家庭・地域と共に育つ総合的な学習

投票受付中

総合的学習を成功に導く秘訣は、家庭や地域と深く連帯することだーということを、身をもって実践した学校が発信するヒントはこれから取り組むところへの示唆は大きい。


復刊時予価: 2,728円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-062419-2
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

はじめに これからの教育の在り方
第1章 これが大津西小の総合だ!!
T 心豊かに生きる子どもを育てるために
U 心を育てる総合的な学習の展開
(1) 総合的な学習で豊かな心を
(2) 総合的な学習の構成
V 二つのエリアで総合的な学習を
(1) 総合的な学習 エリア1(テーマでイキイキ! 学級総合タイム編)
(2) 総合的な学習 エリア2(個性がキラリ! わくわくワールド編)
第2章 個性がキラリ! わくわくワールド九つの国
1 個性がキラリ! わくわくワールド(エリア2)
(1) わくわくワールドってなに?
(2) わくわくワールドができるまで
(3) わくわくワールドの時間設定について
(4) 家庭・地域と共に
『ぼくも,わたしも,文化の博士!!』文化の国
1 「文化の国」って!?
2 めざせ! ○○の博士!!
3 さぁ,体験だ!
『お茶』を体験しよう!/ お花を体験しよう!!/ 木偶人形を使おう!!/ 博士がいっぱい!ミニ発表会
4 活動を振り返って
『ぼくら科学者,発明家』生き物と科学の国
1 大津の里にとびだそう!
2 スライムとべっこうあめ博士誕生
3 自分のめあてを持って
4 活動を振り返って
『何かできる! わたしにだって』ボランティアの国
1 どんな活動するの
2 こんなことしたいな!
3 さあ やってみよう!!
手話で話そう/ 点字に挑戦/ 車いす体験やアイマスク体験/ 幼稚園児と交流しよう/ 高齢者との交流/ みんなで地域のごみ拾いだ
4 活動を振り返って
『光の国からスポットライトを当てて』光の国
1 「光の国」とは
2 課題を決めよう
3 「光の国」から発信
1学期「学校にスポットライトを当てて」/ 2学期「地域にスポットライトを当てて」/ 西小まつり「カレンダーを作ろう」/ 3学期「インターネットで調べよう」
4 活動を振り返って
『アーティスト,誕生!』アートの国
1 「アートの国」とは
2 ぼく・わたしのしたいこと
3 アーティスト,活動開始!
「大谷焼」をしよう―1学期―/ アートの回廊―2学期―
4 活動を振り返って
『わたしたちは みんな 地球人なんだ』インターナショナルの国
1 インターナショナルの国でめざすもの
2 子どもたちの課題を大切に
3 いろいろな国の人との交流
張さん(中国)とお楽しみ会をしよう/ ハビエルさん(ボリビア)と「お茶会」をしよう/ ロベルトさん(カナダ)と英語でトーク/ 張さんと中国ギョーザを作ろう
4 活動を振り返って
『手作りって楽しいな』家庭の国
1 本当にしたいことは何?
2 手作りリースでクリスマス
こんなリースが作りたい/ えっ,これでリースができるの/ なんだ,簡単だね
3 活動を振り返って
『ぼくもわたしも からだ不思議発見隊』健康の国
1 「あっ鼻血だ!」(これは使える)
2 とにかくやってみよう!
3 不思議・ふしぎ・フシギがいっぱい
4 からだ不思議発見隊 活動開始!
5 活動を振り返って
『みんな作家で編集長』ことばの国
1 「ことばの国」は,こんな国
2 本を作ろう!
3 それぞれのテーマ
4 出版に向けて
5 学習活動アラカルト
「みんな作家で編集長」スタート/ 西小まつりで発表だ/ プロの編集者を招いて/ 「とびだせ総合発表会」にて/ みんなで総合誌づくり
6 活動を振り返って
第3章 テーマでイキイキ! 学級総合タイム
1 『なかよしペアでの1年間』 第1・2学年/ 生活科
1 テーマについて
2 年間カリキュラム
3 学習活動の様子
