- まえがき
- はじめに
- 【基礎編】「インターネットと総合的な学習と情報教育」を考える
- 第1章 インターネットの「チョウ(超)」的特質にどう対応するか
- 第1節 「チョウ(超)」的特質の検討―「打ち出の小槌」にするために―
- 第2節 インターネット導入の意義の検討―「孤人」コミュニケーションにどう対処するか―
- 第3節 無方で無限の情報への参加型学習の検討―インターネットの普段着の教育利用のために―
- 第2章 「総合的な学習」をどうデザインするか
- 第1節 「総合的な学習」は何をねらっているのか―「生きる力」の中身を考える―
- 第2節 カリキュラムの特質からみた「総合学習」の位置づけ―「総合的な学習」の意味を正しく理解するために―
- 第3節 授業づくりのどこが違うのか―「体験知」型授業の特性をさぐる―
- 第4節 サンライズ評価をどう取り込むか―価値ある「値ぶみ」情報にするための条件―
- 第3章 情報を「軸」にした総合的な学習のすすめ
- 第1節 コンピュータ教育と情報教育はどんな関係か ―「コンピュータ教育」の変遷に学ぶ―
- 第2節 情報教育で育てたい「知力・センス・マインド」―既存教科には期待できない新しい能力―
- 第3節 情報手段を「てこ」に総合的な学習の展開―コンピュータを「人知増幅器」に使う―
- 第4節 情報を「柱」にした総合的な学習の展開―等身大の情報教育の実現を目指して―
- 【実践編1】いよいよインターネットが学校に (平成6〜8年度)
- 第1章 コンピュータの多面的な活用へ
- 第1節 CAIによる学習からインターネットへ
- (1) CAI学習の取り組みから開始(昭和61年度〜)
- (2) CAI学習の成果
- (3) 100校プロジェクトへの参加(平成6年度)
- 第2節 コンピュータ利用の日常化のための工夫
- (1) コンピュータ利用を推進する授業実践
- (2) 環境整備と研修体制
- 第2章 教科学習での活用から総合活動へ発展(平成7〜8年)
- 第1節 生き生き学習――社会,理科で活用
- (1) 社会科でのインターネットの活用
- (2) 理科学習での活用
- (3) 「ドキドキアタック」で算数学習
- 第2節 インターネットを総合活動に活用
- (1) 総合活動「情報すてたりひろったり」
- (2) 海外交流「世界はひとつ みんなともだち」
- (3) 教育活動に初めてインターネットを利用して
- 【実践編2】チャレンジタイムはこうして誕生した(平成9年度)
- 第1章 「チャレンジタイム」始まる
- 第1節 教科・領域と学年を超える試み
- (1) 「チャレンジタイム」の誕生の経緯
- (2) 学校TTで対応
- 第2節 「チャレンジタイム」の運営と組織
- (1) 初めに共通理解・確認し合ったこと
- (2) 「チャレンジタイム」展開の工夫
- (3) 研究テーマと研究の構想
- (4) 研究の組織と活動内容
- (5) 「チャレンジタイム」の年間計画
- 第2章 「チャレンジタイム」の学習指導案
- 第1節 課題の追究活動にインターネットを活用
- (1) さまざまな活動の広がりを期待して
- (2) 初めての出会い・オリエンテーション
- (3) 「チャレンジタイム」の活動
- 1) 情報入手の「1つの手段」として
- 2) 「自分らしさ」を生かした情報の加工
- 3) 相手がいることを意識した「情報の発信」
- 4) 「話し合い」活動に入手した情報を利用
- 第2節 「チャレンジタイム」学習指導案作成の工夫
- (1) 試行錯誤の学習指導案づくり
- 1) 「どんな学習指導案がいい」の検討
- 2) オリジナルの学習指導案を
- 3) 研修もかねて
- 4) 「チャレンジタイム」の学習指導案のスタイルと記載事項
- (2) 総合活動を生かす学習指導案
- 1) 「ケナフを育てよう」
- 2) 「バーチャル旅行」
- 3) 「外国の遊び」
- 4) 「趣味の追求」
- 第3章 「チャレンジタイム」の成果と課題
- 第1節 「チャレンジタイム」でどんな力が育ったか
- (1) 自ら学ぶ態度が芽生えた
- (2) メディア選択の能力が育った
- (3) 情報を収集し追究していく姿勢が育った
- 第2節 インターネット利用の成果
- (1) 情報手段の特性を理解し始めた
- (2) グローバルな活動の展開に興味を持った
- (3) 創作や表現への意欲が向上し,表現力が豊かになった
- (4) 広範囲の情報収集に関心が深まった
- 第3節 平成9年度の「チャレンジタイム」の反省と課題
- (1) 教育活動面からの課題
- 1) 活動時間の確保の問題
- 2) 倫理的な指導の必要性
- 3) 教師の支援の限界
- 4) 評価の課題
- (2) 条件整備の面からの課題
- 1) 学校としての対応
- 2) 行政面の対応
- 【実践編3】チャレンジタイムを総合的な学習に(平成10年度)
- 第1章 「チャレンジタイム」こそ総合的な学習だ
- 第1節 「生きる力」の育成を目指す活動へ
- (1) 「チャレンジタイム」こそ「総合的な学習」だと考えた
- (2) 楽しみにしている子どもたち
- (3) 「チャレンジタイム」を充実させる3つの取り組み
- 第2節 インターネットをてこに「自ら問いを持ち追究する子」の育成
- (1) インターネット利用の日常化
- (2) 「チャレンジタイム」活動で目指す子ども像
- 第3節 3年生からチャレンジだ
- (1) やるぞ「チャレンジタイム」
- (2) TT(支援)体制を崩さないで
- (3) 学年の発達段階を考えて
