中学校「総合的な学習の時間」の年間指導計画

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総合的な学習のカリキュラム開発に関心が集まっている。本書は全国の中学校の先進校の年間指導計画を収録するとともに、一線の研究指導者の解説を付け、その実際を明示した。


復刊時予価: 2,244円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-061510-X
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
3刷
対象:
中学校
仕様:
B5判 116頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
1章 中学校「総合的な学習の時間」年間指導計画作成の基本
/児島 邦宏
§1 年間指導計画作成のねらい
1 教育課程と指導計画
2 「総合的な学習の時間」の年間指導計画
§2 単元づくりの要件
1 テーマの設定
2 「実態に応じて」作成
§3 年間指導計画の作成
1 年間指導計画作成の課題
2 年間指導計画作成の要件
§4 年間指導計画の運営
1 年間指導計画編成の過程
2 年間指導計画の評価と改善
2章 事例&解説/「総合的な学習の時間」の年間指導計画案
A 横断的・総合的課題を軸にした計画例
§1 地域に学び,問題解決の力を育む /岐阜大附中
解説 総合的な学習と拡散的スキル /小山田 隆明
§2 クロスカリキュラムで実施 /神戸大附明石中
解説 大スケールの構想と着実な歩み /野上 智行
§3 新しい学習ユニットの創造 /山口大附光中
解説 移行期に横断的アプローチ /加藤 幸次
§4 生徒の課題設定を充実させて /千葉大附中
解説 一人一人の課題意識を育てる /天笠 茂
§5 行事を柱とする総合的な学習 /岩手・厨川中
解説 活動の連続性を重視した柔軟な姿勢 /児島 邦宏
B 子どもの興味・関心に基づく課題を軸にした計画例
§1 生徒の疑問に基づく総合学習 /宇都宮大附中
解説 学び方の系統的な指導の試み /柴田 義松
§2 開かれた学びの場・JOIN /大阪教育大附平野中
解説 生涯学習としてのJOIN〜その意義と課題 /木原 俊行
§3 チャレンジ学習 /鹿児島大附中
解説 学習の主体性を高める工夫 /児島 邦宏
§4 体験を重視した生き方教育 /愛知・上野中
解説 正統派の生き方教育 /奈須 正裕
§5 生活に役立つアイデア製品を作ろう /香川大附坂出中
解説 教科学習と総合学習とをつなぐ「合科型自由学習」 /吉崎 静夫
C 地域や学校の特色に応じた課題を軸にした計画例
§1 地域と共にある富士山学習 /静岡・富士宮第二中
解説 地域の特性を生かした学習 /小泉 幸伸
§2 本校における「総合的な学習の時間」の年間計画 /兵庫・沼島中
解説 学校と地域が一体で生徒の学習を支援 /佐野 金吾
§3 琵琶湖を核とした総合学習例 /滋賀大附中
解説 カリキュラム開発を継続する努力とアイデア /田中 博之
§4 環境教育を中心とした実践 /北海道・西神楽中
解説 感受性,しなやかな感性を重視した学習 /児島 邦宏
§5 プランドゥ学習の年間指導計画 /愛知教育大附岡崎中
解説 生徒の満足感 85% /高階 玲治
3章 「総合的な学習の時間」年間指導計画作成の研究課題
/渡部 邦雄
はじめに
§1 「ねらい」に即した指導計画をどう作成するか
§2 学校,児童生徒,家庭,地域の実態把握をどのように進めるか
§3 多様な学習活動を想定した弾力的な指導計画をどう作成するか
§4 地域や家庭との連携を図るための工夫をどうするか

まえがき

 平成14年度(2002年)から,学習指導要領が本実施となる。それに先立って,平成12年度から,順次実施に入り,実際には即座に新しい学習指導要領に移行することとなる。

 焦点は,「総合的な学習の時間」である。何しろ,全くの未経験の世界に入るわけで,しかも,指導の目標や指導の内容には,「学校の創意工夫」という名の下に,全て学校に委ねられている。しかも,その内容は,「教科の専門性」を超えるだけに,学校にとっては全く苦悩も深い。といって,手をこまねいているわけにもいかない。

 無からの出発であるだけに,まず,一つ一つの単元づくりから出発し,その先に計画表が次第に埋められ,全体の年間指導計画の作成へとたどりつくこととなる。おそらく数年,もしかしたら,10年ぐらいかかるかもしれない。子どもからの,子どものための総合的学習であるだけに,着実な,価値のある活動を,息長く積み上げていくことこそ重要であろう。

 特に,総合的な学習の時間の指導計画作成の難しさは,極めて弾力的で柔軟な編成が求められているところにある。その指導内容において,子どもの興味・関心,学校や地域の実態をふまえつつ,現代社会の課題をどうとらえるかという,三つの枠組からテーマを設定していかねばならない。その学習活動において体験的で実践的な学習であり,子ども主体の問題解決的学習であり,ここにも学校・教師の意図や思惑をこえる要因が数多くある。

 さらに,学習を進めていく上での要件として,学習集団,指導体制,教材や学習の場を柔軟にとらえねばならない。学習時間もそうである。自然の条件に大きく依存しているとともに,他の学校との交流や地域の人々や施設等の協力をあおがねばならない。学校の一存で指導計画を作成できない事情がある。また今年の指導計画が,次年度またそのまま実施できるという保証もない。これらの要件が,刻々変わるからである。

 教科の学習のように,しっかりした軸がなかなかみつからない。マシュマロのようなフワフワした多用な要因のからみ合った中で,指導計画を作成していかねばならない。そこに,これまで経験したことのない難しさがある。つまり,リダンダンシィ(冗長度)を取り込んだ,融通の効く計画が求められているわけである。

 それだけに,教師の側の「やわらかさ」「しなやかさ」がまず必要となってきている。子どもに,本気で「生きる力」を育てようとしたら,教師自身,まず体験的で問題解決的な「生きる力」を身につけなければならない。子どもを変えようとしたら,それに先立って教師自身が変わらなければならない。総合的学習は,そうしたきつい課題を我々自身に課しているようである。

 こうした中で,すでに単元の開発に積極的に取り組み,年間にわたって単元ごとの指導計画の編成を試みている学校の実践もみられるようになってきた。本書では,そのような試行実践をできるだけ多く取り上げて,これから総合的学習に取り組もうと準備しておられる学校,または取り組んだものの一つの壁にぶつかっておられる学校のために,打開策として役立てばと思い編集したものである。

 もちろん,本書で紹介した実践がモデルということではない。「特色ある教育,学校づくり」にモデルはないし,必要ともしない。それぞれの学校が,特色ある教育を作り出すことこそ求められている。かといって,特色ある教育とは,偏倚した教育でもなければ,奇異な教育でもない。子どもに生きる力を育てることに変わりはないし,そのために子どもの生活世界や現実世界を生かすことに他ならない。眼の前の子どもに何をどうするかと,考え,作り出していければ,当然,そこにその学校ならではの「子どものための教育」が生み出されてくる。

 本書で取り上げた実践事例は,このような意味において,「特色ある教育,特色ある総合的学習」と称していいものである。特に,どのような構想から,何に留意し,どのように指導計画を作り出していったかを,参考として受けとめていただき,アイデアこそを,本書から汲み取っていただけたらと願っている。そのこともあって,余計なことだったかもしれないが,「解説」を各事例に書き加えさせていただいた。忌憚のないご批正をいただけたらと願っている次第である。


  平成11年夏   編者

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      明治図書

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