オープンスクール選書7
個性化教育へのアプローチ

オープンスクール選書7個性化教育へのアプローチ

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復刊時予価: 2,816円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-036504-9
ジャンル:
学校経営
刊行:
10刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 196頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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はじめに
I章 教育の今日的課題と私たちの願い
1 学校改革にかりたてるもの
学校教育批判にこたえる/私たちの反省/果てしない論議/崩れおちる旧校舎の砂塵の中で
2 新しい学校づくりへの模索
鼓動が聞こえる/多様な学習を保障する校舎の誕生/このスペースで何を/父母の不安感/教育目標の見直し
3 子どもと教師が創り出した学校
徹底した個別化へ/教育課程の全体を問う/燃える教師集団/おし寄せる参観者/「子どもたち」から「この子」へ
U章 教育課程の編成と実施
1 教育課程編成のための基本的な構え
二一世紀に生きる子どものために/学習指導要領の示唆するもの/「子どもと学習」という観点から
2 六つの学習プログラム
はげみ学習/集団学習/週間プログラムによる学習/総合的学習と総合教科学習/オープン・タイムの学習/集団活動
3 教育課程編成の視座
個別化と個性化のバランス/一人学習と共同学習のバランス/教科学習と総合学習のバランス/教育課程実施の基本的条件
V章 私たちが持に努力したこと
1 日常的で長続きする実践を
個人技からTTへ/協同で学習材を開発/研究をすすめるしくみ
2 フレキシブルな感覚で
子どもがつくる日課表/ランチ・タイムのゾーン化/複数教科並行学習/校内すべてを学習の場に
3 家庭と学校をつなぐ
輪を広げるボランティア/学校の動きを家庭へ/通知票の改定
W章 本校のめざす新しい学校教育の姿
1 基礎的・技能的な内容の習熟をはかる「はげみ学習」
九九がいえない/無学年ラーニング/四通りの治療学習/「子ども先生」の活躍/「先生!一年生の教科書がみたい」/無意味な他人との比較/読むこと・書くことの条件/知らない文字への挑戦/体育のはげみ/練習と検定/夏休みの三日間/あふれるリコーダーの音/成り立たない一斉指導
2 集団の中で個をはぐくむ「集団学習」
詰め込み教育をしてきたか/集団学習がねらうもの/集団学習の三つのパターン/学年協業の必然/私の先生は四人/すわりこんで学ぶ/あと指二本!/わかることの喜び/苦手意識をふっとばせ
3 一人学びで課題に挑戦する「週間プログラム」による学習
必要なのは学ぶ力/自学する子どもたち/問われる教師の力量/学習パッケージの開発と構成/マッチがすれない/教師の常識を破る/三割は教えない/教室の壁はいらない/全校が図書館だ/学習意欲を刺激する環境づくり/自学への意欲/これで学力はだいじょうぶ?/自由なことはハードなこと/「授業」の錯覚/一人ひとりに応ずるための工夫
4 生活の中から課題をつかむ「総合的学習」
低学年教育を問い直す/合科的から総合的へ/総合的学習のねらい/こんなこと見つけたよ/こんなことやろう/時間割のない学校/トピック学習/子どもの興味をつかむ/教室からとび出す/みんなのラーニング・センター/ぼくにだってできた/おかあさん わかって!/あっ あかちゃん/みんな友だち/がんばれヒマワリ/駅長!電車は?/さらなる追求へ/中・高学年にも総合的学習を/学ぶことに必然性と切迫感を/「生きる」ってなんだ
5 個性的な学習を保障した契約学習としての「オープン・タイム」
輝く子どもの瞳/教科枠をはずす/契約学習としてのオープン・タイム/子どもは本来勉強好き/学年差を越えて学ぶ/失敗も大切な学習/先生の夏休みの課題/先生にもわからない/広がるボランティア活動/ボランティア室の設置/原始時代を再現/緒川の史跡調べ/九州安上がり旅行/夏休みはオープン・タイム/一人ひとりをみつめる
6 協調性と連帯感をはぐくむ「集団活動」
おがわっ子フェスティバル/集団活動は学習を統合する/ほんものの投票箱/やった!要求額を守ったぞ/だれでもが参加を/発起人がクラブをつくる/季節の伝承行事と「つどい」/ペア学級とザリガニ事件/ランチタイム・ゾーン/〇〇しよう遠足/先生の見えない運動会/修学旅行のプランナーは子どもたち/ばらばらメニューの林間学校/始業式・終業式はいらない/「朝礼」もいらない/感動を呼ぶ卒業式づくり/一人ひとりのために/存在の証しを
X章 適性に応じた教育を支えるもの
1 職員室の解体と個人カルテ
個をとらえるとは/職員室の廃止/個人カルテヘの書き加え
2 学習指導要領との関連
特色ある教育過程づくり/本校の教育計画
3 学校予算
4 PTA活動と学校
会員みんなのPTA/教育活動との直結
おわりにかえて―創造的・個性的な子どもを育てる
国立教育研究所主任研究官 /加藤 幸次
付表

はじめに

 私たちの学校を参観された幾人かの方々から、「日本にも、こういう学校があるのを知って、うれしかった」という感想をうかがうことがあります。本校の職員は、別にめずらしい学校であるというようなことを意識したことはないのですが、どうも特別扱いをされているようです。そうした話を聞くたびに、実は、本校のようなささやかな実践が目新しかったり、新鮮に映るような時代であってはならないのではないか、とも思うのです。私たちは、むしろ日常の実践が子どもで語れるものになっていない気恥ずかしさと、一人ひとりの適性に応じた教育の難しさに悩むことの方が多いのですが、今回、各方面からの勧めもあって実践の貧しさも顧みず稚拙なあゆみをまとめることにしました。