学校探検で「なかよしペア」結成!/ 花や野菜を育てよう/ 親子でサラダ作り/ かってみたいね/ サラダパーティをしよう/ 家の人と一緒に船を作ろう/ 秋を見つけに・冬を見つけに/ さつまいもまつり/ 4年生から昔の遊びを教わる/ とびだせ総合発表会
4 活動を振り返って
2 『であい・ふれあい・学びあい』第3学年/ 総合表現・音楽
1 テーマについて
2 年間カリキュラム
3 学習活動の様子
合同音楽/ 活動計画/ 1学期の実践/ 2学期の実践/ 3学期の実践
4 活動を振り返って
3 『ボランタリー!!〜人にやさしく,地球にやさしく〜』第4学年/ 福祉・人権
1 テーマについて
2 年間カリキュラム
3 学習活動の様子
リサイクル活動「ゴミなくし隊 起動!!」/ ふれあい活動をしよう「なんでも体験隊 発進!!」/ 活動をまとめよう
4 活動を振り返って
4 『ぼくらのふるさと! 大津大好き,人間大好き』第5学年/ 地球・環境・人権
1 テーマについて
2 年間カリキュラム
3 学習活動の様子
「知ろう! ふるさと大津を」/ 「調べよう! ふるさと大津を」/ 「守ろう! ふるさと大津を」
4 学びを総合表現で深化・発展
学習の目的/ 学習の実際/ 成果と課題
5 活動を振り返って
5 『いいな日本 広いな世界』第6学年/ 伝統文化・国際理解
1 テーマについて
2 年間カリキュラム
3 学習活動の様子
文楽人形師大江巳之助さんてどんな人/ 日本の伝統文化に目を向けて/ 他の国々に目を向けて/ 地球人になろう
4 道徳の学習における実践
単元の構想/ 社会科における取り組み/ 実践のポイント/ 道徳授業実践例
5 家庭・地域社会に向けて
6 活動を振り返って
第4章 開かれた学校をめざして
大津西の総合的な学習はこうして始まった
1 総合的な学習のプロローグ〔平成9年度〕
教師の課題意識から,総合的な学習へ/ 共通理解を図り,協働体制を組む/ クロスカリキュラム的発想で/ 平成9年度の反省と課題
2 総合的な学習の本格実施〔平成10年度〕
「心豊かに生きる子どもの育成」をめざす/ 研修主任の考えを生かす/ カリキュラム開発の手順/ 教師の特性が生きる/ 基盤に人権教育を/ 新しい酒は新しい革袋に入れる/ 「三つの間」を生かした環境づくり/ 平成10年度の成果と課題
3 総合的な学習の発展〔平成11年度〕
開かれた学校をめざして
1 全校の子どもを全教職員で
2 地域ネットワークを結ぶ
3 地域交流で教師の力量を伸ばす
地域をよく知ることから始める/ 地域人材の発掘で,総合的な学習を/ 交流で共に学ぶ教師をめざして/ 実践例より/ 地域社会の交流ネットワークで学ぶ
第5章 『愛・あいネットワーク』で「共育」を
1 愛・あいネットワーク誕生
2 愛・あいネットワークの組織および会則
3 愛・あいネットワークのあゆみ
〔平成10年度の活動〕/ 〔平成11年度の活動〕
4 活動を振り返って
第6章 新たなる展開に向けて
1 大津西小の総合的な学習について
道徳教育を基盤とする総合的な学習の構成より/ 二つのエリアで展開される総合的な学習より
2 総合的な学習で育つもの
子どもたちへのアンケートより/ 教師へのアンケートより/ 保護者へのアンケートより
3 家庭・地域と共に育つために
4 新たなる展開に向かって
5 大津西小学校の教育を引き継いで
6 大津西小に絶えず活水が流れるように
第7章 座談会「大津西小の教育について」
おおいに語る・総合的な学習の魅力
調査結果から
子どもの変容
教師自身の変化
総合的な学習でついた力
これからの総合的な学習
第8章 家庭・地域と共に育つ大津西小の取り組みに学ぶ
1 総合的な学習・連載小説・裏話
2 秋山校長の再挑戦に脱帽
3 独自の実践が根づき伸びる条件
(1) 自校の研究・実践の実績を踏まえる
(2) 教職員の協働体制を確立する
(3) 家庭・地域との連携を図る
(4) 主体的・協働的な学習スキルを育てる
4 教師の個性が輝く,個性がつながる
5 子どもの個性が輝く,自信に満ちる
6 説明責任としてのカリキュラム評価
7 さらなる学校の発展を願って
資料 総合的な学習で育つもの
おわりに

