たちとの関係の充実に比例して,教職員の間にお互いの授業を意欲的に公開し合って考え合うという,和やかな意欲があふれていった。生活科や総合的学習は,子どもがそれぞれに自由に自分を表現できる活動である。だから,教師にとっても,子どもそれぞれが見えやすくなる。そして,教師たちには,学習活動における具体的な言動に基づいて,子どもたちに見られたよさや成長を楽しく語り合える雰囲気が形成された。そうであれば,たとえ困ったことが発生した場合にも,すみやかに対応を考え合って動くことが可能となる。

 さらに,研究の進展とともに,保護者や地域の様々な人々の好意的な協力をいただくことができた。子どもは大人に「元気」を与える不思議なエネルギーをもっている。子どもたちの純粋な一生懸命さに触れることにより,大人はかえって自分の生き方を励まされる。子どもたちを意欲的に,温かく育てることにより,かかわり合ってくれる地域の大人たちの生き方を励ますことができる。生活科や総合的学習での学習活動は,子どもたちと地域の大人たちとをつなげ,地域の大人たちの日々の生活や仕事に張り合いや生きがいを生み出すことを可能とする。

 したがって,「学校力」は,保護者や地域の人々を励まし,日々の生活や仕事への生きがいを生み出すことに連続する。そのようにして,学校の教育活動に協力して支えてくれる応援団が形成される。公立学校の「学校力」を高める応援団は保護者や地域の人々である。地域に協力的な応援団が形成されていることにより,「学校力」は加速される。

 公立学校における「学校力」は,教職員たちの自己実現を感じての仕事によって支えられ,また保護者や地域の人々の生きがいを感じての応援によって加速される。「学校力」は,子どもたち,教職員,保護者や地域の人々の「くらしづくり」という総合的な視野に立つ哲学・展望・戦略をもつことによって実現される。

 生活科と総合的学習は,まさにこのような「学校力」を総合的に高めるための中心的な柱となり得る教育活動である。

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