 本校は、名古屋市の南方、知多半島の付け根に位置した東浦町に在り、児童数一〇〇〇名弱の極く一般的な小学校といえます。木造校舎の老朽化と児童数の漸増のため、オープン・スペースをもった校舎に全面改築されたのを機に昭和五三年から新しい教育に着手しました。

 今日、教育に対する批判は国民的とまでいわれるほどになっています。それは、教授学習組織・教材や評価の在り方・学校運営・学習環境など、まさに今までの学校教育全体が問い直しを迫られているという認識に立つべきだと思います。そうした中で、学校現場に身を置く私たちに求められているのは、教育政策に対する声高な提言もさることながら、八百屋の店先でお母さんたちによって語られるような学校や先生に対する不満や不信にもまじめに答えていく、いわば日常レベルの現実的な改革でなければならないと考えています。

 具体的に私たちが力点を置いてきたのは、伝統的な一斉画一授業から勇気をもって踏み出すことであり、一人ひとりの子どものもつ適性を最大限に尊重して学習を子どもに返すことでした。それは、単に個別化教育にのみ傾斜することではなく、さまざまなバランスに配慮しつつ公立学校としての使命を十分意識した独自の学校教育課程の編成に歩を進めることでもありました。

 一年次(昭和五三年度)は、オープン・スぺースをもった校舎建築に呼応して、基礎的な理論や算数科を中心とした個別化教育のあり方を研究する一方、子どもたちの学校生活全体を見直し、広い視野から姿を変えるための手だてを探りました。

 二年次(昭和五四年度)は、「子どもと教師が共に創るフレキシブルな学校を求めて」の主題のもとに”基礎学力の充実と楽しい学校生活のプログラム”の副題を掲げて実践に入りました。ここでは、同一学年であっても子ども一人ひとりは異なった適性・能力をもっていることを認めたうえで、低学年の「合科的」指導への試み、高学年の「週間プログラム」による自学、「オープン・タイム」などをスタートさせました。

 三年次(昭和五五年度)は、前年度の主題を継続しながら、教育課程編成の視点として「指導の個別化」と「学習の個性化」を明確にし、学習の六つの態様を確立させました。この年から、現行のブロック制による日課表を採用しました。

 四年次(昭和五六年度)は、副題を”適性に応じた教育具現への一歩”と改め、個に応じる指導の内実を強化するため個人記録票(カルテ)の取り組みを始めました。

 五年次(昭和五七年度)は、「適性に応じ自ら学ぶ学校生活の創造を求めて」の主題のもとに、個人記録票の吟味と併せ、態様ごとに個性的課題追究場面を拡大したり、ボランティアの効果的な導入を図っています。

 本校の総合プランづくりには、国立教育研究所主任研究官の加藤幸次先生に終始多大の示唆とご教示をいただきました。また、日常的な実践や研究に際しては、県教育委員会・県教育センター・知多地方教育事務協議会・東浦町教育委員会の暖かいご指導・ご支援をいただきました。加えて、豊富な経験や幅広い視野から、「(財)二一世紀教育の会」の亀田佳子先生、愛知教育大学の大野元三先生・大須賀康宏先生から、ご指導を受けました。紙面を貸りて、厚くお礼申しあげます。

 本書を執筆するにあたって、私たちは、教師にしか読まれない教育専門書や、単なる「学校の研究物」にしたくないと考えました。今日的な教育の課題は、なにも現場教師だけの問題ではなく、父母と教師が手をとり合わなければ効果をあげることはできません。それだけに、私たちは本書をお父さん・お母さんにこそ読んでいただきたいと願っており、多くの先生方や若い学生の方々にも問題を投げかけたいと思っています。そうした考えから、形式にとらわれずに、学校の生の姿を紹介するW章に多くのスぺースをさき、具体的にイメージ化していただけるよう配慮しました。ここでは、努めて平易な文章で、理論的な色彩を薄めたつもりですが、その中から私たちの主張を読みとっていただければ幸せです。また、新しい教育プログラムの理論については、できるだけ圧縮してU章にまとめてあります。オープン・エデュケーションの理論や実際に興味をお持ちの全ての方に、どこからでもお読みいただきたいと思っています。

 実践をはじめて五年、新しい教育プログラムによる実践は、緒についたばかりです。読者の皆さまの率直なご批判をいただき、ご指導・ご助言を賜わりたいと思います。

 最後に、この出版を快くお引き受けいただき、格別のご厚意とご尽力をいただいた明治図書の園田桂子氏・平野真弓氏に、心より感謝とお礼の意を表します。


  昭和五八年一月   愛知県知多郡東浦町立緒川小学校長 /高木 省三

著者紹介

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※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    • 学校教育の在り方、子ども観、授業観の変換が必要になっている現在、緒川小学校の取り組みが注目を集めています。実際に参観することは難しいですが書籍で学びたいと思っています。
      2024/3/12なべ
    • 現在,「新しい」とされている教育も,原理・原則は変わることなく,本書に具体化されていると思っています。復刊,ありがとうございます。
      2023/7/10シバセン
    • この本を志ある仲間と読み合わせ、自由進度学習を進める形にしたいと思っています。1日でも早い復刊を願っています。
      2023/7/7まえちゃん
    • 読んでみたい!
      2023/7/7ふた
    • 令和の答申でうたわれた「個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実」、その実相をこの本のなかでみることができます。学校は教師の創造性でこんなにも豊かな学びの場になるのだと感じられる、今こそ読みたい本です。
      2023/6/16

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