教師・人間の記録1底辺を歩く「解放の学力」を求めて

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部落解放の学力を求めて苦斗をつづけた著者の人間としての成長記録。著者のたたかいは「東大学力」または「東大周辺学力」との対決であった。


復刊時予価: 2,959円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-060131-1
ジャンル:
人権教育
刊行:
対象:
小・中
仕様:
B6判 216頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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プロローグ
T 荒野のうた
〈兎追いしかの山〉
一 桔梗ヶ原
母の手帳/ 小屋の板戸/ 切り株
二 ケンジ先生
面かぶり/ 黒板の前で/ その人生を
三 貧しく情けなく
ゴミ小屋学校/ ゲイシャカイ/ ブドウ棚の下で
四 コーサたち
村の財バツ/ コーサとタイサ/ 三角形の面積
五 松岡ヨヒョー
わが文化/ 張出し新聞/ 女工―ネエチャン
〈青春とは何だ〉
一 「デッチ」と中学生
室戸台風/ ひとつの岐路/ 若い教師・オカガ先生
二 甲と丁と
ある出会い―カサハラ先生/ つまらん学校/ 戊をとれ!
三 模索一年
ガキ的市民権/ タダの学校/ ヤミ勉
四 ストライキ前後
ヒラ君/ ことの発端/ 陰謀対ストライキ/ 退学―欠落一
五 李の木の下で
迫いこみ/ 松高前後/ 暗い文化/ 母の涙
六 サボタージュ二年
この対面/ これが教師か/ これが学校か/ 学成りがたし
モノローグ
U ここで勝負を
〈青い山脈〉
一 学級という集団
対面のさま/ ケンカ対策/ 原始的学力論/ 学級の学力構造
二 子どもの生活と学力
生活をめぐる教育論/ 美保の背すじ/ 英雄の提起
三 集団の組織と子どもの成長
「ここはお国を」/ 「手−むすびあうもの」/ 集団主義教育とは
四 突破口 ― 部落子ども会
子どもたちの成長をめぐって/ 子ども会の組織を/ 諸課題の表出
五 私が追われた道---「劇・先生が五人」をめぐって…
その発端/ 劇・その内容/ 差別の所在/ 断層/ 子どもと親たち/ オノレみずからに
〈未来への挑戦〉
一 再出発・心ゆたかなり
岩倉と子どもたち/ 忍術でいこう/ 上・下水道方式
二 「これから大きくなる君たちに」
三年二組/ 親たちの思い/ 特集「歴史」
三 「むら」の歴史を探る
グループ活動/ 戦争と私たち/ 親と子どもたちの間
四 試合―「はだかの王様」
文学作品と社会的背景/ 試合開始/ 「先生の負け」
五 点描 ― 一九六八年
ある授業/ わが悔恨/ 別れに/ 私の教育・学力論
エピローグ

プロローグ

 汽車には「上り」「下り」がある。子どもの頃は坂を登るから「上り」、下るから「下り」だと疑わなかった。

 ところが、さにあらず。いつ頃からか東京を中心とした「上」「下」なのだとわかった。事情はいまでも変わらない。

 学力論についても、同じことがいえそうだ。「上り学力」の最終点は「東大学力」。これが日本の学力論とされ、あとはコッパ学力扱い。「上り学力」に対して「下り学力」というべきだろうが、これが多様。やがて太い根をはるにちがいないが、いまは黙したままだといってよい。

 「下り学力」の典型が私の学力論だろう。「部落解放の学力」「解放の学力」となるのだが、これらは、いわば分野的な側面をもってはいる。だが「東大学力」ないしは「東大周辺学力」論との決定的なちがいは、教育実践から生まれているということだ。

 それも、平均的ではない。私は高校を除いて、小学校から大学まで幅広く教師をしている。高校を除いた理由は免許状がないから。あるのは小・中学二級だけ。もし三級・四扱があったら、そこに居すわっていたにちがいない。

 すると、私を知らない人は、こう想像するだろう。彼は貧しい育ちだが秀才だと。いや、とんでもない。貧乏はたしかだが、秀才どころの話ではない。小学生の頃は「勉強さっぱりグループ」の一番バッター。以後も、全部が全部とはいわないが、学校といえばサボタージュの場くらいにしか考えていなかったのだ。

 だから私は、学力論に力をいれる。いれなくてはならないと思っている。もちろん、学校が窓口ではない。私の全生活、全体験から。出発点は、わが生育史からとなるだろう。

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