- はじめに
- 第1章 モラルスキルトレーニングをやってみましょう!
- 1 モラルスキルトレーニングって何?
- (1) 道徳的行動を技能として指導できないでしょうか?
- (2) 問題行動に対する生徒指導的な対処を事前に行えないでしょうか?
- (3) 型をつくり,心を入れる
- (4) スキルは分解できる
- (5) モラルスキルトレーニングって何?
- 2 モラルスキルトレーニングの流れはどうなっているの?
- (1) ソーシャルスキルトレーニングとしてのモラルスキルトレーニング
- (2) 縣方式のモラルスキルトレーニング
- (3) 簡略版モラルスキルトレーニング
- 3 言葉が難しい…
- (1) 用語の解説
- (2) 言葉と教育実践
- 4 指導案を見てみましょう!
- (1) 指導案の一例
- (2) 資料
- (3) ワークシート
- 第2章 プログラムを簡略化してみましょう!
- 1 小学校でプログラムを簡略化するためのコツ
- (1) 栃尾南小方式の指導案
- (2) 資料
- (3) ワークシート
- (4) 春日小方式の指導案
- (5) 資料
- (6) ワークシート
- (7) 小学校における創意工夫のコツ
- 2 中学校でプログラムを簡略化するためのコツ
- (1) 中学校ならではの問題
- (2) 指導案
- (3) 資料
- (4) ワークシート
- (5) 中学校における創意工夫のコツ
- 3 高等学校で実践するには…
- (1) 高等学校における道徳教育
- (2) 高等学校版モラルスキルトレーニング
- (3) 高等学校ならではの問題
- 第3章 疑問にお答えします!
- 1 モラルスキルトレーニングの位置づけに関するQ&A
- Q1 モラルスキルトレーニングは,学習指導要領に反することはないのですか。
- Q2 学級経営の難しいクラスでも実施できるのですか。
- Q3 ロールプレイングを導入した道徳授業と同じですか。
- Q4 ソーシャルスキルトレーニングとはどういう点が異なるのですか。
- Q5 モラルスキルトレーニングに向いている内容項目はありますか。
- Q6 道徳の時間にはモラルスキルトレーニングだけやっていればよいのでしょうか。
- 2 授業の進め方に関するQ&A
- Q7 子どもたちがふざけてしまうのですが,悪ふざけを防ぐよい手立てはありませんか。
- Q8 45分(あるいは50分)間の授業時間では終わらないことが多いのですが,どうしたらよいのでしょうか。
- Q9 モラルスキルトレーニングのプログラムの流れは,かならずこの順序で行わないとだめなのですか。
- Q10 子どもたちから出た行動目標スキルを再度ロールプレイする必要はないのでしょうか。
- Q11 モデリングは教師が行うのがよいのですか。
- Q12 モラルスキルトレーニングの授業では,教師のモデルをまねするだけのロールプレイングになってしまうのですが…。
- Q13 モラルスキルトレーニングには,自作資料を用意すべきなのでしょうか。道徳の副読本と関連させることはできますか。
- 3 その他のQ&A
- Q14 モラルスキルトレーニングでいじめを取り上げることはできますか。
- Q15 「心のノート」と関連させることはできますか。
- Q16 モラルスキルトレーニングの効果はどのように測定しているのですか。
- 第4章 プログラムをユニット化してみましょう!
- 1 体験活動とのユニット化
- (1) 体験活動
- (2) 体験活動とモラルスキルトレーニング
- 2 学級活動とのユニット化
- (1) 特別活動と学級活動と道徳教育
- (2) 学級活動とモラルスキルトレーニング
- 3 他の道徳の授業方法とのユニット化
- (1) 伝統的な方法
- (2) モラルジレンマ授業
- (3) 価値明確化
- 4 ユニット化のコツ
- 第5章 さらなる発展を目指して…
- 1 そもそも道徳教育ってなんでしょうか?
- (1) 道徳の多様性
- (2) 個の自立と集団への帰属
- 2 不易と流行について考えてみましょう!
- (1) 道徳における不易と流行
- (2) 人権教育と道徳教育
- 3 スキルとメタスキル
- (1) モラルスキル
- (2) メタスキル
- おわりに
はじめに
十分な人間関係を築けずに,さまざまな問題行動を起こす子どもたちがいます。彼らは,道徳性が育っていないのでしょうか。一面においては,そういうとらえ方もできるかもしれません。しかし,道徳の時間には正しい答えを出せるのに,問題行動を起こしてしまう子どもたち,あるいは,そうした問題に巻き込まれてしまう子どもたちを見ていると,道徳の時間に培われる道徳性の問題だけではないように私には思えてくるのです。子どもたちに対しては,具体的な行動の指導をも含めて道徳的な行動につなぐ支援をしなければならないように思うのです。
そうした視点から,私たちは,行動の指導を手がかりにして道徳性を育てるモラルスキルトレーニングを提案してきました。すでに,『小学校 道徳授業で仲間づくり・クラスづくり モラルスキルトレーニングプログラム』(明治図書)と,その中学校版が公刊されています。
こうした書物の公刊によって,私たちの考えが広まるのはとてもうれしいことなのですが,同時に,さまざまな誤解やそれに基づく批判も生じており,また,実践した方々からもさまざまな質問が寄せられています。たとえば,「道徳の時間に行動の指導を行うのはいかがなものか」「それは学級活動の時間に行うべきものではないのか」などの批判や,「モラルスキルトレーニングをやればそれだけで道徳性は育つのですよね」といったような誤解,また,「たくさんのことが盛り込まれていて,1コマの授業ではこなせないのですが,どこか省いてもいいですか」というような質問などです。
そこで,初めてモラルスキルトレーニングに取り組まれる方々にもわかりやすいスタートブックを公刊し,誤解を解き,質問にも答えたいと考えました。
私は,これまでに,県や市町村の教育センター,また,各小中学校の校内研修会で,さらには,教員免許更新講習や,大学の公開講座などでモラルスキルトレーニングの研修会をやらせていただきました。そうした中でたくさん寄せられた質問を中心に,本書の内容をまとめました。
本書では,児童生徒のいくつかの問題行動に関する事例が取り上げられています。とくに断りのないものは,いずれも私が体験したものですが,当人が特定されないように修正を加えてあります。
私たちは,モラルスキルトレーニングをMoST(モストと読みます)と略記することがありますが,本書では,そのままモラルスキルトレーニングと表記しています。本書を途中から読まれる方が混乱することのないようにと考えてのことです。
本書で用いている「私たち」という表現は,私の他に,モラルスキルトレーニングの考え方に賛同して教育実践研究に協力してくださっている方々を指しています。本書は単著の形で出版しますが,そうした方々の支援なしでは本書の出版は不可能でした。日頃からお支えいただいていることに厚く御礼申し上げます。
今回も,明治図書の佐藤智恵さんにはたいへんお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
上越の地にて /林 泰成
Q&Aもついているので、実際に疑問に思ったことの回答が掲載されていた。