- はじめに
- T 高学年の授業づくりの仕事への構えと重点
- 1 授業づくりの仕事の基礎・基本
- 2 高学年の授業づくりのはずしてはならないポイント
- U 高学年の授業づくりの仕事12か月
- T 1学期の仕事
- 1 授業開き
- 2 学習目標づくり
- 3 学習規律づくり
- 4 学習集団の編成
- 5 教室環境づくり
- 6 学習形態の工夫
- 7 教材・教具の開発
- 8 予習・復習の指導
- 9 教科書の活用
- 10 学習進行のルール
- 11 朝学習
- 12 ノートづくり
- 13 学習ファイルづくり
- 14 学習のつまずき対策
- 15 通知表の工夫
- U 2学期の仕事
- 16 板書計画
- 17 座席表の活用
- 18 話合いの指導
- 19 発言の取り上げ方の工夫
- 20 個に応じた指導の工夫
- 21 レディネステストの活用
- 22 複数教師による指導
- 23 学習計画づくり
- 24 教育機器の活用
- 25 週案の活用
- 26 研究授業への取り組み
- 27 朱書きによる励まし
- 28 学校図書館の活用
- 29 地域人材の活用
- 30 保護者との連携
- V 3学期の仕事
- 31 高め合う集団づくり
- 32 主体的な学びづくり
- 33 自己評価・相互評価
- 34 評価資料の収集・活用
- 35 補助簿・子どもカルテ
- 36 成果発表の場づくり
- 37 一年間の学習のまとめ
- 38 指導資料の蓄積・引き継ぎ
- 39 年間指導計画の改善
- 40 指導要録の記入
はじめに
忙しい中でも効率的,効果的によい授業をしたいという先生方に,ぜひ本書を活用いただきたいと思います。必ずしも高い授業成果を上げている先生は様々な苦労をしていて,成果を上げられない先生は苦労をしていないということではありません。労多くして成果が薄いという先生方が意外と少なくないのです。大切なことは,ポイントを押さえ,そのコツを外さない指導をすることです。
私は,数多くの教室を訪問する機会がありますが,教室に入った瞬間に感じる空気は,それぞれ違います。例えば,あたたかい,冷たい,明るい,暗い,活力がある,よどんでいる……。
そして,その空気そのものが教育力をもっていると感じることが少なくありません。教室に入った瞬間にワクワクするような空気を感じる学級では,決まってレベルの高い授業を見ることができますし,子どもたちがしっかりと育っているのです。まさに空気の教育力です。
この「学級づくり」のポイントについては,本シリーズ既刊本「担任がしなければならない学級づくりの仕事12か月」にまとめてありますのでぜひご覧ください。本書ではそのような学級づくりを前提としながらも,特に教師の仕事の中心である「授業づくり」について編集しました。
子どもたちに「どんな先生が好きですか」,保護者に「どんな先生が信頼できますか」等のアンケートをとってみると,きまって「わかる授業をする先生」「楽しい授業をする先生」という回答がかえってきます。学校生活のほとんどが,授業の時間ですから,子どもたちや保護者にとってその時間がどれだけ充実したものになっているかが,学校生活への満足度とおおいにかかわっているのです。
学校の楽しさは,自己実現的な楽しさです。とても難しいと思っていた算数の問題ができた。絶対無理だと思っていた跳び箱が跳べるようになった。それも級友の励ましの中でできたというようなことが学校の楽しさです。
そういう意味で,教師にとっての勝負のしどころはやはり授業といえるでしょう。そのキーワードは,「信頼」です。教師の期待に応えて背伸びしてでも頑張ろうとする我が子の姿から,保護者はその教師の指導力に信頼感をいだきます。子ども自身も,確かな成長が実感できたとき先生への信頼感は高まるのです。保護者や子どもたちが信頼すると,教師の言葉は,子どもたちの心の奥にまで届くようになり,さらに授業の効率が上がります。信頼の薄い教師の言葉に子どもたちは真剣に耳を傾けません。そうなればさらに授業効率を下げてしまいかねないのです。
授業づくりには,本当にコツがあるのでしょうか。いろいろな教室を訪問していると,なかには,学習する意欲にあふれ,子どもたち一人一人が熱心に学習に取り組んでいるクラスに出会います。このような担任の先生にそのコツを聞くと,「特別なことは何もしていません。」とか「いや,別に,普通のことを普通にやっているだけです。」とおっしゃいます。そうなのです。自分では,特別なことをやっているという意識はないのです。でも,授業を拝見すると,「どの子にも,この時間はこれを学ぶんだという見通しや目的をしっかりともたせて学ばせているな」,「思わず身を乗り出してしまうような授業のスタートの巧みさがある」,「子どもたちに表現する楽しさを実感させ,積極的に話し合い学び合えるようにしている」,「起承転結があってわかりやすい」,「必要に応じてじっくりと考える場面をつくっている」,「指名が意図的,計画的で子どもたちが安心して学んでいる」など,随所に学級担任としての配慮がみられます。
ベテランとか,スーパーティーチャーと言われる先生方が,このようなことについて様々に配慮している点をコツというのであれば,確かに授業づくりにもコツがあるのです。コツは知るだけでは役に立ちません。真似することは指導力向上のはじめの一歩。ただ,そのコツをできるだけ自分のクラスに合わせ,自分のやり方にし,子どもたちや学習場面に即してヴァリエーションをもたせて活用できるようにしていくことが大切なのです。
本書は,このような授業づくりのコンセプトのもと,学級担任としてどの時期に何をすべきか,どのように工夫したらよいかなどをコンパクトにまとめています。とりわけ,「ここは,はずせない」,「ここがポイント」,「とっておきの技」,「これをやったらアウト」,「関連する仕事の心得」などについて,理屈抜きの方法論を中心にして見開きで一目瞭然で分かるようしているので,必要なときに,必要な部分を手軽に活用できると思います。冒頭に述べたように,忙しい中でも効率的,効果的によい授業をしたいという先生方に,ぜひ本書を活用いただきたいと思います。
最後になりましたが,このシリーズ本の刊行のきっかけは,「どの学級担任にも必ずしなければならない仕事がある。それがしっかりとできたならば効率よく成果を上げることができるはず」という考えを明治図書の安藤征宏氏にぶつけたことでした。このことに共感し,本シリーズ本の刊行について御尽力いただいたことに心から感謝を申し上げます。また,本企画に賛同し,ともに編集にあたっていただいた松永裕子(低学年)・坂野重法(中学年)・渋谷修造(高学年)先生にこころよりお礼を申し上げます。
平成22年12月 /杉田 洋
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- 明治図書