- まえがき
- 第1章 総合的学習を始めるには
- Q1 総合的な学習──今,どんな勉強をしたらよいか?
- 1 総合的学習のねらいをつかむ
- 2 総合的学習の内容をつかむ
- 3 総合的学習のネタをつかむ
- 4 子どもの発想を生かす
- Q2 新しい学習指導要領総則の「総合的学習」の記述をどう読んだらよいか?
- 1 総合的学習の問題の所在
- 2 今の子どもに何が必要か
- Q3 総合的学習の計画を立てる上で忘れてはならないことはどんなことか?
- 1 成果をあげている理由4つ
- 2 教科できっちり基礎基本を鍛えている
- Q4 先進校の実践にはどんな特色が見られるか?
- 1 体験活動
- 2 調査活動
- 3 提案活動
- 第2章 総合的学習のネタづくり
- Q5 総合的学習の教材開発のセンスをどのように磨いたらよいか?
- 1 意欲をもって見る
- 2 「はてな?」を発見できるようにする
- 3 何でも面白く見る
- Q6 教材を見る目を鍛えるにはどうしたらよいか?
- 1 知識がないと見えない
- 2 知識は「めがね」になる
- Q7 総合的学習の学習内容をどう工夫したらよいか?
- 1 学習内容を考える3つの視点
- 2 子どもの興味・関心の強いものから切り込む
- 3 身近なものから現代社会の課題が見えるもの
- Q8 総合的学習の教材開発を行うには何を,どうしたらよいか?
- 1 子どもの興味・関心の研究を
- 2 「子どもの目」で単元づくりをしてみる
- Q9 “トピック課題”でつくるネタ・テーマさがしのコツはどんなことか?
- 1 身近な話題を集める
- (1) 青虫を飼育してみよう
- (2) モグラの生活を調べよう
- (3) ミミズを飼育してみよう
- 2 報道に気をつける
- Q10 どんな地域でも総合的学習のネタ・テーマはつくれるか?
- 1 自分の足でネタづくり
- 2 畑のない学校で大根づくり
- (1) 土を運んで畑づくり
- (2) 大根の種をまく
- (3) たくわんづけをつくる
- (4) 「す」 (簀)まで手づくり
- (5) おしんこ巻きつくり
- 第3章 環境教育のネタづくり
- Q11 環境教育の3Kとは,どんなことか?
- 1 環境問題の3K
- 2 汚れは心の汚れ?
- 3 エネルギーの使いすぎ?
- Q12 環境問題で「これだけは追究させたい」というのはどんなことか?
- 1 身近で子どもが気づいていないこと
- 2 将来に希望がもてる事例を取り上げる
- 3 実行できる事例を取り上げる
- Q13 環境問題から日本国憲法を検討するにはどこに目をつけたらよいか?
- 1 環境問題と日本国憲法
- 2 今の憲法で環境問題の解決ができるか
- 3 多様さを包含している憲法や法律──運用が問題
- Q14 環境教育の中で体験的な活動をどう具体化すればよいか
- 1 環境教育のねらい
- 2 地域環境から学び,かえす活動を
- 3 体験活動のできる教材を選ぶ
- 4 環境を見る目を育てる
- Q15 環境教育を進めるには,どのような指導力が求められるか?
- 1 環境教育の位置づけ
- 2 環境教育の3つの角度
- (1) 環境を見つめる
- (2) 環境から学ぶ
- (3) 環境にかえす
- 3 元気の出る教材の開発を
- Q16 「サイクル図」は,環境問題を考えるときどんな使い方ができるか
- 1 サイクル図の意味
- 2 「容器包装リサイクル法」の必要性
- 3 前向きに再利用に取り組む人々
- Q17 環境教育で「水」をどのようにあつかったらよいか?
- 1 古里は蛍の里だった
- 2 蛍の里が消えた原因
- 3 水道水はなぜまずいか
- 4 わたしたちがつくっているまずい水
- Q18 環境教育の教材開発は,どのようにしたらよいか?
- 1 環境教育の3段階
- 2 希望のもてる元気の出る教材開発を
- 3 水の足りない水郷・柳川
- 4 本来の美しさを取り戻した柳川
- Q19 環境教育の身近な学習素材には,どんなものがあるか?
- 1 ごみの再利用と分別
- 2 リサイクルと再利用はちがう?
- 3 再利用できるごみ・できないごみ
- 4 リサイクル・再利用を進めるには?
- Q20 環境教育における情報収集と授業化はどうすればよいか?
- 1 問題意識があれば情報が飛び込んでくる
- 2 新聞に気をつける
- 3 情報入手から授業化へ
- 第4章 「地域の特色」を教材化する
- Q21 「地域の特色」を教材化せよというが,たとえばどんな内容を教材化したらよいか?
- 1 愛知県安城市・碧南市の「いちじく」を教材化する
- (1) いちじくの木はなぜ小さいのか?
- (2) 台風で倒れた木がヒントで木の形を工夫
- (3) 畝の向きはどちら向き?
- (4) 一反(10a)にどのくらい植えるか?
- (5) いちじくは「一葉一果」?
- (6) いちじくが整然と並んでいるわけ?
- (7) 困ることはどんなことか?
- (8) いちじくの根は酸素がたくさん必要?
