総合的学習への挑戦17総合的学習の発想力・構想力

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総合的学習の方向がゆれている今日、指針の方向付けやどう設計していくかについて、ドイツの現場で体験したことをふまえ、具体的に提言する。


復刊時予価: 2,563円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-039612-2
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
A5判 160頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
T 21世紀の教育を創る総合的学習の指針
1 総合的学習は,児童生徒の学習負担を軽くする
2 自主的計画と協働する活動は,児童生徒の問題解決の展望を広くする
3 多元的な評価活動は,児童生徒の興味関心と社会的展望を強める
4 総合的学習は教師中心の学校,学問を伝達するだけの大学を変革する
5 総合的学習は,教科の活性化についての論議を刺激する
U 総合的学習の授業方法を提案する
1 授業の内容を捉える視座の発展
(1) 授業の内容とは何か/ (2) 授業の内容が,真に授業の内容になるための条件
2 授業方法の整理と拡充:多様な学習の型の採用
(1) 授業方法とは何か/ (2) 授業方法の具体像とその整理/ (3) 授業における「行為の型」
3 合科的・関連的な扱い:「星空」の実践から
4 柔軟な時間割と力の付く指導:グルントシューレ,ハウプトシューレの事例から
(1) 柔軟な時間割:グルントシューレの事例から/ (2) 力の付く指導:ハウプトシューレの事例から
5 子供の驚きと問いかけ:メディア時代に教師は何ができるか
(1) メディアの亢進時代と子供の驚き/ (2) 子供の驚きが生じる4つの可能性/ (3)  「驚き」の持つ両面性と子供による「問いかけ」を育てる
6 行為志向の教授学:基底にある人間像と7つのメルクマール
(1) 行為志向の授業の定義とその基盤に置かれた人間像/ (2) 行為志向の授業の7つのメルクマール
7 本物志向のプロジェクト:オスターンブルク校の取り組みから
(1) プロジェクト:「ハウス」「ボート」「コンピュータ」/ (2) プロジェクトの「教程(課程)」/ (3) プロジェクトの成果
V 児童が描く将来像から総合的学習を設計する
1 児童の絵と将来展望
2 ドイツの小学生は描いた絵を手にして何を語るか
3 ドイツ:「工場の絵」に見る男女差
4 「私の絵」に見る日独比較の視点
5 低学年児童の「私の絵」(1,2年生)
6 中学年児童の「私の絵」(3,4年生)
7 高学年児童の「私の絵」(日本の6年生)
8 全体考察
W ドイツの総合的学習―ここを取り入れよう
―現地で見たよいところのポイント紹介―
1 プロジェクト「イングランド」の組み立てはこうだ
(1) 小学校の訪問/ (2) プロジェクトの様子
2 「教材の箱」誰がそれを作るのか
(1) 教材の箱(Kiste,キステ)/ (2) 誰が教材を作るのか/ (3) 使った教師の感想
3 児童理解=それは別の教え方を学ぶこと
(1) 児童理解/ (2) 子供解釈/ (3) 別の仕方で教えることを学ぶ
4 博物館学習の仕組みはこうだ
(1) 博物館での催し物/ (2) 子供のための催し物
5 改革学校の理念と年齢混合クラス
(1) カッセルの街/ (2) 改革学校とは何か/ (3) 年齢混合クラスの授業から
6 事実教授の内容を紹介する
(1) 事実教授の「内容」は,いったいどこから来るのか?/ (2) 事実教授の構成原理/ (3) カイザー教授が推奨するプロジェクト例
7 ドイツで「小学校英語授業」を体験する
(1) 10項目インタビュー/ (2) 2年生の英語授業から
8 男と女の間―「自分らしさ」の教育―
(1) 物怖じしない女性/ (2) 私の息子をマッチョになんかさせない/ (3) 教育の場面での論議から
9 職業体験とボランティア―徴兵制のあるドイツの若者は今―
(1) 「アルテック」の工房/ (2) 中等教育でのプラクティクム
10 ドイツ流教師生活の24時間
(1) 柔軟に構成される時間割/ (2) 教師の職務/ (3) 自宅で
11 事実教授と総合的学習の未来
(1) 事実教授と総合的学習の未来像/ (2) 授業方法の革新
12 体験的日独比較文化論
(1) 言葉と人間,責任意識/ (2) 自主性と創造力/ (3) われわれは何を学べるか
あとがき

まえがき

 2002年度から,「総合的学習」を設けたわが国の新しい教育課程が全面実施となる。「総合的学習」の本格的幕開けである。だがそれは,「総合的な学習の時間」だけをどうにかしておればそれでよい,という話ではない。そこには,各教科の学習と総合的学習との「共存」をうまく果たすように,授業方法それ自体を発展させ,革新しなければならないという課題が潜んでいる。

 そのために,どうするか。本書は,こうした問題意識を持ってドイツのオルデンブルク大学で10ヶ月間留学する間に経験し,考えたことを日本の現状にも何か生かせるものがあるのではないか,私なりに問題提起してみたいと考えた。ドイツ(と言ってもそれはオルデンブルクを中心に経験したことだが)と日本とでは,人間としての基本感情や社会の在り方において共通するところも多い。だが,授業の構想や実際面など授業方法の捉え方については発想の違いというか,“知の構造”の違いがある。それらを垣間見ることは,ドイツ流の物の見方・考え方を知るのに役立つだけではなく,21世紀のわが国の教育について思いを馳せ,授業方法を革新するためのアイデアを得る絶好の刺激となろう。著者としては本書がそのように役立てられることを祈っている。

 さて,本書は,2000年度に明治図書の月刊誌『総合的学習を創る』に連載したものがベースになっている。それは本書の第W章に加筆して収録しているが,本連載を始めるように誘ってくださったのは明治図書編集部長,樋口雅子さんのご厚意による。この連載をドイツで書き,メールで送り,関連する事柄についてさらに調べたり尋ねたりすることで,ドイツでの10ヶ月間を憂鬱な気分に陥らず,無事過ごすことができた。それは在外研究において私の支えとなったものである。この度本書を出版することができたのも彼女のご尽力による。これらの意味で,樋口雅子さんには真っ先に深甚の感謝を申し上げたい。

 なお,本書には,翻訳して紹介した内容も多い。誤訳のないように極力注意したが,それでもなお誤りや不十分な箇所があるかも知れない。何卒ご寛容をいただくと共に,ご批正をいただければと願っている。


  2001年3月   著  者

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      明治図書

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