- まえがき
- 生きる力を育む総合的な学習
- 北九州市立祝町小学校教職員一同
- 総合的な学習「生活創造科」の開発の原動力―カリキュラムコーディネータとしての教師―
- 千葉大学教授 /天笠 茂
- 教科再編成のコンセプトを総合的学習で―祝町小学校の「生活創造科」―
- 福岡教育大学教授 /寺尾 慎一
- 21世紀に対応できる子どもと教師―たくましく生きていく力を―
- 元北九州市立教育センター所長 /野田 茂
- 1 今なぜ,生きる力
- 2 もう一度這い回らせてみたい
- 3 人間は総合的に生きている
- T 小さな学校が目指した新しい教育への大きな挑戦
- §1 21世紀に生きる子どもに願いを込めて
- (1) 小さな学校の大きな挑戦
- (2) 新しい教育の有り様を求めて
- (3) 学校のウチなる変容
- (4) 学校教育のソトなる変革
- §2 祝町小学校という学校
- 〜学校のプロフィール
- (1) 地域の糧を生かして
- (2) 「生きる力」の育ちを願って
- U 総合的な学習「生活創造科」を核にしたカリキュラム開発
- §1 カリキュラムの開発と総合的な学習「生活創造科」
- (1) カリキュラム開発―その全体構想
- (2) 総合的な学習「生活創造科」への挑戦
- (3) 総合的な学習「生活創造科」の目指すもの
- §2 総合的な学習「生活創造科」ってなに
- (1) 今,なぜ「総合的な学習」なのか
- (2) 総合的な学習「生活創造科」の特徴
- (3) 総合的な学習で何を取り上げるか
- (4) 総合的な学習「生活創造科」でどのように学んでいくのか〜総合的な学習「生活総合科」の学習スキル
- 低学年における総合的な学習スキル
- 中学年における総合的な学習スキル
- 高学年における総合的な学習スキル
- §3 総合的な学習「生活創造科」を生み出すプロセス
- 1 第一段階 教科の関連を図った学習
- 2 第二段階 現代的な課題と教科内容を探った学習
- 3 第三段階 テーマに基づいた教育内容の開発
- 4 第四段階 教科にとらわれない教育内容の開発
- 5 各段階の相互関係
- V 総合的な学習「生活創造科」を創る
- 〜そのポイント
- §1 子どもの課題意識を育てる「マイリバー板櫃川ウオッチング」(第4学年―環境)
- (1) 子どもの身近な生活の問題を
- (2) 子どもが課題を持つ仕掛け
- (3) 板櫃川ウオッチングワークショップ
- (4) 「板櫃川博士になろう!」
- (5) 布絵づくりワークショップ
- §2 地域に学ぶ「ともに生きる〜高齢社会に向かって」(第6学年福祉)
- (1) 総合的な目標
- (2) 実践の取り組み
- §3 「生活創造科」と年間指導計画
- §4 年間指導計画作成
- 第1学年年間指導計画 1学期〜3学期
- 第2学年年間指導計画 1学期〜3学期
- 第3学年年間指導計画 1学期〜3学期
- 第4学年年間指導計画 1学期〜3学期
- 第5学年年間指導計画 1学期〜3学期
- 第6学年年間指導計画 1学期〜3学期
- W 総合的な学習「生活創造科」の展開
- [1年/国際理解]ソンリム小学校のおともだち,こんにちは
- [2年/環境・自己理解]まるごとやさい大すき
- [3年/自己理解]わたしは炎のちびっ子ランナー
- [4年/国際理解]心に響け!わたしの太鼓
- [5年/福祉]めざせ!バリアフリー祝町
- [6年/環境]ぼくらは祝町エコキッズ
- X 総合的な学習「生活創造科」を支える学校環境の開発
- §1 子どもの心を豊かにする環境
- (1) 研究組織
- (2) 校内環境の工夫
- Y 総合的な学習「生活創造科」がもたらしたもの,生み出したもの
- §1 子どもの育ちの中で見えてきたもの
- (1) コミュニティティーチャーの登用〜チャレンジタイムの実践〜
