- まえがき
- 1章 「総合的な学習の時間」のねらいは何か
- §1 今,なぜ「総合的な学習の時間」が必要なのか
- §2 「総合的な学習の時間」のねらいは何か
- §3 「総合的な学習の時間」の学習活動を通して,どのような能力が身に付くのか
- §4 小学校における「総合的な学習の時間」の二本柱@外国語会話・異文化理解
- §5 小学校における「総合的な学習の時間」の二本柱A情報活用の実践力
- 2章 「総合的な学習」をどのように進めるか
- §1 「総合的な学習」と教科の学習との関係をどう考えるか
- 1 各教科・領域で身に付けられた知識や技能を関連づけたり,総合的にはたらかせたりするもの
- 2 各教科の枠を超えて,子どもの興味・関心に基づくものを単元化するもの
- §2 「総合的な学習」をどのように展開するか (三つのステップ)
- 1 第一のステップ
- 2 第二のステップ
- 3 第三のステップ
- §3 「総合的な学習」での教師の支援,協力体制をどうするか
- 3章 「総合的な学習」の内容と学習活動
- §1 「総合的な学習」の総合的な領域とは?
- 1 これからの学校と「総合的な学習の時間」
- 2 横断的学習と総合的学習
- 3 「総合的な学習」の【総合性】とは?
- 4 「総合的な学習」の内容領域は?
- §2 「総合的な学習」の学習活動とは?
- §3 「総合的な学習」の授業づくり・単元づくり
- 1 家庭・地域社会との連携
- 2 授業づくり・単元づくりの視点
- 4章 「総合的な学習」へのチャレンジ活動プラン
- §1 各教科・領域の中での「総合的な学習」のプランと展開
- [1] 教科内容に他の教科内容要素を付加して豊かな知の定着を図る実践プランと展開
- 1 自然を知って環境を考える!
- 2 生きて働く「聞く・話す」活動
- [2] 教科内容に他の領域内容要素を付加して,知の発展を図る実践プランと展開
- 1 調査・表現・発信する子ども
- 2 虫さがしの名人になろう!―自然体験を取り入れた理科―
- [3]教科・領域間の連携を図り,知のネットワークを図るプランと展開
- 1 地域を流れる「関川」に学ぶ
- 2 子どもが自らの生命観を創る
- §2 総合的な課題についてのプランと展開
- [1] 国際理解教育のプランと展開
- 1 心と心のコミュニケーション
- 2 地球市民を育てる国際体験活動
- [2] 外国語会話のプランと展開
- 1 活動の楽しさを生かす英語学習
- 2 モジュール日課での英会話TT授業
- [3] 環境・エネルギー学習のプランと展開
- 1 地域と手を結ぶ環境学習
- 2 家庭科から発展した環境教育
- [4] コンピュータ活用のプランと展開
- 1 相手意識で意欲的な追究を
- 2 ぼくらの学校,再発見
- [5] インターネット活用のプランと展開
- 1 太陽の動きの共同観測
- 2 富山県と故郷岐阜県を比べて
- [6] 福祉・ボランティア活動のプランと展開
- 1 子ども自らが動き共に生きる
- 2 共に生きる社会をめざして
まえがき
教育課程の全面実施に当たって,文部省は学習指導要領の告示に続いて,移行措置を公表した。そのうち「総合的な学習の時間」については,現行教育課程の下でも徐々に実施に移す体制を整えるように求めている。
「総合的な学習の時間」のねらいは,周知のように,
1 自ら学び自ら考え,的確に判断し,筋道立てて表現するなどの「生きる力」を身に付けさせること
2 問題解決に当たって,問題の見つけ方,情報の集め方,情報検索の仕方,問題解決の仕方,データ処理の仕方,結果のまとめ方,処理の仕方,報告書の書き方,発表の仕方など,学び方やものの考え方を身に付け,問題解決に当たるスキルズや態度,「方法知」を習得すること
3 更に,これらを通じて,自分の得た知識や技能を相互関連的,総合的に働かせ,総合的な問題解決に当たらせる「知の総合化」を習得すること
4 そして,これらのねらいの達成の過程で,常に自己の進路や在り方,生き方と結び付け,自分の得意分野,興味・関心を持っていることなど,自己発見の場,更には進路選択の場にすること
などである。
先進校などで見られる「総合的な学習の時間」での実践では,とかく子どもが自分の興味を持った課題について,自分なりの方法で追究している場面が中心になっているが,子どもが自分で課題を選び,問題解決のための追究を行うに当たっては,その前提として,課題をどのように見いだすか,情報をどのように収集するか,問題解決をどう行うか,どのようにまとめるかなどの問題解決のスキルズの訓練,総合的にものを見るとはどういうことなのか,問題解決に当たってコンピュータや情報通信ネットワークをどう生かしたらよいかなどの基礎的な訓練がなされていないと,単なる表面的な体験ごっこに終わる可能性が少なくない。
また,子どもの選択課題を許しているために,その広がりが膨大になり,その結果として教師の手に負えなくなり,子どもに好きなことをやらせているため,基礎的な学習としての教科の授業(特に理,数)から逃避する,何事にも活発にはなったが,読,書,算の基礎ができていないといったことになる恐れもある。
また,現在,「総合的な学習の時間」について教師の関心が高く,研修会にも多くの教師が参加しているが,その大半が教育センター主催のものであったり,大学のその道の権威と言われる先生の話を聞くものが大半である。また,「総合的な学習の時間」についての啓蒙書も多くだされている。そこでは,子どもの体験活動であれば何でもよしといった展開になっている。
ここで不思議なのは,学校設置管理者として教育行政にあずかる地方教育委員会の姿が見えないことである。その姿勢は極端に後ろ向きで,教育センター任せといったものも少なくない。学校の裁量権限の拡大,地方教育委員会の役割の重要性に鑑みれば,地方教育委員会は,教育課程審議会の地方版を設置し,その中で,「総合的な学習の時間」のうち,情報とか外国語などについて,学習活動の地方基準を設置し,そのための予算措置を講じるとか,学校に任せる学習活動については,地域との連携をどう図るかなどを早急に行うことが大切である。
現在行われている教員研修が,国が行う研修,任命権者等が行う研修,そして校内研修など学校が行う研修から成り立ち,その三者で連携をとっていることからも理解できよう。
このようにして見ると,「総合的な学習の時間」のうち,その学習活動は,国が示したねらいなどを十分に踏まえた上で,「総合的な学習の時間」の学習活動の地方基準(国際化,情報化など),「総合的な学習の時間」の学習活動の学校基準をどう作り上げるかが,大切である。
平成11年6月 /山極 隆
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明治図書