はじめにこれからの教育の在り方

 今,教育は21世紀に向け,20世紀の殻から脱皮しようと必死でもがいている。いつの世も,新しいものを創造するときには,莫大なエネルギーが必要である。そのエネルギーはどこから湧いてくるのか。それは,教育現場の教師,そして,保護者,地域の人々の次代を担う子どもたちへの熱き思いではないだろうか。

 ところで,20世紀末の現在,全国で約12万人を超える不登校児童・生徒がいる。これは,氷山の一角であり,予備軍はもっとたくさんいるかもしれない。たくさんの子どもたちが学校に不適応をおこしているのはまぎれもない事実である。しかし,教師は「それは家庭教育が悪いから」とか,「社会が悪いから」とか,責任転嫁をしていないだろうか。また,最近,学校での子どもたちの荒れの現象が問題になっている。非行とは縁のないような青少年の考えられないような犯罪が起こっている。いつ,どの子が問題を起こしても不思議でない状況である。学校での事件,事故が起こると,学校教育の在り方が悪いと世間は責めるが,それで問題は解決するのだろうか。

 子どもは社会の鏡であり,子どもの問題は,大人の生き方の問題であるといえる。そのような現状の中で,教育の在り方も変革を迫られていることを教育現場は深刻に受け止め,今こそ抜本的に意識改革を図り,家庭・地域と共に心豊かに育ち合う教育の在り方を創造しなければならない。その起爆剤となるのが「総合的な学習」であると考える。

 そこで,これからの教育の在り方について,ささやかではあるが,本校の3年間の総合的な学習の研究を踏まえて,次のことを提案したい。


○教育が変われば,子どもが変わる

 「学校はだれのためにあるのか」とたずねると,ほとんどの人が「子どものためにある」と答えるだろう。しかし,本当に学校は子どもの人間形成のために機能しているのだろうか。単に知識を教える場だったり,入学試験に強い子どもを育てることに終始してはいないだろうか。もう一度,原点に立ち返って教育の在り方を見直す必要がある。

 大津西小学校は,田園地帯にある児童数200人ほどの学校であり,保護者や地域の人々は大変協力的である。教師は,ともすれば子どもの現実も,社会の変化も考えず,安穏の日々を過ごし,決まったことを決まった通りに教えて終わりになりやすい一見平穏な学校である。

 しかし,本校の教師は教育を変えようと立ち上がった。家庭や社会の状況が変化しているのだから,子どもに変化が見られるのは当たり前である。精神的に不安定な子,不登校気味の子,塾に追われ遊ぶ時間のない子など,様々である。学校は本来子どもにとって楽しい場所でなくてはならないが,苦しい場所になっているのではないか。児童数の減少で1学級の人数が増え,過密状況になっているのではないか。もう少し,風通しをよくするためゆとりがほしいなど,その原因と対策をいろいろ話し合った。とにかく,教育の中身を変えなければ,子どもは変わらないとの結論に達した。そして,総合的な学習が心を育てるために大きな役割を担っているとの思いをもち,研究を進めた。


○子どもは地域の子として育つ

 明治5年に学制が発布され,日本各地に学校が設立された。本校も明治6年に早くも寺の境内に設置され,明治11年現在地に建築され,本年で創立120年になる。当時の学校は,地域の人が材料を持ち寄り,自分たちの費用で教師を雇って設立したのである。だから,地域の人々にとっては,「おらが学校」なのである。このような気風は山間や海辺の学校にはまだ残っている。

 しかし,現在,ほとんどの学校が地域からやや遊離した状態になっている。すなわち,学校が地域から孤立し,閉鎖状態にある場合が多い。だから,外の目で学校を批判するだけにとどまっている。また,学校も聞く耳をもたないのが現実である。

 学校・家庭・地域が共に育ち合うことが真の教育のめざす方向である。義務教育の小・中学校は,明治の学校設立当時の「地域の学校」へと帰すべきではないだろうか。地域あっての学校,学校あっての地域,お互いがよりよい関係になったとき,子どもは「地域の子」として心豊かに育つのである。


○家庭・地域と共に育つ教育

 教育を生涯学習の視点で見直した場合,学校完結型であってはならない。学校を開くとともに,学校教育のためのみという狭い考え方から,教育の本来の在り方を志向する必要がある。子どもたちのために,ゲストティーチャーを迎えることが,ゲストティーチャーの生き甲斐や学習への意欲づけになるといった双方向性のものでなくてはならない。また,PTA活動の在り方も,開かれた教育に果たす役割は大変大きい。父母が先生になったり,生徒になったりすることで,わが子の教育の在り方についての理解が深まり,学ぶことが多い。教育の根本は家庭教育にあり,保護者の意識改革を図ることも大切である。

 本校区に誕生した地域教育推進会議である『愛・あいネットワーク』の組織の活動の中心は,PTA役員や会員である。すなわち,PTA活動が学校と地域の掛け橋となっているのである。歩み始めたばかりで,まだまだ課題はたくたんあるが,家庭・地域と共に育つための推進力となっていることには違いない。

 学校・家庭・地域,そして,行政等関係諸機関が緊密なネットワークで結ばれ,同じめあてをもち,双方向性のある教育を展開することが,これからの教育の望ましい在り方である。


  平成12年3月   文責 大津西小学校校長 /秋山 敬子

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