- まえがき
- 1 総合的な学習が求めている表現力
- 一 総合的な学習が目指す学力
- 二 総合的な学習と構想力
- 三 総合的な学習が求めている表現力
- 1 状況対応力としての表現力
- 2 状況対応表現力の分節力
- 1 状況を認識し、発見した問題への対応の見直しを立てる段階に働く表現力
- 2 判断、行動のプリンシプルとなる理念を創構する段階に働く表現力
- 3 創構内容を言語表現として線条化する段階に働く表現力
- 4 線条化した言語表現を状況に対応するために活用する段階に働く表現力
- 5 分節力を支持し、その働きの円滑化を促す表現技能
- 四 総合的な学習の学習課題と表現力
- 1 状況としての総合的な学習の課題
- 2 状況としての「環境」問題と表現力
- 3 状況としての「情報」問題と表現力
- 4 状況としての「国際理解」問題と表現力
- 5 状況としての「福祉(健康)」問題と表現力
- 2 学校教育に期待されている表現力
- 一 学校生活における表現力
- 二 問題解決力としての表現力
- 三 コミュニケーション能力としての表現力
- 四 社会的生活的技能としての表現力
- 五 自覚的言語生活主体の形成と表現力
- 3 国語教育が求められている表現力
- 一 国語科において育成される表現力と総合的な学習
- 二 「伝え合い」機能を生かした「話すこと・聞くこと」の力
- 三 論理的批判的思考力を軸とした表現力
- 四 短作文の機能を生かした「書くこと」の力
- 五 実用的文章の表現力
- 六 目的意識・相手意識に立つ表現力
- 七 発信する力としての表現力
- 八 行動の原理としての意見を形成し、表現する力
- 九 要約を活用する表現力
- 十 総合的な学習が求める表現力育成の授業づくり
- 1 機能的活動主義の立場に立つ表現力
- 2 機能的活動主義に立つ表現指導の原理
- 3 機能的活動主義に立つ授業構造
- 4 機能的活動主義に立つ授業における評価
- あとがき
まえがき
現代は、二十一世紀を目前にして、時代・社会が大きく変動しており、転形期と言うべき時代に入っている。二十一世紀をどのような時代・社会として構想するかということは、緊要な今日的課題である。政治・経済・文化の各分野において、それはすでに取り組まれていることであるが、教育界もその例外ではありえない。中央教育審議会の答申や教育課程審議会答申を受けて、教育課程レベルの改革が、今次学習指導要領の改訂(小・中学校=・・、高校=・3・)によって具体的に示された。改革の内容は、高度情報社会、国際化社会、少子・高齢化社会、地球的規模での環境変動の時代という時代・社会の状況に対応できる人間的学力を含むものでなければならない。時代・社会の状況に対応できる人間的学力は、生きるための環境への適応を図ることができるものであるとともに、よりよく生きるために環境を改革することのできるものであることが要求される。
このような教育改革の方向を具体的な形で示したのが、「総合的な学習」である。総合的な学習には、さまざまな批判が寄せられているようであるが、この指導領域の創設は、時代・社会の進展の要求にもとづく必然的ななりゆきであったと考える。もちろん、これからの実践を通してその改革、改善を図るべきは、言うまでもないことである。
本書のテーマは、このような問題意識に立ち、総合的な学習に視点を置いて、学校教育・国語教育の表現力に焦点を合わせて照射し、これからの教育のあり方を追究するところにある。本書の構成は、次のようになっている。
T 総合的な学習が求めている表現力
U 学校教育に期待されている表現力
V 国語教育が求められている表現力
「総合的な学習が要求している表現力」について考えることは、国語教育における表現力のとらえ方を問い直すことにもなる。十分な答えを出すことができているか、大方のご批判を仰ぐ次第である。
末筆ながら、本書の執筆の機会を与えてくださった江部 満氏に深甚なる謝意を捧げたい。
2000年1月 /大西 道雄
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- 明治図書