- (9) いちじくの出荷先
- 2 愛知県蒲郡市のハウスみかん栽培を教材化する──なぜハウスみかんをつくるのか?──
- (1) ハウスみかん日本一の蒲郡市
- (2) 露地栽培とハウス栽培のちがい
- (3) 葉の寿命はどのくらい?
- (4) 加温のしかた
- (5) なぜ,ハウスみかんなのか?
- (6) 蒲郡のみかんづくりの合理性
- (7) 周年収穫の努力
- (8) 地域によって作り方がちがう
- (9) なぜ斜面につくるのか?
- (10) 斜面でよいこと
- (11) 斜面で困ること
- 3 「不毛の地こそ好条件」にする教材──沖縄県粟国村での塩づくり──
- (1) 「塩」との出会い
- (2) 南風見先生の手紙
- (3) 「塩」に目ざめる
- (4) 不毛の地を生かす発想
- (5) 立体式塩田タワーで塩づくり
- (6) 塩づくり2つの方法
- (7) 塩による村おこし
- (8) 塩づくりの契機──塩騒動
- 4 三重県伊勢市の「赤福」【お菓子】を教材化する──導入は写真と包装紙──
- (1) お菓子を教材に
- (2) 非日常的なものは目につく
- (3) 包装紙で「はてな?」を引き出す
- (4) 驚くべきこだわり
- Q22 正月などの行事にちなんだことも総合的学習のネタになりますか?
- 1 変化に富んだ冬休み
- 2 行事に参加する
- 3 「ならわし」を調べる
- 4 家族みんなで学ぶ
- 第5章 総合的学習でどんな力をつけるか
- Q23 「総合的な学習の時間」で身につく学力とはどんなものか?
- 1 学校知と社会知のちがい
- 2 総合的学習のねらい
- 3 総合的学習で身につく学力
- 4 社会生活に役立つ学習技能の習得
- Q24 横断的・総合的学習で育てる「学習技能」とはどんなものか?
- 1 総合的学習に何を盛り込むか
- 2 総合的学習で育つ「学習技能」
- Q25 総合的学習の登場によって学び方・学習技能はどう変わるか?
- 1 内容を忘れても残るもの
- 2 学習技能を育てることがねらいになる
- Q26 総合的学習に社会科学習の力はどう生かされるか?
- 1 教科の学習は基礎基本
- 2 社会科の学習のしかた
- 3 社会科と総合は相互補完
- 4 総合的学習の具体的な事例
まえがき
今,各地の研究会に行くと,多くの先生方が集まっているのに驚く。だから,こちらの方も,思わず熱が入る。この雰囲気は,生活科が誕生した時に似ているように思う。
総合的な学習を始めなければならないのに,何を,どのようにしていったらよいかわからない。それで「総合」と名のつく研究会に行って勉強しようということである。久しぶりに先生方が燃えている。うれしいことである。
生活科熱は,教科書が出ると驚くほどさめて,本はもとより,雑誌さえ売れなくなってしまった。しかし,総合的な学習は,教科書が作られないので,こうはならないだろうと予想している。
総合的な学習の先進校といわれるところの実践を目にしたり,雑誌の論文などを読んだりして感じることは,早くも画一化のきざしがみえるということである。画一的な今の教科学習の反省からつくられた総合的な学習であるのに――。
国際理解は英会話かカレー作り,情報はコンピュータ,環境は少し幅があってエネルギー,ごみ,水の汚れ,川の学習,福祉・健康はボランティア,というように,現代社会の課題にかたより,しかも画一化しつつある。課題がはっきりしていて,やりやすいからであろう。
このようなネタを取り上げてもかまわないが,中心は「地域や学校の特色」をつかみ,特色ある学校づくりをすることである。
総合的な学習は,教科より以上にネタがものをいう。
子どもたちが,「これは面白い。何としても追究したい。」というネタを開発して提示しなければ,総合的な学習のねらいを達成することにはならない。
教科は「材料七分に腕三分」であるが,総合的な学習は「材料九分に腕一分」といえるくらいネタの比重が大きい。
それは,子どもに「自ら課題をみつけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること」をねらいにするからである。「させられる学習」ではなく,「子どもが自らする学習」にしなければならない。それにふさわしいネタが必要である。
総合的な学習は,教科書が作られないので,「教師が教科書」にならなければならない。だから,教科より以上に勉強しなければならない。
現代社会の課題はもとより,地域や学校の特色がつかめるネタや,地域や学校の特色を創り出していくネタの開発に力を入れていく必要がある。こういうネタを開発するにはどうしたらよいのだろうか。
それに,総合的な学習を通して,学習技能を体得させていかねばならない。どのようなネタを通して,どのような学習技能を,どのように体得させていけばよいのだろうか。
これらの問題に少しでも応えることができればと考え本書をまとめてみた。
現時点でのわたしの知識や経験,情報などを総動員して,できるだけわかりやすく,誰でもわかるようにまとめたつもりである。
総合的な学習の勉強のしかたや学習指導要領の読み方にもふれてみた。
重点は,書名のように「総合的な学習のネタ開発」のしかたである。
本書が,先生方の総合的な学習への取り組みの手助けになれば,この上ない喜びである。
最後になったが,明治図書編集部の樋口雅子編集長が,以前から熱心にすすめて下さりようやくまとめることができた。厚くお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
1999年9月 /有田 和正
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- 明治図書