- はじめに
- 第1章 知能と創造性の心理
- 1 知能とは何か
- 2 知能の構造
- 3 知能の測定
- 4 知能と学力
- 5 創造性とは何か
- 6 創造性とその構成因子
- 7 創造性の測定
- 8 知能と創造性
- 9 知能と創造性の発達
- 10 創造性の発達に影響を与える様々な要因
- 第2章 日本の子どもの学力と創造力
- 1 学力の国際比較
- 2 日本の学生の数学の学力
- 3 日本の中学生の理科の学力
- 4 なぜシンガポールは,理数科の成績及び態度において世界ナンバーワンなのか
- 5 創造性と感性の国際比較
- 第3章 生きる力と創造力
- 1 生きる力とは何か
- 2 なぜ今生きる力の育成が必要なのか
- 3 高度情報化・国際化社会における学習と創造
- 4 生きる力を構成する教育心理学的概念
- 5 創造力の発達と教育に関する理論的考察
- 6 体験の質と創造性
- 第4章 生きる力の測定と育成
- 1 生きる力の測定と評価の観点
- 2 生きる力を心理学的に測定・評価する
- 3 西条小学校における生きる力の育成
- 4 好奇心と創造力の育成
- 5 創造(創り)を育てる授業展開例
- 第5章 思考力と創造力を伸ばす
- 1 思考空間は拡大できるか
- 2 制約のない自由な思考条件は発明の質を高めるか
- 3 思考力と創造力を伸ばす諸技法
- 第6章 概念地図法の展開
- 1 認知構造とは何か
- 2 学習に果たす認知構造の役割
- 3 認知構造と概念地図法
- 4 概念地図法による創造力の育成
- 5 概念地図法の導入方法
- 6 概念地図法による授業の新展開
- 7 概念地図の評価
- 第7章 総合的学習の展開と評価
- 1 総合的学習のねらい
- 2 環境教育
- 3 国際理解教育
- 4 情報教育
- 5 福祉教育
- 6 地域学習
- 7 ポートフォリオ学習とその評価
- 第8章 インターネットで質問力・好奇心を伸ばす
- 1 インターネット
- 2 インターネットと教育
- 3 インターネットを使うことの利点
- 4 インターネットに存在する情報を手に入れる
- 5 インターネットに情報を発信する
- 6 インターネットによる創造啓発
- おわりに
はじめに
平成14年度より小・中学校に「総合的な学習の時間」が正式に導入される。なぜ今このような総合的学習が必要なのであろうか。第1は,これまでの「知識の伝達を中心とした授業」から子どもの興味・関心等に基づく「内面からの学びを重要視した授業」への転換,すなわち「教科書に沿った一斉学習」から一人ひとりの子どもが「学ぶ意味を実感できる学習」へと授業を変革する必要のある時代がやってきたということである。第2は,「学び中心の教育」から「創りを重要視した教育」への時代が到来したということである。教科書から学び,教師から学び,先輩や両親から学ぶという態度は日本の社会や学校では高く評価されてきた。しかし現在すでにその渦中にある高度情報化社会では常に変革が要求されるので,過去からの学びのみでは生き生きとした生活はおくれない。学びを基礎としつつも,創り(創造)の資質を育てない限り,子どもは学校の中だけの優等生に終わる危険がある。第3は,子どもの心の成長や社会的資質の発達に関連している。現在の学校は,程度の差こそあれ,校内暴力,非行,いじめ,登校拒否,さらに進んでは学級崩壊という病理的な現象を抱えている。
このような中で,子どもの「生きる力」を伸ばすにはどうしたらいいだろう。それには,「生きる力」を明確に定義し,それを伸ばし,測定し,さらに評価するというプロセスを省略することはできない。もしこのプロセスを省いてなおざりな教育実践を続けると,戦後の「這い回る経験主義」を繰り返すことになる。本書は創り(創造)を中心に据えて,創造力を伸ばす各種の技法を縦糸に,生きる力の測定と評価を横糸に織り込んで総合的学習の新たな展開法を提唱したものである。すぐれた教育実践に役立つことを願っている。
2001年盛夏 信州鳴沢自然郷にて 著者しるす
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- 明治図書