- (2) 総合的な学習における問題解決学習について
- (3) 教師が変われば,子どもが変わり,学校が変わる
- (4) 学習過程における支援のチェックポイントを位置づけた計画的な評価について
- §2 子どもに「確かな知恵と力」を
- 〜学習指導要領の重みを感じた研究〜
- 研究同人
- 参考文献
- <あとがきにかえて> 「生きてはたらく力」を培う「生活創造科」の試み
- 元祝町小学校長 /神谷 貞夫
まえがき生きる力を育む総合的な学習
国際化,高齢社会をはじめ環境やエネルギ−問題,人口増加に伴う食糧問題等々の多くの課題の中,人間が人間らしく生きていく社会の実現に向けての起死回生策は,国内のみならず,地球規模での大きな課題になっています。
その大きなうねりの中で求められている教育の課題,それは,まさに中央教育審議会の提言する「豊かな心と,生きてはたらく力」の育成に帰結するものと確信します。
21世紀を生きる子どもたちは,社会の動きとその課題に対応しながら自らの人生を心豊かに他との共生を図りながらたくましく生きていく力を身に付けていくことが求められています。
平成10年7月に公表された教育課程審議会の答申及び,12月に告示された新学習指導要領では,社会が如何に変化しようと自分を見つめ,自分の判断と責任で主体的によりよい生活を創造することの必要性が提言されています。さらに,社会全体にゆとりを確保する中で,子どもたちに家庭や地域社会での生活体験,社会体験,自然体験の機会を増やしていくことも生きていく力に結び付くファクターと提言されています。その具現策の一つとして,学校現場において,教科間の枠を超えた「総合的な学習の時間」の設定による教育課程の改善が力説されています。
本校では,平成7年度文部省調査研究委嘱校,平成8・9・10年度は文部省研究開発学校としての指定を受け,文部省・福岡県教育委員会・北九州市教育委員会のご指導ご助言のもとに,地域・保護者のご理解・ご支援を賜りながら,子どもの「生きてはたらく能力を培う教育課程の創造」を主題に研究を積み重ねてまいりました。
この研究の特色は,現代の課題である「環境」「福祉」「国際理解」「自己理解」の4つの分野を学習内容に取り入れたことです。そして,学習内容の基礎的・基本的事項の定着を図るとともに既存の教科領域の内容の精選と弾力的な運用などに留意しつつ「総合的な学習」を試行し実証を行ったことです。実践化にあたり,体験の場として地域の糧を積極的に取り入れ,人・自然・社会・文化とのかかわり,対象への思いや願い,生き方,価値に共感し豊かな心と生きる力の育ちを願った総合的な学習を模索する中で「教育課程(祝町プラン)」の編成を試みました。
研究のプロセスで,「子ども一人ひとりが自らの課題に向かって生き生き学ぶことができる場づくり」「学び得たものが生きる力へ直結できる教材の開発」を合い言葉に,生活に生かす総合的な学習「生活創造科」への構築を全職員の総力をあげて取り組んでまいりました。
小さな学校の大きな挑戦によるこの試みにより,子どもの目を生き生きと輝かせ,よりよい心と体の育ちに向けての光を見い出すことができました。しかし,「生涯にわたって生きる力となる学び」「生活への実践力を確かなものにする学び」「教科で学んだことを生かし,生活創造科で学び得たものを教科等に生かす相互補完による総合的な学習の深化」という課題も残されています。この発刊を機に皆様のご指導・ご助言をいただき,更なる充実と発展を期したいと考えています。
最後に,本書の刊行を快くお引き受け頂き,編集協力をいただいた株式会社明治図書の樋口雅子編集長を初め,関係各位に,深甚の謝意を呈する次第です。
平成11年3月 北九州市立祝町小学校教職員一同
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- 明治図書