- 第4節 実体験活動を取り入れる工夫の検討
- (1) 何に時間をかけるべきか
- (2) 興味・関心のある課題なら何でもいいのか
- (3) 情報通信ネットワークをもっと活用しよう
- 第2章 実践を通してどんな課題,支援がよいかを追究
- 第1節 3年生の総合的な学習の取り組み―「…になろう」の実践―
- (1) 子どもの主体性をどう生かすか
- (2) テーマをどう設定したか
- (3) 総合的な学習としてどう進めたか
- (4) 学習活動の概要と学習活動案
- 1) 「自分の木となかよくなろう」
- 2) 「虫はかせになろう」
- 3) 「昆虫探検記」
- 第2節 4年生の総合的な学習の取り組み―「…したい」の実践―
- (1) 学習活動の様子
- (2) 学習活動の事例「Eメールで友達をつくろう。」
- (3) 残された課題
- 第3節 5・6年生の総合的な学習の取り組み―「学年の枠を外した活動」に再挑戦―
- (1) 複数教師を各グループに配置
- (2) 多様な支援ができる体制づくり
- (3) 「チャレンジタイム」の展開例
- 1) 「天文グループ」の展開と活動
- 2) 「環境グループ」の展開と活動
- 3) 「料理グループ」の展開と活動
- 4) 「バーチャル旅行・乗り物グループ」の展開と活動
- 第4節 総合的な学習「チャレンジタイム」の実践を振り返って
- (1) グループ分けと支援体制の在り方
- (2) インターネット利用で校内が活気づく
- (3) 評定はしないが,評価はどうするか
- 【実践編4】チャレンジタイムをこう育てたい(平成11年度)
- 第1章 学校も意識改革だ
- 第1節 生き生き学校へチャレンジ
- (1) 「興味・関心に基づく課題追究」を中核にして
- (2) 「チャレンジタイム」の時間をどう生み出したか
- 第2節 「チャレンジタイム」に夢のせて
- (1) 研究の構想
- (2) 研究組織の工夫
- (3) 「チャレンジタイム」の教育課程
- 第2章 学習活動の主役は子ども,教師はよき支援者
- 第1節 夢に向かってのチャレンジ
- (1) 何への「興味・関心」か
- (2) 課題設定,学習活動計画,学習活動ポイント
- 第2節 子どもの「チャレンジ」への支援
- (1) 子どもの主体性(参加)をどこまで認めるか
- (2) 校内や地域の人材バンクの活用
- (3) 学校TTからポイントTTへ
- (4) 具体的テーマ設定のための働きかけ・支援
- 第3節 発達段階を考えた各学年の取り組み
- (1) 総合的な学習の基本的な活動過程
- 1) 課題をつかむ
- 2) 課題を追究する
- 3) 成果をまとめる
- 4) 成果を発表する
- 5) 自己を振り返る
- (2) 3年生の「チャレンジタイム」の取り組み
- 1) 教師が目安を示しながら
- 2) 3年生「チャレンジタイム」のオリエンテーション
- 3) テーマ設定に向けて
- (3) 4年生の「チャレンジタイム」の取り組み
- 1) 3年生の経験を生かして
- 2) 「チャレンジタイム」の活動形態
- 3) 4年生「チャレンジタイム」のオリエンテーション
- 4) テーマ設定に向けて
- 5) 児童の活動がわかるように
- (4) 5・6年生の「チャレンジタイム」の取り組み
- あとがき
はじめに
「学校には教育財産がない。」といわれる。
子どもの学習状況や行動・性格などを記録した指導要録などは法令の定めもあって保存されているが,教科の指導法の記録や学習指導案などを整理して保存し,日常の授業改善に役立てている学校はほとんどない。
その最大の理由は,授業改善を目指した研究が,発表会のための「線香花火」で終わるケースが多いからである。わかる授業とか,一人ひとりを生かす授業,あるいは教育機器の有効利用やコンピュータやインターネットの活用と,授業研究は華やかである。
だが,その時々の流行に押し流され,財産として価値のある地道な研究があまり行われないためか,役に立つ教育財産がきわめて乏しい。変転の激しさに記録を財産として蓄積し活用する余裕がないためかも知れない。
残念ながら,これでは思いつきの場当たり的な授業改善であって,真の授業改革は期待できない。
「継続は力なり」という諺がある。
コンピュータを導入しインターネットを利用すればよい授業になるわけではない。「付け焼き刃」的な利用の派手さを装っても,それは流行に乗った「ごまかし」であって,子どもにとって真によい授業になるわけがない。地味な研究の継続的な積み重ねが「力」になって初めて授業改善につながるのであり,メディアも活きてくるのである。それが真の授業改革である。
そのためには,どうしても貴重な教育財産の蓄積が必要なのである。財産なくして「継続」できないし,従って「力」にはならないのである。流行と継続の混同は厳に慎む必要がある。
本書の基礎編は,総合的な学習でインターネットを活用する際に基本となる考え方や実践の在り方をまとめてみた。価値のある教育財産にするためである。
また,実践編で収録した淵野辺小学校の教育実践は,教育財産の蓄積と継続の力が生み出した1つの成果例である。メディア活用のための研究でなく,授業改善を基底においたメディア活用の研究成果である。派手ではないが,子どもに視点をおき,時代の変化を視野に入れ,一歩一歩築いてきた授業改善の歩みの蓄積であり,現在も継続中である。そのプロセスに注目して授業実践の変化を読み取っていただき,ご批判を賜れば幸いである。
平成11年7月6日 /古藤 泰弘
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- 明治図書